この記事の想定読者
- どんなときに不正受給になるのか、不正受給はどこで見つかるのか知りたい方
- 不正受給で処分されるとどうなるか知りたい方
- 不正受給の処分対象になってしまったときの対応を知りたい方
失業保険受給中は、週20時間未満であれば働くことが出来ます。ただし、毎回の認定日ごとに働いていることの申告が必要で、その申告がないと不正受給として処分されます。
不正受給に該当すると、以下の処分の対象になります。
- 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
- 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
- 納付命令 = 罰金の支払い
この記事では、失業保険の不正受給について、以下の3点から解説します。
- どんな処分の対象になるのか
- 不正受給が本当に辛い理由3選
- もし自分が不正受給の処分対象になったら
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険受給中のアルバイトについては、以下の記事を参考にしてください↓
不正受給とは
不正受給とは、本来もらえないはずの失業保険を、不正な方法でもらうこと、またはもらおうとすることを言います。
実際に失業保険をもらったか否かは問われません。
「もらおうとした」段階でアウトです。
失業保険を受給するためには、失業状態である必要があります。※ 失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」を言います。
失業保険受給中にアルバイトなど就労を行った場合、毎回の認定日の申告に基づいて、受給金額の先送りや減額の処理が行われます。このとき、失業状態ではないのに失業状態であるかのように偽ったり、毎回の認定日に就労の申告をしなかったとき、不正受給として処分されます。
言うまでも無いとは思いますが、不正受給は絶対にしないでください。
倫理観からもアウトですし、経済的にもデメリットしかありません。
不正受給になる例
具体的には、以下のような例が不正受給に該当します。
参考 ハローワークインターネットサービス https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_dishonesty.html
不正受給に該当しないためには、以下のポイントを抑えることが必要です。
- 週20時間以上の仕事(雇用関係)を探している
- 週20時間以上働ける状態である
- 働く場合は、ハローワークに申告する(収入の有無にかかわらず)
上記に該当しなくなった場合は、必ずハローワークの窓口で申告・相談をしてください。
不正受給がバレる経路
仕事をちょっと手伝ってお金をもらえたよ。
少しだし申告しなくてもバレないよね?
絶対に申告してください。
不正受給は必ずバレます。
不正受給は様々な経路からバレます。具体的には、以下のような経路です。
思いもよらないところからバレるのが不正受給です。
ちょっとだけだから…
親族間のお金のやりとりだし…
こういった甘い考えで、処分される方が一定数いらっしゃいます。何度でも言いますが、不正受給は必ずバレます。仕事をした(する)場合や、働けなくなった・仕事を探さなくなった場合は、必ずハローワークの窓口に申告してください。
不正受給処分の内容
不正受給に該当すると、以下の3つの処分があります。
- 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
- 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
- 納付命令 = 罰金の支払い
また、悪質な場合には詐欺罪として刑事告発が行われます。
執行停止
不正受給をした日以降の全ての失業保険の支払いが停止します(雇用保険法第34条)。この支払い停止は解除されることはありません。
要は、不正受給した日以降の失業保険はすべてもらえなくなる。ということです。
例
- 所定給付日数 90日
- 支給期間 令和6年1月1日~3月30日(90日分)
- 令和6年2月1日に不正受給を行う
⇒ このとき、令和6年2月1日~3月30日までの59日分は執行停止(支払いされない)
一度不正受給をしたら、一生失業保険がもらえなくなるの?
今回の支給終了後に、雇用保険に加入して1年以上働いた後に退職するなど、
新たに受給資格を得ればそのときの失業保険はもらえますよ。(雇用保険法第34条第2項)
返還命令
不正に受給した失業保険は、全額を返還しなければなりません(雇用保険法第10条の4)。なお、全額の返還が完了するまで1日ごとに延滞金がかかります。
このときに返還する失業保険金額は、不正受給した分のみです。今までもらっていた失業保険を全額返還するわけではありません。
後述しますが、「お金が無ければ、返さなくてもOK。」にはなりません。
不正に受給した金額は全額返還が必要です。
納付命令
不正に受給した金額に加えて、最大2倍の金額の罰金が加算されます(雇用保険法第10条の4)。なお、この罰金も全額の返還が完了するまで延滞金がかかります。
罰金金額の計算は、「不正受給した金額×倍率」です。「今までもらった失業保険全額×倍率」ではありません。
ここでの倍率は不正行為の悪質度・反省度によって変わります。
もし出来心で不正受給をしてしまった場合は、誠実な対応を心がけましょう。
悪質な場合は刑事告発
不正の内容が悪質な場合は、詐欺罪として刑事告発もあります。詐欺罪には罰金刑が規定されていませんので、この告発により有罪判決が出た場合、執行猶予がつかない限り最大10年の懲役刑になります。(刑法第246条 詐欺罪)
ここで有罪になるとバッチリ前科が付きます。
何度も言いますが、不正受給は絶対にやめましょう。
不正受給が本当に辛い理由3選
不正受給になると重たい処分があるんだね…
そうなんです。
実際に処分が行われると、金銭的に本当に辛いです。
前出のとおり、不正受給に該当すると執行停止や返還・納付命令などの処分がなされます。処分が重たいことはなんとなく想像できたと思いますが、具体的にどういうところが辛いのか、以下で例を挙げます。
- 返還命令・納付命令に従わないと強制執行される
- 再就職手当がもらえない
- 破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される
返還命令・納付命令に従わないと強制執行される
返還命令(不正受給金額の返還)・納付命令(罰金の支払い)に従わなかった場合、国税滞納処分の例によって強制執行されます。(雇用保険法第10条の4・労働保険徴収法第27条)
要は、お金を支払わないと、銀行口座の差し押さえや車・不動産の競売などを行い、強制的に財産を徴収される。ということです。
返還命令や納付命令は、所得税や住民税などの税金と同じくらい、支払いに強制力があります。国税徴収法により銀行や各行政機関への質問・調査依頼も可能になるため、財産を隠したり逃げ切ることも出来ません。また、銀行口座を差押えされると、差押えられている一定期間は銀行口座が使えなくなります。
一度不正受給処分をされたら、素直に支払うしか道はありません。
再就職手当がもらえない
不正受給後に早期再就職をしても、再就職手当はもらえません。前出のとおり、不正受給に該当し、執行停止処分を受けた後は失業保険の支払いが無くなります。このとき、支払いを停止された失業保険は、再就職手当の計算において支払ったものとみなされます。(雇用保険業務取扱要領57051(1)ロ)
再就職手当は、「就職日時点での失業保険残日数×支給率」で計算されます。執行停止処分をされると、以後の失業保険残日数が0になるので、「0(残日数)×支給率」になり、再就職手当は支払われなくなります。
これが適用されて一番辛いパターンが、1日だけ不正受給してしまった後に、早期就職した場合です。以下で解説します。
例
- 所定給付日数90日
- 1日あたりの失業保険額5,000円
- 支給期間令和6年1月1日~3月30日
- 令和6年1月31日付再就職(残日数60日)
令和6年1月5日に申告せず1日だけ働き、それが不正受給になってしまった場合
このとき、1月5日の就労を正しく申告していれば、本来は総額358,500円がもらえました。(計算式)令和6年1月1日~1月30日の30日分から働いた1日分を除いた「29日分+再就職手当」がもらえる総額 残日数61日×70%で ⇒ (29日分×5,000円)+(61日分×70%×5,000円)=358,500円
令和6年1月5日が不正受給になることで、支払われるお金は令和6年1月1日~4日までの4日分、20,000円だけになります。(計算式)4日分×5,000円=20,000円
1日分のバイト代のためだけに、差額338,500円を捨ててしまうことになるのです。
破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される
返還命令(不正受給金額の返還)や納付命令(罰金の支払い)は、借金と違い破産しても消えず、本人が亡くなった場合は被相続人へ相続されます。(破産法第253条第1項・国税通則法第5条)
要は、全額払いきる以外に逃げ切る術は無い。ということです。
※ ただし、ケガや病気などで支払えなくなった場合や、生活保護などの社会保障給付の対象になった場合は、支払いが不要になる可能性があります。
もし自分が不正受給の処分対象になったら
もし不正受給の処分対象になったらどうしたらいいの?
出来る範囲で以下の3つを行ってください。
- 自発的に申告する
- 自身の行ったことを反省する
- 不正に受給した金額を迅速に支払う
まず前提として、不正受給は絶対にしないでください。前出のとおりの重い処分がされますし、倫理観的にもアウトです。以上を踏まえたうえで、つい出来心で不正受給をしてしまった場合、以下の3つの行動を行ってください。
- 自発的に申告する
- 自身の行ったことを反省する
- 不正受給した金額を迅速に支払う
自発的に申告する
まだハローワークに不正受給したことがバレていない段階であれば、不正に受給してしまったことを自発的に申告してください。刑事事件で、自首や出頭で量刑が軽くなるのと同じく、不正受給の場合でも処分が軽減される可能性があります。
もしまだ不正受給がバレていないのであれば、必ず自身から申告してください。
自身の行ったことを反省する
自身の行った不正受給に対して、言い訳や逆ギレをせずにしっかりと反省してください。ここでしっかりと反省することで、ハローワーク側も情状酌量してくれる可能性があります。
不正受給は一定の判断基準によって処分内容が決まりますが、処分する側も人間ですので、反省の態度を表すことで処分の軽減につながる可能性があります。
具体的には以下のような対応が理想です。
- ハローワークからの出頭命令に従う
- 提出を求められた書類は必ず提出する
- ハローワークからの電話を無視しない
ハローワークの調査に進んで協力することが大切です。
しっかりと反省し、態度で表しましょう。
不正受給した金額を迅速に支払う
返還命令(不正受給金額の返還)や納付命令(罰金の支払い)があった場合は、全額を迅速に支払いましょう。一括での支払いが理想ですが、一括支払いが不可能な場合は、自身の生活状況をしっかりと説明し、支払いの意思があることを伝えましょう。誠実な対応をすると、罰金額の減額や、分割での支払いが認められる可能性があります。
分割での支払いになった場合、支払っている間も延滞金はかかり続けます。
なるべく早く支払い終わるようにしましょう。
まとめ
以上、失業保険の不正受給について、以下の3点から解説しました。
- どんな処分の対象になるのか
- 不正受給が本当に辛い理由3選
- もし自分が不正受給の処分対象になったら
まとめると以下のとおりです。
不正受給になると、以下の3つの処分の対象になり、悪質な場合は詐欺罪として刑事告発されます。
- 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
- 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
- 納付命令 = 罰金の支払い
不正受給に該当すると上記3つの処分対象になりますが、具体的にどういったところが辛いのか。
それが以下の3つです。
- 返還命令・納付命令に従わないと強制執行される
- 再就職手当がもらえない
- 破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される
不正受給をしてはいけませんが、もし不正受給してしまった場合は以下の3つの対応を取ってください。
- 自発的に申告する
- 自身の行ったことを反省する
- 不正受給した金額を迅速に支払う
失業保険は、就職活動に専念するための給付金です。どうしても就職活動に専念できないときは、必ず事前にハローワークの窓口に相談しましょう。不正受給は倫理観的アウトですし、経済的にもメリットがありません。窓口では誠実な申告を心がけましょう。
実りある転職になることを祈っております。最後までご覧いただきありがとうございました。
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