失業保険についてネットなどで調べていくと、「延長ができる」というワードをよく見かけます。この「失業保険の延長」には、受給期間の延長と給付日数の延長の2つの意味があり、それぞれ対象者や延長できる期間など、制度が全く異なります。
具体的な制度の内容や申請方法についてはこの記事では解説しません。具体的な内容の詳細については、以下のURLを参考にしてください。
受給期間延長制度についての詳細は、以下の記事を参考にしてください↓
失業保険の給付日数の延長制度の詳細については、以下の記事を参考にしてください↓
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険について
失業保険とは、1年以上雇用保険をかけていた方が退職し、失業状態にある場合に受給できる給付金制度です。
※ 正式名称は求職者給付の「基本手当」ですが、この記事では、わかりやすく失業保険と呼んで解説します。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
以下の状態に当てはまる方は失業状態とみなされず、失業保険の受給対象になりません。
- 次の就職先が見つかっている
- ケガ・病気・妊娠・出産などすぐに働けない事情がある
- すでに働き始めている
- 自営業をしている(始めようとしている)
- 家事に専念するなど働くことを希望していない
働かない・働かない・仕事を探さない(探せない)は全て失業保険の対象外です。
自身が失業保険の対象になるか分からない方は、お住いの近くのハローワークで相談してみましょう。
失業保険は、前職の給与から1日分の失業保険金額を計算し、「1日分の金額 × 認定された日数」を計算して分割で支払われていきます。1日あたりの給付の日額は、退職直前の6か月間の給与を基に算定され、認定される日数は4週間ごとの失業認定日に確認します。
失業保険は、失業期間中に無限に支払われるわけではなく、もらえる日数に上限があります。この上限を「所定給付日数」と呼び、所定給付日数は離職理由・離職時の年齢・雇用保険加入期間の3つによって決まります。所定給付日数は最低90日から最大360日と幅があり、自己都合退職の方は少なく、会社都合退職の方は多く算定されます。
失業保険を受け取ることができる有効期限は退職日から1年間で、有効期限を過ぎてしまうと、所定給付日数がどれだけ余っていても、残りの日数分を受け取ることができなくなります。早めの申請を心がけましょう。
有効期限を過ぎてしまう例として、以下が挙げられます。
- 失業保険の申請が遅れる
- 受給中にアルバイトをたくさんしてしまう
- 失業認定日にハローワークに行かずに何度も不認定になる
- 失業認定日までに規定回数の求職活動をせず何度も不認定になる
失業保険が有効期限を過ぎてしまわないように、以下をきっちり守りましょう。
- 退職後は申請を速やかに行う
- 毎回の認定日は必ず行く&規定の求職活動を行う
- アルバイトは計画的に
失業保険の延長について
前出のとおり、失業保険の延長制度には受給期間の延長と給付日数の延長の2つの意味があります。
この2つの制度について、以下でそれぞれどのような内容か見ていきましょう。自身がどちらの延長制度の対象になりそうなのか、またはどちらを詳しく調べたいのか意識しながら見てください。
受給期間の延長
- なにを延長
⇒ 受給できる有効期限 - 延長できる期間
⇒ 最大3年間 - 対象者
⇒ やむを得ない理由ですぐに仕事ができない状態の人 - なぜこの制度があるのか
⇒ 妊娠や病気、介護等が理由で退職した人は、有効期限内に仕事ができる状態にならないことも多い。このような一定のやむを得ない理由で働けない人を、失業保険の対象から外してしまうのは制度の趣旨にそぐわないため。
失業保険の有効期限は退職日の翌日から1年間ですが、これを最大3年間、仕事ができる状態になるまで有効期限を延ばすことができる制度です。受給期間延長の対象は、以下の理由で働けない場合に当てはまります。
- 妊娠・出産・育児
- ケガ・病気
- 配偶者の海外出張の同行
- 親族の介護
- 青年海外協力隊・被災地ボランティアの参加
- 定年退職後ゆっくりしたい
参考法令等 雇用保険法第20条 雇用保険業務取扱要領 第3章 50251-50300
延長が認められる「やむを得ない理由」
受給期間の延長が認められる「やむを得ない理由」の主な対象は以下のとおり。
- 妊娠・出産・育児
- ケガ・病気
- 配偶者の海外出張の同行
- 親族の介護
- 青年海外協力隊・被災地ボランティアの参加
- 定年退職後ゆっくりしたい
これに加えて、2022年7月1日以降、会社を退職後に自営業を開始するため、失業保険を受けることができない人も延長の対象になりました。
退職後、これらの理由ですぐには仕事ができない状態にある方は、受給期間の延長の手続きが行えます。
もちろんですが、これらの理由に当てはまっていても仕事ができる状態であれば失業保険の受給申請は可能です。すぐに仕事を探す方がいいのか、仕事ができる状態になるまで待つ方がいいのか、パートナーや家族、友人と相談しながら決めましょう。
給付日数の延長
- なにを延長
⇒ もらえる失業保険の日数 - 延長できる期間
⇒ 1日~最長2年間 - 対象者
⇒ 仕事を探しているが、失業保険をもらっている期間には就職先が見つからず、就職先が見つからないことにやむを得ない理由があり、元々の失業保険の上限日数をもらい終わってもなお、ハローワークの支援を必要とする人 - なぜこの制度があるのか
⇒ 失業保険は就職活動中という短期間の生活保障を前提にしているが、そのときの社会情勢(リーマンショックやコロナなど)や地域の雇用情勢など、本人がいくら努力しても仕事が見つからない状況がある。そういった状況では、通常内容の給付だと求職者保護が足りなくなる可能性があるため。
失業保険の給付日数の上限は、前出のとおり離職理由・離職時の年齢・雇用保険加入期間の3つによって決まります。給付日数の延長は、元々の給付日数をもらい終わった後、さらに追加で給付を受けることが出来る制度です。
この給付日数の延長は、本人からなにか申請をして対象になるのではなく、ハローワークが対象者になるかを判定します。対象者にあたっていればハローワークから説明がありますので、対象になる場合は説明をしっかりと聞いておきましょう。
給付日数の延長対象になるかについては、企業への応募回数・失業の不認定が無いか、も判定の対象になります。積極的に求職活動を行い、失業認定日には必ずハローワークに行きましょう。
参考 雇用保険業務取扱要領 第13章 52301-52700
給付日数の延長の種類
給付日数の延長には様々な種類があり、その時々で新設されていく制度もあります。2024年10月1日時点で存在する延長給付制度は以下の5つ。
- 訓練延長給付(受講中+終了後の2種類あり)
- 個別延長給付
- 広域延長給付
- 全国延長給付
- 地域延長給付
訓練延長給付以外は、いずれも「雇用情勢が悪いとき=失業者がたくさんいるとき」や、「自身の就労先か居住地が大規模災害の被災地になったとき」に対象になります。(直近では東日本大震災やコロナの緊急事態宣言時など)
ハローワークからのアナウンスがないときは、基本的には対象になりません。延長給付の対象になるかを第一に考えず、粛々と就職活動を続けていきましょう。
まとめ
以上、失業保険の2つの延長制度について解説しました。
失業保険の延長は、本当に困っているときの心強い助けになります。自身がどちらの延長制度について調べたいのか、対象になるのかしっかりと把握しておきましょう。
実りある転職になるよう祈っております。最後までご覧いただきありがとうございました。
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