【ハローワーク職員解説】失業保険の不正受給になってしまったときは?バレない?不正受給の大きなデメリットと危険性について

雇用保険制度

この記事の想定読者

  • どんなときに不正受給になるのか、不正受給はどこで見つかるのか知りたい方
  • 不正受給で処分されるとどうなるか知りたい方
  • 不正受給の処分対象になってしまったときの対応を知りたい方

失業保険受給中は、週20時間未満であれば働くことが出来ます。ただし、毎回の認定日ごとに働いていることの申告が必要で、その申告がないと不正受給として処分されます。

不正受給に該当すると、以下の処分の対象になります。

不正受給の処分
  • 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
  • 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
  • 納付命令 = 罰金の支払い

この記事では、失業保険の不正受給について、以下の3点から解説します。

  • どんな処分の対象になるのか
  • 不正受給が本当に辛い理由3選
  • もし自分が不正受給の処分対象になったら

ぜひ最後までご覧ください。

この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓

雇用保険に関する業務取扱要領(令和5年8月1日以降) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

不正受給とは

不正受給とは、本来もらえないはずの失業保険を、不正な方法でもらうこと、またはもらおうとすることを言います。

ファスタ
ファスタ

実際に失業保険をもらったか否かは問われません。

もらおうとした」段階でアウトです。

失業保険を受給するためには、失業状態である必要があります。※ 失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」を言います。

失業保険受給中にアルバイトなど就労を行った場合、毎回の認定日の申告に基づいて、受給金額の先送りや減額の処理が行われます。このとき、失業状態ではないのに失業状態であるかのように偽ったり毎回の認定日に就労の申告をしなかったとき、不正受給として処分されます。

ファスタ
ファスタ

言うまでも無いとは思いますが、不正受給は絶対にしないでください。

倫理観からもアウトですし、経済的にもデメリットしかありません。

不正受給になる例

具体的には、以下のような例が不正受給に該当します。

不正受給になる例
  • 働いているのに申告しない
  • 求職活動実績を偽る
  • 自営業を開始したのに申告しない
  • 同時に受給できない社会保障給付を受けたのに申告しない
  • 就職が出来る状態ではなくなったのに申告しない

参考 ハローワークインターネットサービス https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_dishonesty.html

大阪労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/hourei_seido/situgyo/minasama/fusei.html

不正受給に該当しないためには、以下のポイントを抑えることが必要です。

不正受給にならないために
  • 週20時間以上の仕事(雇用関係)を探している
  • 週20時間以上働ける状態である
  • 働く場合は、ハローワークに申告する(収入の有無にかかわらず)

上記に該当しなくなった場合は、必ずハローワークの窓口で申告・相談をしてください

不正受給がバレる経路

仕事をちょっと手伝ってお金をもらえたよ。

少しだし申告しなくてもバレないよね?

ファスタ
ファスタ

絶対に申告してください。

不正受給は必ずバレます。

不正受給は様々な経路からバレます。具体的には、以下のような経路です。

不正受給発見の経路
  • コンピュータによる発見
  • 安定所の事業所調査や家庭訪問による発見
  • 関係官庁との連携による発見
  • 投書や電話などによる通報による発見

参考 大阪労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/hourei_seido/situgyo/minasama/fusei.html

思いもよらないところからバレるのが不正受給です。

ちょっとだけだから…

親族間のお金のやりとりだし…

こういった甘い考えで、処分される方が一定数いらっしゃいます。何度でも言いますが、不正受給は必ずバレます。仕事をした(する)場合や、働けなくなった・仕事を探さなくなった場合は、必ずハローワークの窓口に申告してください。

不正受給処分の内容

不正受給に該当すると、以下の3つの処分があります。

不正受給の処分
  • 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
  • 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
  • 納付命令 = 罰金の支払い

また、悪質な場合には詐欺罪として刑事告発が行われます

執行停止

不正受給をした日以降の全ての失業保険の支払いが停止します雇用保険法第34条)。この支払い停止は解除されることはありません。

ファスタ
ファスタ

要は、不正受給した日以降の失業保険はすべてもらえなくなる。ということです。

 

  • 所定給付日数 90日 
  • 支給期間 令和6年1月1日~3月30日(90日分)
  • 令和6年2月1日に不正受給を行う

⇒ このとき、令和6年2月1日~3月30日までの59日分は執行停止(支払いされない)

一度不正受給をしたら、一生失業保険がもらえなくなるの?

ファスタ
ファスタ

今回の支給終了後に、雇用保険に加入して1年以上働いた後に退職するなど、

新たに受給資格を得ればそのときの失業保険はもらえますよ。(雇用保険法第34条第2項)

返還命令

不正に受給した失業保険は、全額を返還しなければなりません(雇用保険法第10条の4)。なお、全額の返還が完了するまで1日ごとに延滞金がかかります。

このときに返還する失業保険金額は、不正受給した分のみです。今までもらっていた失業保険を全額返還するわけではありません。

ファスタ
ファスタ

後述しますが、「お金が無ければ、返さなくてもOK。」にはなりません。

不正に受給した金額は全額返還が必要です。

納付命令

不正に受給した金額に加えて、最大2倍の金額の罰金が加算されます(雇用保険法第10条の4)なお、この罰金も全額の返還が完了するまで延滞金がかかります。

罰金金額の計算は、「不正受給した金額×倍率」です。「今までもらった失業保険全額×倍率」ではありません。

ファスタ
ファスタ

ここでの倍率は不正行為の悪質度・反省度によって変わります。

もし出来心で不正受給をしてしまった場合は、誠実な対応を心がけましょう。

悪質な場合は刑事告発

不正の内容が悪質な場合は、詐欺罪として刑事告発もあります。詐欺罪には罰金刑が規定されていませんので、この告発により有罪判決が出た場合、執行猶予がつかない限り最大10年の懲役刑になります。(刑法第246条 詐欺罪)

ファスタ
ファスタ

ここで有罪になるとバッチリ前科が付きます。

何度も言いますが、不正受給は絶対にやめましょう。

不正受給が本当に辛い理由3選

不正受給になると重たい処分があるんだね…

ファスタ
ファスタ

そうなんです。

実際に処分が行われると、金銭的に本当に辛いです。

前出のとおり、不正受給に該当すると執行停止返還納付命令などの処分がなされます。処分が重たいことはなんとなく想像できたと思いますが、具体的にどういうところが辛いのか、以下で例を挙げます。

不正受給が本当に辛い理由3選
  • 返還命令・納付命令に従わないと強制執行される
  • 再就職手当がもらえない
  • 破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される

返還命令・納付命令に従わないと強制執行される

返還命令(不正受給金額の返還)・納付命令(罰金の支払い)に従わなかった場合、国税滞納処分の例によって強制執行されます。(雇用保険法第10条の4・労働保険徴収法第27条)

ファスタ
ファスタ

要は、お金を支払わないと、銀行口座の差し押さえや車・不動産の競売などを行い、強制的に財産を徴収される。ということです。

返還命令や納付命令は、所得税や住民税などの税金と同じくらい、支払いに強制力があります。国税徴収法により銀行や各行政機関への質問・調査依頼も可能になるため、財産を隠したり逃げ切ることも出来ません。また、銀行口座を差押えされると、差押えられている一定期間は銀行口座が使えなくなります。

ファスタ
ファスタ

一度不正受給処分をされたら、素直に支払うしか道はありません。

再就職手当がもらえない

不正受給後に早期再就職をしても、再就職手当はもらえません。前出のとおり、不正受給に該当し、執行停止処分を受けた後は失業保険の支払いが無くなります。このとき、支払いを停止された失業保険は、再就職手当の計算において支払ったものとみなされます。(雇用保険業務取扱要領57051(1)ロ)

再就職手当は、「就職日時点での失業保険残日数×支給率」で計算されます。執行停止処分をされると、以後の失業保険残日数が0になるので、「0(残日数)×支給率」になり、再就職手当は支払われなくなります

ファスタ
ファスタ

これが適用されて一番辛いパターンが、1日だけ不正受給してしまった後に、早期就職した場合です。以下で解説します。

 

  • 所定給付日数90日
  • 1日あたりの失業保険額5,000円
  • 支給期間令和6年1月1日~3月30日
  • 令和6年1月31日付再就職(残日数60日)

令和6年1月5日に申告せず1日だけ働き、それが不正受給になってしまった場合

このとき、1月5日の就労を正しく申告していれば、本来は総額358,500円がもらえました。(計算式)令和6年1月1日~1月30日の30日分から働いた1日分を除いた「29日分+再就職手当」がもらえる総額 残日数61日×70%で ⇒ (29日分×5,000円)+(61日分×70%×5,000円)=358,500円

令和6年1月5日が不正受給になることで、支払われるお金は令和6年1月1日~4日までの4日分、20,000円だけになります。(計算式)4日分×5,000円=20,000円

1日分のバイト代のためだけに、差額338,500円を捨ててしまうことになるのです。

破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される

返還命令(不正受給金額の返還)や納付命令(罰金の支払い)は、借金と違い破産しても消えず、本人が亡くなった場合は被相続人へ相続されます。(破産法第253条第1項・国税通則法第5条)

ファスタ
ファスタ

要は、全額払いきる以外に逃げ切る術は無い。ということです。

※ ただし、ケガや病気などで支払えなくなった場合や、生活保護などの社会保障給付の対象になった場合は、支払いが不要になる可能性があります。

もし自分が不正受給の処分対象になったら

もし不正受給の処分対象になったらどうしたらいいの?

ファスタ
ファスタ

出来る範囲で以下の3つを行ってください。

  • 自発的に申告する
  • 自身の行ったことを反省する
  • 不正に受給した金額を迅速に支払う

まず前提として、不正受給は絶対にしないでください。前出のとおりの重い処分がされますし、倫理観的にもアウトです。以上を踏まえたうえで、つい出来心で不正受給をしてしまった場合、以下の3つの行動を行ってください。

不正受給をしてしまった場合に取る行動
  • 自発的に申告する
  • 自身の行ったことを反省する
  • 不正受給した金額を迅速に支払う

自発的に申告する

まだハローワークに不正受給したことがバレていない段階であれば、不正に受給してしまったことを自発的に申告してください。刑事事件で、自首や出頭で量刑が軽くなるのと同じく、不正受給の場合でも処分が軽減される可能性があります。

ファスタ
ファスタ

もしまだ不正受給がバレていないのであれば、必ず自身から申告してください。

自身の行ったことを反省する

自身の行った不正受給に対して、言い訳や逆ギレをせずにしっかりと反省してください。ここでしっかりと反省することで、ハローワーク側も情状酌量してくれる可能性があります。

不正受給は一定の判断基準によって処分内容が決まりますが、処分する側も人間ですので、反省の態度を表すことで処分の軽減につながる可能性があります。

具体的には以下のような対応が理想です。

反省の態度を見せる対応
  • ハローワークからの出頭命令に従う
  • 提出を求められた書類は必ず提出する
  • ハローワークからの電話を無視しない
ファスタ
ファスタ

ハローワークの調査に進んで協力することが大切です。

しっかりと反省し、態度で表しましょう。

不正受給した金額を迅速に支払う

返還命令(不正受給金額の返還)や納付命令(罰金の支払い)があった場合は、全額を迅速に支払いましょう。一括での支払いが理想ですが、一括支払いが不可能な場合は、自身の生活状況をしっかりと説明し、支払いの意思があることを伝えましょう。誠実な対応をすると、罰金額の減額や、分割での支払いが認められる可能性があります。

ファスタ
ファスタ

分割での支払いになった場合、支払っている間も延滞金はかかり続けます。

なるべく早く支払い終わるようにしましょう。

まとめ

以上、失業保険の不正受給について、以下の3点から解説しました。

  • どんな処分の対象になるのか
  • 不正受給が本当に辛い理由3選
  • もし自分が不正受給の処分対象になったら

まとめると以下のとおりです。

不正受給になると、以下の3つの処分の対象になり、悪質な場合は詐欺罪として刑事告発されます。

不正受給の処分
  • 執行停止 = 以後失業保険の支払いが無くなる
  • 返還命令 = 不正に受給した金額を全額返還
  • 納付命令 = 罰金の支払い

不正受給に該当すると上記3つの処分対象になりますが、具体的にどういったところが辛いのか。

それが以下の3つです。

不正受給が本当に辛い理由3選
  • 返還命令・納付命令に従わないと強制執行される
  • 再就職手当がもらえない
  • 破産しても消えない・本人が亡くなっても相続される

不正受給をしてはいけませんが、もし不正受給してしまった場合は以下の3つの対応を取ってください。

不正受給をしてしまった場合に取る行動
  • 自発的に申告する
  • 自身の行ったことを反省する
  • 不正受給した金額を迅速に支払う

失業保険は、就職活動に専念するための給付金です。どうしても就職活動に専念できないときは、必ず事前にハローワークの窓口に相談しましょう。不正受給は倫理観的アウトですし、経済的にもメリットがありません。窓口では誠実な申告を心がけましょう。

実りある転職になることを祈っております。最後までご覧いただきありがとうございました。

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