「失業保険だけでは生活が苦しい」「働かない期間を作りたくない」「前の職場に頼まれている」などの理由から、失業保険受給中にアルバイトをすることがあります。週20時間未満であれば働きながら失業保険を受給することが可能ですが、1日の働く時間によって失業保険金額が調整されます。
1日4時間未満で働く場合は、1日当たりの収入金額によって失業保険の金額が調整されますが、交通費・通勤手当は収入金額に入るのか。結論、基本的には交通費も収入金額に含まれ、交通費の金額分、失業保険は減額されます。
ただし、状況によっては交通費が失業保険の減額対象にならないこともあります。交通費をもらっても失業保険の減額対象にならないケースは、以下の3つです。
この記事では、失業保険受給中のアルバイト先からもらえる交通費について、以下の3点から解説します。
- アルバイト先からの交通費は失業保険減額対象になるのか
- 雇用保険法上の賃金の考え方について
- 交通費が失業保険から減額されないケースについて
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
アルバイト先からもらえる交通費は失業保険の減額対象になる
失業保険受給中に1日4時間未満で働いた場合、1日当たりの収入金額によって、失業保険の受給金額が減額されます。アルバイト先から交通費が支給されている場合、基本的には交通費も収入金額に含まれ、交通費の金額分、失業保険は減額されます。理由としては、交通費は賃金であるとみなされる可能性が高いからです。
参考 雇用保険業務取扱要領51651‐51700
失業保険から減額する収入金額については、「自己の労働による収入」に該当するかで計算されますが、雇用保険業務取扱要領には「自己の労働による収入」の明確な定義はありません。そこで、大多数のハローワークでは雇用保険法上の賃金の考え方を使い、「自己の労働による収入」=「賃金」と考えて計算されています。
参考 雇用保険業務取扱要領51652(2) 「自己の労働による収入」の意義
失業保険の金額は、失業者が在職中にもらっていた賃金を基に計算しています。
失業保険の支払いの計算に賃金を使っているため、失業保険減額の計算も賃金を使おう。というわけです。
雇用保険業務取扱要領上、通勤手当などの交通費も賃金として計算されています。よって、失業保険受給中のアルバイトで支給される交通費も賃金(=「自己の労働による収入」)とみなし、失業保険の減額対象である収入金額に含まれる。という考え方が一般的です。
ただし、収入金額に含めるか判断が分かれる交通費もあります。
交通費の種類ごとに収入金額に含めるか含めないかを分けると、以下のとおりです。
- 毎月定額で支払われる通勤手当
- 雇用契約書に記載されている交通費
- 出張旅費
- 買い出しなどの交通費
- 日によってもらえないこともある交通費
- 雇用契約書に記載の無い交通費
判断が分かれるものは、各ハローワークによって取扱いが変わります。
該当しそうな方は、管轄のハローワークで確認しましょう。
交通費が失業保険の減額対象になるのは、1日4時間未満で働いた場合です。失業保険受給中に1日4時間未満で働いた場合どうなるのか、減額金額の計算方法については、以下の記事を参考にしてください↓
雇用保険法上の賃金について
前出のとおり、交通費が失業保険の減額対象になるかは、賃金(=「自己の労働による収入」)とみなされるかによって決まります。では、具体的に何が賃金に該当するのでしょうか。雇用保険法上、賃金とは以下の2つに当てはまるものをさします。
- 事業主が労働者に支払ったものであること
- 労働の対償として支払ったものであること
まとめると、賃金とは、「働くことの見返りとして、事業主が労働者に支払うことを約束しているもの」です。
健康保険や厚生年金の算定に用いる標準報酬とは違った計算方法・考え方になります。
参考 雇用保険業務取扱要領50401‐50450 賃金の範囲
事業主が労働者に支払ったもの
事業主が労働者に支払ったものでなければ、賃金に該当しません。事業主が労働者に支払ったものではない例として、「お客さんが従業員に直接渡すチップ」が挙げられます。チップは賃金に該当しないので、いくらもらっても失業保険の金額に影響しません。
ただし、チップが一度事業主の手に渡り、再分配される場合は賃金に該当します。
ご注意ください。
労働の対償として支払ったもの
労働の対償として支払ったものでなければ、賃金に該当しません。労働の対償として支払ったものとは、以下の2つに当てはまる場合を言います。
- 実費弁償的でないもの
- 恩恵的でないもの(=事業主に支払いが義務付けられているもの)
実費弁償的なものとしては、物品購入の立替費用、出張交通費、仕事で使用する道具の費用などが挙げられます。こういった費用を給料とともに支給されたとしても、実費弁償的なものであるため賃金には該当しません。
恩恵的なものとは、事業主に支払いが義務付けられていないものを言います。事業主に支払いが義務付けられていないものとしては、業績アップに貢献した社員への慰労金や、業務外の作業(清掃・買い出しなど)への手当が該当します。
ただし、慰労金や業務外の作業手当の支払いが事業主に義務付けられている場合は、賃金とみなされます。
事業主に支払いが義務付けられているものとは、労働協約・労働契約・就業規則・給与規定・慣習法などにより、支払いが定められているものを言います。
つまり、ルールや約束などで「AをしたらBを支払う」ということが決まっている場合です。
それ以外は、全て恩恵的なもの(=支払い義務無し)であると判断されます。
交通費をもらっても失業保険が減額されないケース
交通費は失業保険の減額対象になると伝えましたが、交通費が支給されていても失業保険が減額されない場合があります。具体例は以下の3つ。
交通費支給が雇用契約書に記載されてない
交通費支給が雇用契約書に記載されていない場合、交通費分は失業保険の減額対象にならない可能性があります。雇用契約書に記載されていない交通費は、恩恵的なものとして賃金とみなされない可能性があるからです。
前出のとおり、失業保険の減額対象になるかは、賃金(=「自己の労働による収入」)に該当するかで判断されます。雇用契約書に記載が無ければ、事業主に支払いが義務付けられていない(=恩恵的なものである)として、賃金に該当せず失業保険の減額対象にならない可能性があります。
ただし、あくまでも可能性です。
交通費が支払われている状況で変わるので、最終判断は管轄ハローワークに確認しましょう。
雇用契約書に記載が無くても、全従業員に交通費が支払われていたり、これまで同じ職種に就いている人が全員交通費をもらっている場合は、事業主に支払いが義務付けられている(=賃金である)として、失業保険の減額対象になることもあります。
出張費など実費弁償分の交通費
出張費など実費弁償分の交通費は、失業保険の減額対象になりません。実費弁償分の交通費は賃金とみなされないためです。
このケースは確実に減額対象になりません。
ただし、どこまでを出張旅費と取り扱うかは、ハローワークごとに判断が分かれます。
詳細は管轄ハローワークに確認しましょう。
1日4時間以上働く場合
1日4時間以上働いた日の交通費は、失業保険の減額対象になりません。1日4時間以上働いた日については、収入金額によらず1日分の支給が全て先送りにされるためです。失業保険受給中のアルバイトは、1日の働く時間数によって取扱いが変わります。
- 1日4時間以上 ⇒ 1日分全額先送り
- 1日4時間未満 ⇒ 収入金額によって減額
1日4時間以上働けば、交通費をもらっている・いないに関わらず、失業保険減額の処理は行われません。
失業保険受給中に1日4時間以上働いた場合はどうなるか、1日4時間以上と4時間未満ではどちらがお得なのか、効率的な失業保険の受給の仕方については、以下の記事を参考にしてください↓
まとめ(締め)
以上、失業保険受給中のアルバイト先からもらえる交通費について、以下の3点から解説しました。
- アルバイト先からの交通費は失業保険減額対象になるのか
- 雇用保険法上の賃金の考え方について
- 交通費が失業保険から減額されないケースについて
まとめると以下のとおり。
失業保険受給中に1日4時間未満で働いた場合は、1日当たりの収入金額によって失業保険の受給金額が減額されますが、基本的には交通費も収入金額に含まれ、交通費の金額分、失業保険は減額されます。
交通費が失業保険の減額対象になるかは、もらっている交通費が雇用保険法上の賃金に該当するかで判断され、雇用保険法上の賃金とは以下の条件に当てはまるものです。
- 事業主が労働者に支払ったものであること
- 労働の対償として支払ったものであること
基本的に交通費は失業保険の減額対象ですが、減額対象にならない交通費も存在します。交通費が失業保険の減額対象にならないケースは以下のとおり。
失業保険受給中にアルバイトを行う理由は様々ですが、なるべく失業保険は減額されたくないと思う方が多数派です。自身がもらっている交通費が減額対象になるのか、疑問がある方は、一度ハローワークの窓口で確認してみましょう。
実りある転職になるよう祈っております。最後までお読みいただきありがとうございました。
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