皆様は「失業保険」という制度をご存じでしょうか。
知ってるよ!会社を辞めたらもらえるお金でしょ?
会社を辞めた人が全員もらえるわけじゃないんです
雇用保険を受給できる条件は次の3つ
- 雇用保険をかけていた人が雇用保険を抜けて(退職して)
- 働きたい+働ける状態なのに仕事が見つかっていなくて
- 退職までに、雇用保険をかけていた期間が12か月以上あること
この条件に当てはまる方が、ハローワークへ必要書類を持参のうえで申請した場合にもらえる手当です。
- 離職票-1
- 離職票-2
- 本人確認書類
- 自己の名義の口座の通帳又はキャッシュカード
- マイナンバーカード又はマイナンバー入りの住民票
- 写真2枚
- 印鑑
この記事では、
- 失業保険をもらうための具体的な条件・考え方を知りたい
- 現在退職を考えており失業保険について知っておきたい
- そもそも失業保険がどんな制度か知りたい
という方に向けて、私の窓口での業務経験と、雇用保険の取り扱いが定められている「雇用保険施行規則」を用いて解説します。
実際に受給するにあたって、対象になるのはどういった場合かをメインに解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険とは
失業保険とは、雇用保険の被保険者であった方が離職し、「就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に就職活動を行っている状態にある」ときに、安心して就職活動に専念できるようにその生活費の補填を目的として支給される手当になります。
仕事を探すのが条件なんだね
そう、仕事を探している間だけの給付なので、最長でも1年以内の短期間の給付になります
受給金額
受給できる1日当たりの金額は、退職前6か月間の給料の平均1日分を計算し、その50~80%を失業保険の1日分として支給します。
なお、このときもらっていた給料の金額によりますが、大体60~70%になることが多いです。
給付日数
退職理由と雇用保険の加入期間によって受給できる日数が変わります。
なお、加入期間については一度失業保険をもらうとリセットされます。
ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数 (mhlw.go.jp)
受給期限
失業保険は離職日から1年の間でしか受給することができません。
手続きが遅くなると、本来もらえたはずの失業保険の一部がもらえなくなることがあるので、早めの手続きを心がけてください。
受給資格について
実際申請するにあたっての受給資格について、初めに書いたように以下の3つの条件があります。
- 雇用保険をかけていた人が雇用保険を抜けて(退職して)
- 働きたい+働ける状態なのに仕事が見つかっていなくて
- 退職までに、雇用保険をかけていた期間が12か月以上あること
この3つの条件について、詳しく見ていきます。
雇用保険をかけていた人が雇用保険を抜けて
これは単純に会社を辞めている状態です。退職していれば問題ありません。
なお、完全な退職ではなく、週20時間未満の働き方になったことによって雇用保険を抜けることがありますが、この場合も他の2つの条件を満たしていれば失業保険を受給することができます。
雇用保険をかけているかわからないんだけど
給与明細を見てください!雇用保険料が引かれていると基本的には加入しています
万が一会社が加入の手続きを忘れていても、雇用保険料が引かれている期間については、後日さかのぼって加入することができます。
こういったこともあり得るので、給与明細等働いていた証拠書類はなるべく捨てないようにしておきましょう。
働きたい+働ける状態なのに仕事が見つかっていない
これは、より細かく以下の3つの条件に分けられます。
- 申請時点で内定をもらっておらず
- 週20時間以上の仕事を探しており
- 就職先が見つかればすぐに働ける状態
申請時点で内定をもらっていない
申請の時点ではまだ就職の内定をもらっていないことが条件になります。
辞める前に内定をもらっちゃった…
その場合でも、もっと自分に合う仕事を探し続けるのであれば、仕事を探している間については受給できることがあります。
内定をもらっていれば直ちにダメなのではなく、あくまで仕事を探すかどうかが条件になります。
詳しくは管轄のハローワークに確認してください。(もちろん、仕事を探していても、内定をもらっているところですでに就職していれば失業保険はもらえません。)
ただし、その場合、失業保険申請前にすでに内定をもらっていた就職先に再就職しても、早期就職のお祝い金である再就職手当はもらえないのでご注意ください。(新たに見つけた再就職先であればもらえる可能性があります。)
週20時間以上の仕事を探している
週20時間以上の仕事を探していること。これは雇用保険に再度加入する働き方であること、という意味です。
ご年配の方や、結婚して配偶者の社会保険の扶養に入ることを希望している方がこの条件に引っ掛かることが多いです。
配偶者の扶養に入りたかったけど、失業保険をもらいたい場合はダメってこと?
絶対ダメというわけではありません。週20時間以上働いても稼ぐ金額によっては扶養に入れることもありますので、ハローワークの担当者に希望を伝えてみましょう。
「雇用保険に入る=扶養に入れない」ではないので、扶養に入ることを希望している健康保険の担当者に確認してみてください。
また、妊娠・出産のために退職した場合の扶養については、以下の記事が参考になると思います。
就職先が見つかればすぐに働ける状態
ケガや病気をしていたり、出産が控えていたり、資格試験の勉強に専念したい等の理由で、仕事が見つかってもすぐに働けません、という場合は受給ができません。
働けないのに失業保険ももらえないってこと?
残念ながらそうなります。ただ、失業保険とは別の保護制度の対象になることがあります。
ケガや病気・出産育児で働けない場合は生活保護の対象になる可能性があります。
また、ケガや病気で働けない場合は健康保険の傷病手当金の対象になることもあります。
生活保護はお住いの自治体へ、傷病手当金は加入していた健康保険の団体に問い合わせてみてください。
自身の加入している健康保険の団体がわからない方は、お持ちの保険証の下の方を見てみてください。そこに保険者の名称が書いてあります。それが加入している団体名になりますので、その名称をインターネットで検索すれば連絡先がヒットします。
退職までに、雇用保険をかけていた期間が12か月以上あること
失業保険を受給するためには1年以上雇用保険をかけていることが条件です。もっと細かくいうと、月11日以上働いている月が、満12か月以上必要になります。
1年以上雇用保険をかけていたとしても、病気休職等で11日以上出勤していない月があればその月は加入期間としてカウントされません。
また、月の途中で退職する場合、退職月の途中までで11日以上働いていたとしても、その月は1月分としてカウントされません。
辞めるタイミングによってもらえるかもらえないか変わることがあるんだね
ここは実際に離職票を見てみないと、条件に当てはまるかわかりません。不安なときはハローワークの窓口で聞いてみましょう。
なお、退職までに雇用保険を12か月以上かけていなくても、受給できる場合があります。それは、
- 離職理由が会社都合や、やむを得ない自己都合のとき
- 退職する前の会社で雇用保険をかけており、そこで加入していた期間を足すと12か月を超えるとき
離職理由が会社都合・やむを得ない自己都合
退職理由が会社都合(解雇、退職勧奨)の場合や、やむを得ない自己都合(病気・配偶者の転勤など)の場合は、6か月以上雇用保険をかけていれば受給できます。自身の離職理由がなににあたるかについては管轄のハローワークで確認しましょう。
合算すると12か月以上になるとき
雇用保険を12か月以上かけているかどうかは、直近の退職から2年前までさかのぼれます。
その期間に12か月以上加入期間があれば大丈夫です。
例 A社 2015年4月1日入社~2022年2月28日 自己都合退職
B社 2022年4月1日入社~2022年9月30日 自己都合退職
このとき、雇用保険の加入期間の計算は、2020年10月1日~2022年9月30日の期間で数えます。
なので、B社での6か月間と、A社での6か月間を合わせて12か月になり、「受給資格あり」になります。
ここで注意点が2つあります。
- 雇用保険の加入期間に1年以上の空白期間がある場合は通算できない
- 一度失業保険をもらうと、それまでの加入期間は0になる
これを踏まえたうえで、自身の雇用保険加入期間について計算してみてください。
もちろん、不明なときは自身の管轄ハローワークでの確認を忘れずにお願いします。
受給資格に当てはまっていないときの対処法
ここまで見て、受給資格があるか微妙なときはどうすればいいの?
基本はハローワークに確認になります。
よくある事例として、会社が雇用保険の手続きをしていなかった場合を対処法付きで解説しますね。
資格喪失の手続きができていない
雇用保険を加入していたのに、会社が退職後の手続きをしてくれない。
こんなときは、まずは会社にしっかりとお願いし、できればそのお願いした記録も残しておきましょう。それでもなお会社が対応してくれないときは、自身の管轄のハローワークに申し出しましょう。
雇用保険上の退職後の手続きは主に2つ
- 雇用保険の喪失手続き
- 離職票の発行
喪失手続きが遅いとき
会社を退職後、雇用保険を抜ける手続きを喪失の手続きといい、この手続きは離職後10日以内に行うことが雇用保険施行規則によって定められています。
これに違反した場合、事業主は罰則を受けることになります。(実際に適用された例はあまりないようですが…)
こういった規則があるので、離職後10日以上経っても会社が手続きしてくれないときは、ハローワークに申出することで、ハローワークが会社に対して迅速な手続きのお願いをしてくれます。
事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届(様式第四号又は様式第四号の二。以下「資格喪失届」という。)に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳その他の当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの事実及びその事実のあつた年月日を証明することができる書類を添えてその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。この場合において、当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの原因が離職であるときは、当該資格喪失届に、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める書類を添えなければならない。
雇用保険施行規則 第七条
離職票を発行してくれない
会社が離職票を発行してくれない。
こんなときもまずは会社にしっかりとお願いし、お願いした記録を残しておきます。それでも会社が発行してくれないときはハローワークに申出しましょう。
なお、離職票の発行については、必ず退職前に会社に伝えておきましょう。原則本人からの希望がない限り事業主に発行の義務はありません。
本人が希望を伝えていないのにハローワークから会社にお願いする形になると、話がこじれてしまって発行がスムーズにいかなくなることがありますので注意してください。
3 事業主は、第一項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。
雇用保険施行規則 第7条
まとめ
以上、失業保険をもらうための3つの条件
- 雇用保険をかけていた人が雇用保険を抜けて(退職して)
- 働きたい+働ける状態なのに仕事が見つかっていなくて
- 退職までに、雇用保険をかけていた期間が12か月以上あること
について解説しました。
いずれの条件についても、当てはまらない場合には、ハローワークの窓口に相談することで適切な助言がもらえることがあります。
また、現状では受給資格の条件にあてはまらなくても、できる限りの証拠資料をそろえ、自身の状態と希望を伝えると、ハローワーク職員からの助言がもらえることがあります。
そして、その助言通りに適切な手続きを行うことで資格が発生することがありますので、どうしても受給したいときは一度管轄ハローワークまで相談してみてください。
失業保険は就職活動においての心強い味方になります。
自身にあった就職先が見つかるよう、落ち着いた就職活動を行うためにも、失業保険をもらうための条件についてしっかりと勉強しておきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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