妊娠で退職した場合は失業保険がもらえない?!妊娠退職と社会保険・税金について

雇用保険制度

この記事の想定読者

・妊娠をきっかけに退職するが、失業保険がどうなるか知りたい。

・失業保険制度のことがよくわからない。

・実際に妊娠退職したあと、どういう手続きをするのか知りたい。

妊娠をきっかけに退職したんですけど、社会保険はどうなりますか?

私がハローワークの窓口で勤めているとき、上記の質問がよくありました。

回答としては以下になります。

  • 仕事ができないうちは失業保険が受給できません。有効期限の延長をしておきましょう
  • 仕事ができるようになり、失業保険の手続きをしたときは、自己都合退職の場合でも給付制限期間(失業保険がもらえない期間)を無くすことができます。
  • 健康保険については、受給期間延長中は旦那さんか親御さんなど、生活費を稼いでいる方の扶養に入っておくことをオススメします。なお、失業保険をもらっている間は扶養に入れなくなることがあります。

つまりどういうこと?

ファスタ
ファスタ

整理すると、

失業保険」→とりあえず働けるようになるまでおいておく。働けるようになれば手続き後すぐにもらえるかも。

健康保険」→家族の扶養に入っておく。失業保険をもらうと扶養を抜けないとダメかも。

ということです。

この記事では、妊娠して会社を退職する方に向けて、雇用保険制度をメインに解説します。

退職するにあたっての不安をなるべく解消できるようかみ砕いて説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓

雇用保険に関する業務取扱要領(令和5年8月1日以降) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

妊娠退職した場合の失業保険

 妊娠退職した場合、失業保険の手続きについては3つのポイントがあります。

  1. 妊娠中の受給は原則不可
  2. 1を踏まえて、妊娠中は受給期間の延長をしておく
  3. 産後、実際に給付を受けるときは早めにもらえるようになる

この3点について、以下で解説していきます。

妊娠中は原則受給はできない

妊娠中は、原則失業保険をもらうことができません。

出産を控えているため仕事を探せる状態ではなく、仮に仕事が見つかったとしても、すぐに働ける状態ではない。とみなされるためです。

出典 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html

妊娠中でも受給できる場合

ただし、妊娠中でも受給できる場合があります。

それは「週20時間以上の短時間の仕事を探して、仕事が見つかればすぐにでも働けます。」という状況で、本人が就職を希望する場合です。

ただ、それでも産前6週~産後8週の期間については、法律で就業が禁じられているためどんな理由があっても失業保険は受給できません。(産後6週以降で医師の就労可能証明がある場合を除く)

なので、どうしても先に失業保険を受給しておきたい方については、ハローワークの窓口で「産前6週になるまでは短時間の仕事を探し、見つかればすぐ働けます。」と申告しましょう。

※もちろんですが、探さない・見つかっても働けない状態で失業保険を受給すると不正受給にあたります。嘘はつかないようにしましょう。

出典:厚生労働省 業務取扱要領(雇用保険給付関係)196ページ 51254(4)ハの(イ)

出典 厚生労働省 業務取扱要領(雇用保険給付関係)197ページ 51254(4)ハの(ヘ)

失業保険には有効期限がある

妊娠中は受給できません。そして、失業保険には有効期限(受給期限)があります。

受給期限は、退職の翌日から1年間です。

例 令和4年8月20日退職の場合 → 受給期限は、令和4年8月21日~令和5年8月20日

受給期限とは「どれだけ受給の権利を持っていようが、その日を過ぎればすべて消えてなくなる。」というものです。

実際に、失業保険の手続きをせずに受給期限をむかえてしまい、10年以上かけた雇用保険が全くもらえなかった方もいらっしゃいました。

え~!じゃあ妊娠中に受給期限が来てしまったら、今までかけていた雇用保険はすべて無駄ってこと?

ファスタ
ファスタ

有効期限(受給期限)を後ろにずらす受給期間延長手続きをすれば大丈夫です!

受給期間延長制度とはどんな制度か、申請方法や対象者など、詳細については以下の記事を参考にしてください↓

受給期間の延長手続き

妊娠中に受給期限が到来し、失業保険がもらえなくなる前に受給期間の延長の手続きをしましょう。

申請書類
  • 受給期間延長申請書
  • 離職票-2
  • 母子手帳(郵送の場合はコピー)

上記の申請書類を、退職後30日以上過ぎてから管轄のハローワークへ提出して手続きを行います。

窓口に直接申請に行く場合、受給期間延長申請書はハローワークの窓口に常備してあるので、離職票-2と母子手帳を持って行けばOKです。

手続き後に、以下の2つの書類がもらえます。

手続き後にもらえる書類
  • 受給期間延長決定通知書
  • 離職票-2

これは必ず無くさず大切に保管しておきましょう。出産後、働けるようになったときに失業保険受給の申請をしますが、その時に提出する必須書類になります。

なお、受給期限の延長とは受給期限を働けるようになるときまで残しておく制度です。もらえる日数が増えるわけではありません

郵送で申請する場合

また、受給期間延長の書類は郵送での提出も可能です。

その場合は「受給期間延長申請書」を先にハローワークの窓口でもらうか、電話をして自宅まで郵送してもらうようお願いし、必要事項を記入後、郵送で提出しましょう。

郵送の場合は、母子手帳はコピーを取って提出します。申請の際に必要になる情報は以下の2点。

  1. 「保護者の氏名」
    • 妊娠して受給期間延長するのは誰ですか~?の確認
  2. 「妊娠の初診日」
    • 働けないのはいつからですか~?の確認

この2つの情報の確認のためにコピーを取るページは、「表紙」と「初診日」のページです。

出産後、すぐにもらえるようにしよう

通常、妊娠をきっかけに退職した場合であっても、自身から退職の申し出をした場合は自己都合退職になります。

自己都合退職の場合、手続きを行ってから2か月間「給付制限期間」というお金がもらえない期間が発生します。

手続き後の流れとしては、

手続き ⇒ 待機7日間 ⇒ 給付制限2か月 ⇒ 認定 ⇒ 振込

になるため、自己都合の場合は手続きをしてから初めて口座にお金が入るまで3か月ほどかかるのが通常です。

ただし、自己都合退職であっても、正当な理由のある自己都合退職の場合は、離職理由を変更し、給付制限をなくすことができるのです。(離職理由を特定理由離職者へ変更)

給付制限がなくなると、初めて口座に入るのは受給の手続き後1か月後ぐらいになります。

流れはこうです

  1. 受給期間延長の申請
  2. 出産
  3. 働けるようになった時点で受給の申請

受給の申請の時点で窓口の職員が離職理由の変更の案内をしてくれると思いますので、説明を聞いて変更してもらってください。万が一なにも言われなかった場合は自身で聞いてみましょう。

このとき、注意したいのは妊娠での退職は必ず離職理由が変更されるわけではない点です。

妊娠・出産・育児により離職し、受給期間延長の決定を受けたものが離職理由の変更にあたるため、受給期間延長手続きをしていない方は対象になりません。

また、「妊娠・出産・育児により離職し」とあるように、退職後に妊娠が発覚した場合も対象になりませんのでご注意ください。

出典 厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク) 「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」

失業保険以外の手続きについて

退職後に行う手続きは失業保険だけではありません。

以下ではその他の手続きについて解説します。

健康保険について

退職後は健康保険の切り替えの手続きが必要になります。

どこの健康保険に入るかの選択肢は以下の3つです。

  1. 配偶者の扶養に入る
  2. 元の健康保険を任意継続する
  3. 国民健康保険に入る

配偶者の扶養に入る

配偶者の扶養に入る場合、年間の所得見込みが130万円未満であることなどが条件になります。詳細は配偶者の方の会社の総務・事務の担当に確認しましょう。

その際、扶養に入る時点で所得を得ていない確認書類として、「受給期間延長決定通知書」の提出を求められることがあります。提出を求められた場合はコピーを提出しましょう。

また、実際に失業保険を受給している間は(失業保険も所得にみなされるため)扶養に入れない場合があります。

失業保険の金額によって変わるので、この点についても事前に夫の会社へ確認しておきましょう。

退職前の会社の健康保険を任意継続する

任意継続制度は、退職前の会社の健康保険を最大2年間継続できる制度です。

手続きは元の会社の総務・事務担当に退職前に確認しておきましょう。

会社が負担していた保険料も負担することになるため、保険料は割高に感じますが、国民健康保険よりは比較的安くなる場合が多いです。

任意継続することのメリット・デメリットを比較したうえで加入を検討してみてください。

国民健康保険に入る

上記のどちらも選択しなかった場合、お住いの自治体の国民健康保険に加入することになります。

手続きはお住いの自治体へお問い合わせください。

妊娠退職後に夫の扶養に入れない(自営業等で、ある程度の収入がある)、元の会社の健康保険を任意継続するメリットがない場合などはこの選択肢になります。

退職後収入が一定以下の場合は保険料を減額したり支払いを待ってもらえたりするので、その点も併せてお住いの自治体に確認してみましょう。

税金について

その年中に給与収入・その他の収入がある場合、確定申告が必要です。

会社に勤めている場合は給与収入分については会社が年末調整をしてくれていましたが、年末調整前に退職した場合は自身で確定申告をしなければいけません。

会社から送られてくる源泉徴収票をもとに、税務署へ申告に行きましょう。

e-Taxを利用すると、実際に窓口に行く必要がありません。税務署へ行くのが面倒な方は利用してみましょう。

【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス) (nta.go.jp)

リンク先:国税庁 e-Tax

なお、失業保険は非課税のため、当年中の収入が失業保険のみの場合は申告の必要はありません。(雇用保険法 第十二条により対象外になる)

まとめ

妊娠退職した場合の手続きについて、雇用保険の制度を中心に解説しました。

制度上複雑になってしまうところなど何点かありましたが、どうしても詳細を確認したい場合はそれぞれの窓口まで問い合わせてください。

雇用保険 お住いの管轄のハローワーク

健康保険 夫の扶養に入るとき 夫の会社の総務・事務担当

     任意継続するとき 元の会社の総務・事務担当

     国民健康保険 お住いの自治体

税金   お住いの管轄の税務署

素直に現状を話せば、いずれの窓口・担当者も親身に対応してくれると思いますので、怖がらずに聞いてみてください。

手続きは早めに済ませておくに越したことはないので、妊娠中で大変とは思いますが、なるべく素早く行動し、万全の態勢で出産に臨めるよう頑張ってください。

退職後の社会保険や税金の計算について、詳しくは以下の記事も参考にしてください↓

最後までご覧いただきありがとうございました。

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