人生100年時代の到来にあたって、学び直し(=リスキリング)が注目されています。そのため、専門的な知識を学ぶことを目的に会社を退職し、専門学校や大学院などに入学する方が増えています。
失業保険は、受給の条件に「週20時間以上の仕事を探していて、見つかればすぐに働けること」という条件があります。退職後に学生になる場合はこの条件に当てはまらず、失業保険がもらえません。
例外的に、以下の3つの方法であれば学生でも失業保険をもらうことが出来ます。
この記事では、学生と雇用保険の関係について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
学生は失業保険の対象にならない
原則、学生は失業保険の対象になりません。失業保険は、雇用保険に加入していた人が会社を退職後、失業状態である場合に支払われる給付金です。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
「仕事を探していて、見つかればすぐに働けること」が条件なので、昼間学生は失業保険の支給対象外になります。
参考 雇用保険事務取扱要領 「51254(4)労働の意思及び能力があるかどうかの確認」 ハの(チ)
昼間学生は学業に専念する必要があります。
「すぐに週20時間以上の仕事が出来る状態」では無いので、対象外とされています。
失業保険の受給対象者について、詳細は以下の記事を参考にしてください↓
学生は雇用保険の加入対象者ではない
昼間学生は、雇用保険の加入対象ではありません。雇用保険の加入対象者について、雇用保険法では加入対象にならない条件のみを規定しています。以下に当てはまる方は、雇用保険の加入対象になりません。
- 週20時間未満の労働契約の人
- 同じ会社で継続して31日以上働く見込みがない人
- 季節的に雇用される人
- 学生
- 船員
- 国、地方公共団体に雇用される人
まとめると以下の4つの条件を満たす人が、雇用保険の加入対象になります。
- 雇用保険の適用事業所で
- 週20時間以上働いている
- 継続して31日以上の雇用期間が見込まれる人で
- 学生、船員、国・地方公共団体の職員、季節的に雇用されるものでないこと
雇用保険法で定められている加入対象にならない学生とは、「学校教育法第1条の学校」の学生又は生徒です。学校教育法第1条の学校は以下の施設です。
※ 大学院については、学校教育法第97条により大学と同じ扱いとされています。
要は、幼稚園~大学生までは雇用保険の加入対象にならない。
ということです。
雇用保険の加入対象者とは、加入のメリットデメリットについては、以下の記事を参考にしてください↓
学生が失業保険をもらう方法
これまで見てきたように、学生は雇用保険の加入の対象になりませんし、会社を退職後に学生になる場合は労働の能力がないものと推定されるため、失業保険の支給対象になりません。例外的に、以下の3つの方法であれば、学生でも失業保険を受給することが出来ます。
なお、いずれの場合も失業状態であることは必須条件です。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
夜間・通信制の学校に通う
夜間・通信制の学校に通う場合は、学生でも失業保険を受給することが出来ます。要領上、「労働の能力なし」と推定されるのは昼間学生です。夜間・通信制の学校に通うのであれば、失業状態を満たす限り失業保険を受給出来ます。
夜間・通信制の学校は、働きながら勉強できるよう制度設計されているところが多く、失業保険の条件である「すぐに働ける状態」と矛盾しません。夜間・通信制の学校に通いながら失業保険を受給する場合は、ハローワークの窓口で学校に通うことを伝えておきましょう。
勉強と就職活動の両立はしんどいですが、がんばりましょう。
乗り越えた先にきっといい未来が待っています。
公共職業訓練施設で学ぶ
ハローワーク等で斡旋する公共職業訓練施設で学ぶ場合は、学生でも失業保険が受給できます。
参考 厚生労働省 雇用保険事務取扱要領 「51254(4)労働の意思及び能力があるかどうかの確認」 ニ
公共職業訓練については以下のリンクを参考にしてみてください。
出典 厚生労働省 公共職業訓練の概要 01_0005.pdf (mhlw.go.jp)
教育訓練給付の対象講座を受講する
雇用保険の給付制度の一つである教育訓練給付の対象講座を受講する場合は、昼間学生で失業保険が受給できます。
こちらも、上記「雇用保険事務取扱要領 51254(4)労働の意思及び能力があるかどうかの確認 ニの(ニ)」にばっちり記載されています。
また、失業保険をもらうためには4週間に一度の「認定日」ごとに、2回の求職活動が必要になりますが、教育訓練給付の対象講座や公共職業訓練を受講していると、この2回の活動実績が免除されます。
参考 厚生労働省 雇用保険事務取扱要領 「51254(4)労働の意思及び能力があるかどうかの確認」 ロの(ハ)
これまでの3つに当てはまらない場合
会社を退職後に、学生になっても失業保険をもらう方法を3つ紹介しましたが、実は、これに加えてもう一つだけもらえるパターンが存在します。
それは「昼間学生をしつつ週20時間以上の就労を目指す就職活動を行う」です。
え、ダメって言ってたじゃん!
理屈さえ通っていればもらえる条件に当てはまってくるんです。
例えば、「事業主の許可をもらって、週20時間以上の雇用関係を継続しながら全日制の学校に通っていた人が退職し、同じ条件の会社を探すことを希望する場合」などです。
これまでもずっと学校に通いながら週20時間以上の就労を行っていたため、再就職希望条件に無理がなく、理屈が通っています。このように、必要な前提条件はありますが、前出の3つの条件に当てはまっていなくても失業保険がもらえることがあります。
まとめ
以上、会社を退職後に学生になる場合の失業保険の受給方法について解説しました。方法は以下の3つ
なお、いずれも週20時間以上の仕事を探し、見つかればできる状態であることは必須条件ですのでご注意ください。また、上記3つに当てはまっていなくても失業保険をもらえる場合についても解説しました。
退職後に学生になる場合に申請する失業保険については、雇用保険事務取扱要領でその条件を厳しく設定していますが、いずれも「推定する」であったり、「慎重に取り扱う」といった婉曲的な表現を使用しているため、結構融通が利きます。
学校に通いながら失業保険をもらいたい場合、窓口の職員の方に自身の希望を伝え、相談してみてください。適切な方法を教えてくれると思います。人生100年時代、ぜひ学び直しの機会を有効に使ってみてくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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