失業保険の受給期間延長制度は、特定の事情で仕事を探すのが難しい方を対象に、失業保険の有効期限を延ばすための制度です。この制度を利用することで、自身の体調・状況に合わせた再就職活動を安心して続けられるようになります。制度を利用することで、以下のメリット・デメリットがあります。
受給期間延長制度の対象になるには、働けない事情があることが必要であり、具体的には以下の理由が対象になります。
- 妊娠・出産・育児
- 病気やけが
- 親族の介護
- 配偶者の海外勤務への同行
- 海外青年協力隊などの公的機関が行う海外技術指導への参加
- 60歳以上の定年退職後の休養(1年間だけ)
- 事業を開始した
この記事では、失業保険の受給期間延長制度について、以下の3点から解説します。
- 失業保険の受給期間延長制度とは
- 失業保険の受給期間延長制度の対象者・申請方法について
- 受給期間延長制度の利用にあたっての注意点
ぜひ最後までご覧ください。
失業保険の給付日数の延長制度については、以下の記事を参考にしてください↓
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険の受給期間延長制度とは
雇用保険に加入していた方が会社を退職し、失業状態にあるとき、失業保険が受給出来ますが、失業保険には有効期限があり、有効期限を過ぎると受給が出来なくなります。
失業保険を受給するための有効期限は、退職日の翌日から1年間です。この有効期限を延長する制度を受給期間延長制度と言い、元の有効期限を最大3年間延長することが出来ます。
もらえる金額が多くなるわけではなく、有効期限を後ろにずらす手続きです。
失業保険を受給するためには、失業状態である必要があります。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
ケガや病気、妊娠、出産、介護など、すぐに働けない事情がある方は、失業状態ではないとみなされ、失業保険が受給できません。つまり、退職から1年間働けない事情がある方は、失業保険の申請が出来ないまま有効期限が切れてしまい、雇用保険に加入していたのに、失業保険を1円も受給せず権利が消滅してしまう可能性があります。
このような事態を防ぐことを目的として、受給期間延長制度が存在します。働けない期間の有効期限を、働けるようになるまで後ろにずらして保管しておく制度です。
参考 東京労働局 東京ハローワーク 求職者給付に関するQ&A https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/koyouhoken/koyouhoken/QA/kyuusyokusyakyuufu_QA.html
この制度を利用することで、働けない事情が落ち着き、働ける状態になったタイミングで、余裕をもって仕事探し・失業保険の受給手続きをすることが出来ます。
ケガ、病気、育児、介護がある状態での仕事探しは、気力・体力をかなり消耗します。
焦って自身に合わない仕事に就いてしまう危険性もありますので、受給期間延長制度をうまく利用し、落ち着いて仕事探しが出来るようにしておきましょう。
受給期間延長制度を利用するメリット
受給期間延長制度を利用するメリットとして、以下の2つが挙げられます。
自身の体調・状況に合わせて失業保険を受給できる
受給期間延長制度を利用することで、自身の体調・状況に合わせて適切なタイミングで失業保険を受給することが出来ます。失業保険に有効期限があることで、無理に仕事探しを進めてしまうことがあります。充分に働ける状態ではないまま仕事が見つかってしまい、結局長く続けられず、早期の離職につながってしまうことも。
受給期間延長制度を利用できると、健康上の理由などで働きずらい状態の期間は失業保険を受給する必要がないので、体調の回復や家族の介護などに専念できます。働ける状態を整えてから就職することが出来るため、すぐに働き始めるよりも、結果的に長期的な雇用につながることがあります。
仕事探しの質を高めることが出来る
受給期間延長制度を利用することで、急いで再就職先を探す必要がなくなり、仕事探しの質を高めることが出来ます。納得のいく転職を進めるためには、充分な体力・気力が必要になります。
自己分析やキャリアの棚卸し、履歴書・職務経歴書の作成や面接を受けたりなど、選考活動は頭も体も使います。また、希望の会社に1社目で内定をもらうことはほとんどありませんので、何社かは不採用になりますが、実際に不採用を受けるとかなり気分が落ち込みます。落ち込んだ状態から次の会社を受けるためには、充分な気力が必要になります。
ケガ・病気・妊娠・出産中など、受給期間延長制度の対象になる方は、ただでさえ気力・体力がすり減っている状態です。この状態で就職活動を行うと、途中から「採用されればどこでもいいか…」という心理状態になり、希望の就職先への就職が難しくなります。
受給期間延長制度を利用することで、延長中は体力・気力の回復に努め、落ち着いた仕事探しを行うことが可能になります。結果として、仕事探しの質が高まり、希望の就職先へ再就職出来る可能性が高くなります。
受給期間延長制度を利用するデメリット
受給期間延長制度を利用するデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
失業保険の受給開始時期が遅れる
受給期間延長制度は失業保険の受給を後ろにずらす制度のため、利用すると受給開始時期が遅れます。受給期間延長中は、アルバイトなどの短時間で働くことも難しいため、ある程度貯金がないと生活に困ってしまうデメリットがあります。
貯金が無く、受給期間延長制度を利用すると当面の生活費に困ってしまう方は、他の給付金制度の受給も検討しましょう。受給期間延長制度と併用して利用される給付金には、以下が該当します。
- 健康保険の傷病手当
- 各地方自治体の生活保護
自身が受給の対象になるのかは、それぞれの窓口で確認しましょう。健康保険の傷病手当であれば加入していた健康保険組合、生活保護であればお住いの市役所・区役所の福祉担当部門になります。
書類をそろえて申請する手間がかかる
受給期間延長制度を利用するためには、申請書類を準備する必要があります。書類の中には、医師の診断書など発行に手数料のかかるものや、配偶者の会社へ発行の依頼が必要なものもあります。準備に手間がかかるデメリットがあるので、受けられるメリットと天秤にかけたうえで制度を利用するか決めましょう。
受給期間延長制度の対象者
受給期間延長制度は、利用できる対象者が決まっています。以下のいずれかの理由により、引き続き30日以上仕事が出来ない状態にある方です。
- 妊娠・出産・育児
妊娠中や出産後、3歳未満の子どもの育児のために働けない場合が対象となります。 - 病気やけが
健康保険の傷病手当や労災保険の休業補償を受給中の場合も含まれます。 - 親族の介護
6親等内の血族、配偶者、3親等以内の姻族の介護のために働けない場合が対象です。 - 配偶者の海外勤務への同行
事業主の命令で海外勤務する配偶者に同行する場合。 - 海外青年協力隊などの公的機関が行う海外技術指導への参加
青年海外協力隊など公的機関が行う海外技術指導で派遣される場合。 - 60歳以上の定年退職後の休養(1年間だけ)
60歳以上で定年退職した後、しばらく休養する場合。 - 事業を開始した
個人・法人のいずれかで事業を開始した場合
参考 厚生労働省 「雇用保険受給期間の特例を申請出来ます https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000952085.pdf
参考 雇用保険業務取扱要領50271(1)
上記の理由以外では、被災地へのボランティアや小学校就学前の子の看護なども延長理由に該当します。
自身が延長の対象になるか、不安な方は管轄ハローワークの窓口で確認してみましょう。
受給期間延長制度の申請方法
雇用保険の受給期間延長手続きは、必要書類をハローワークに提出して行います。受給期間延長制度の申請の流れは以下のとおり。
受給期間延長制度が利用できるか確認する
まずは、ハローワーク窓口で、自身が働けない状態であることを伝え、受給期間延長制度の対象になるか事前に確認しましょう。事前確認が無ければ手続きが出来ないわけではありませんが、手続きに必要な書類には発行にお金がかかるものもあります。
二度手間三度手間になる可能性もありますので、万全を期すためにも、自身が受給期間延長制度の対象になるか、事前に確認しておきましょう。
手続きに必要な書類をそろえる
受給期間延長手続きに必要な書類をそろえます。必要書類は、ハローワークでもらえるものや、医療機関の証明が必要になるものなどがあります。発行に時間がかかるものもありますので、早めに準備しておきましょう。受給期間延長手続きに必要な書類は以下のとおり。
- 受給期間延長申請書
- 離職票2
- (失業保険申請手続き後の場合)雇用保険受給資格者証
- 延長理由を証明する書類(診断書、介護証明書など)
- (代理人が行う場合)委任状
参考 雇用保険業務取扱要領50273(3)
受給期間延長申請書
受給期間延長申請書は、ハローワーク窓口でもらえます。書き方の見本も一緒にもらえることが多いので、見本を参考に記入していきましょう。他の必要書類を持参して、申請時に窓口で職員と一緒に記入する方法もあります。
すぐもらえて、かつ記入するだけなので、この申請書の準備は一番最後で大丈夫です。
離職票2
離職票2は、退職した会社に発行してもらいます。直近で退職した会社に発行を依頼しましょう。離職票は、退職者からの依頼があって作成されます。依頼しなければ発行されない場合もありますので、スムーズに手続きを行うために、なるべく退職前に依頼しておきましょう。
受給期間延長手続きで使用するのは離職票2のみです。離職票1は失業保険の受給申請時まで使用しませんので、大切に保管しておきましょう。離職票2の準備について、以下の3点補足があります。
- 離職票を発行できるのは雇用保険に加入していた会社だけ
- 紛失した場合は最寄りのハローワークで再発行依頼をする
- 在籍期間によっては2社以上必要な場合がある
離職票を発行できるのは雇用保険に加入していた会社だけ
離職票を発行できるのは、雇用保険に加入していた会社だけです。雇用保険に加入しない条件で働いていた会社では、離職票が発行できません。
なお、雇用保険に加入する条件は、週20時間以上かつ31日以上雇用継続見込みがある雇用契約です。つまり、週20時間未満のパート・アルバイトや、31日間未満の短期のアルバイトで働いていた会社では、雇用保険の加入対象にならず、離職票も発行できませんのでご注意ください。
雇用保険の加入対象・条件についての詳細は、以下の記事を参考にしてください↓
離職票を紛失した場合は最寄りのハローワークで再発行依頼する
会社からもらった離職票2を紛失してしまった場合は、自宅最寄りのハローワークで再発行依頼を行いましょう。自宅最寄りのハローワークが退職した会社の管轄ハローワークであれば、即日再発行が可能です。
会社管轄ハローワークが別の場合は、後日郵送で自宅に届きます。(会社が電子で申請していれば即日)郵送で届く場合は、最低1~2週間は必要になりますので早めに依頼しましょう。
離職票の再発行はハローワークで手続き可能ですが、そもそも発行がされていない場合は退職者本人から会社へ依頼する必要があります。退職後、一度も離職票をもらっていない場合は、必ず先に会社に発行を依頼しましょう。
在籍期間によっては2社以上必要な場合がある
直近の会社を1年未満で退職している場合は、2社以上の離職票が必要になる可能性があります。受給期間延長手続きは、失業保険の受給資格がある方でなければ出来ず、失業保険は、1年以上の雇用保険加入期間がなければ対象になりません。※ 厳密には、直近の退職日から2年間のうち、11日以上の出勤がある月が満12月以上必要(会社都合・やむを得ない理由での自己都合退職の場合を除く)
そもそも失業保険の受給資格が無い方は、受給期間延長手続きする意味がありませんので、受給期間延長申請時には、受給資格があるかを確認されます。直近の会社の在籍期間が1年未満であった場合は、その前の会社の離職票も必要になることがあります。直近の会社を1年未満で退職している場合は、その前の会社の離職票も合わせて準備しておきましょう。
参考 雇用保険業務取扱要領50274(4)
(失業保険申請手続き後の場合)雇用保険受給資格者証
失業保険の受給申請手続き後に受給期間延長手続きを行う場合は、離職票2の代わりに雇用保険受給資格者証を提出します。失業保険の受給申請をしていない方は、この雇用保険受給資格者証を持っていませんので提出は不要です。
受給期間延長制度は、失業保険申請後に働けなくなった場合でも利用できます。その場合は、離職票2に代えて雇用保険受給資格者証を提出しましょう。
失業保険の申請をした後に妊娠が発覚した場合や、ケガ・病気になってしまった場合などが当てはまります。
延長理由を証明する書類(診断書、介護証明書など)
延長理由を証明する書類は、延長理由によって変わります。ハローワークごとによって延長理由の証明書類が微妙に違うことがあるので、事前にお住いの管轄ハローワークで認められる書類を確認しておきましょう。以下で、延長理由ごとの証明書類の具体例をまとめておきますので、参考にしてください。
- 病気・ケガ
⇒ 医師の診断書・傷病手当申請書など - 妊娠・出産・育児
⇒ 母子手帳 - 親族の介護
⇒ 戸籍謄本(続柄の確認) + 要介護認定を受けた証明・医師の診断書など - 配偶者の海外勤務に同行
⇒ 海外転勤辞令 + 戸籍謄本or世帯の住民票(配偶者の確認) + 出国日のわかるもの(パスポート・航空券など) - 海外青年協力隊などの公的機関が行う海外技術指導への参加
⇒ 派遣証明書など派遣者・派遣依頼(命令)機関名がわかるもの + 出国日のわかるもの(パスポート・航空券など) - 60歳以上の定年退職後の休養(1年間だけ)
⇒ 無し(離職票だけで確認可能なため) - 事業を開始した
⇒ 開業届の写し・法人登記の写しなど
これらの書類の準備が難しい場合、他の書類で代替できることもあります。
自身の事情も合わせて、一度管轄ハローワークで相談してみましょう。
(代理人が行う場合)委任状
受給期間延長申請を代理人が行う場合は、追加で委任状が必要になります。受給期間延長申請専用の委任状はありませんので、自身で作成し、他の必要書類に添付しましょう。
「委任状 ひな形」で検索すれば、それらしい様式がいくつか出てきます。委任状には、どんな手続きを委任するのか、代理人に委任する権限は何か、を記載する欄があります。この欄には雇用保険の失業等給付に関する受給期間延長の申請と記載しておきましょう。
記載事項が多く、間違っていた場合に窓口での訂正が難しいため、緊急時以外の代理申請はオススメしません。窓口への来所が難しい場合は、郵送での申請を利用しましょう。
働けない状態になって30日以上経過後にハローワークで申請する
働けない状態になり、30日以上経過後にハローワークで申請手続きを行います。申請方法は、直接窓口・郵送・代理人のいずれかです。申請手続きが完了すると、以下の書類が返却・発行されます。
- 受給期間延長制度の案内
- 受給期間延長等通知書
- 離職票2
- (失業保険申請手続き後の場合)雇用保険受給資格者証
- (ケガ・病気の場合)医師の証明をもらう用紙
これらの書類は、受給期間延長していた理由が終了し、働ける状態になった後に失業保険を申請する際に必要になります。無くさないように大切に保管しておきましょう。
実際に申請を行う時期・タイミング
前出のとおり、受給期間延長制度の申請は、原則、働けない状態になってから30日以上経過後に行います。
ただし、医師が退職日以降30日以上の就労不可をすでに診断している場合や、妊娠・出産・育児などで30日以上働けないことが明確な場合は、30日を経過する前に申請することも出来ます。
参考 雇用保険業務取扱要領50273(3)イ
30日経過前に申請した場合は、30日を経過するまでハローワークが書類を預かり、30日以上経過後に前出の受給期間延長等通知書など延長申請後の書類が返却・発行されます。その後の手続きについては、30日以上経過後に申請した場合と同じです。
30日経過前に申請することにメリットはありません。
長期間動けなくなる場合以外は、なるべく30日以上経過後に申請しましょう。
申請は直接窓口・郵送・代理人のいずれかで行う
受給期間延長制度の申請は、直接窓口・郵送・代理人のいずれかで行います。
直接窓口での申請は、自身でハローワークへ行き前出の必要書類を提出します。不備が無ければその場で書類を返却してもらえ、気になる点や疑問点は直接質問出来るメリットがあります。自宅からハローワークが近い方や、制度について聞きたいことがある方、処理後の書類がすぐに欲しい方などは直接窓口で申請しましょう。
郵送での申請は、必要書類を郵送で提出し、ハローワークの処理終了後、郵送で書類が返却されます。ハローワークに行く手間が省略でき、身体的な負担が少なく申請出来るメリットがあります。ケガや病気で動けない方や、育児で来書する時間が無い方、管轄のハローワークが遠い方などは郵送で申請しましょう。
代理人での申請は、代理人がハローワークに行き、必要書類の提出を行う方法です。ハローワークへ行かずに申請が可能で、郵送よりも早く処理が完了するメリットがあります。直接ハローワークへ行けない事情があるが、処理を早く済ませる必要ある方などは代理人での申請をしましょう。
ハローワークへ行く手間・処理の速さ・質問のしやすさでまとめると、以下のとおりになります。
ハローワークへ行く手間 | 処理の速さ | 質問のしやすさ | |
直接窓口 | × | 〇 | 〇 |
郵送 | 〇 | × | × |
代理人 | △ | 〇 | × |
それぞれ一長一短があります。
自身の状況に合わせて、申請方法を選択しましょう。
働ける状態になれば書類をそろえて失業保険受給手続きをする
受給期間延長の申請手続き後、働けない事情がやんで働ける状態になれば、失業保険を受給することが出来るようになります。必要書類を持ってハローワークへ行き、働ける状態になったこと・仕事探しを始めることを窓口で伝え、失業保険受給の手続きを開始しましょう。
その後の手続きの流れは、通常の失業保険受給手続きと同じです。毎回の認定日ごとに失業状態を確認し、確認出来た期間分の失業保険が分割で支払われていきます。
以後、特別な手続きは必要ありません。
毎回の認定日に、失業状態であれば失業状態の申告を行い、就職が決まれば就職申告の手続きを行いましょう。
受給期間延長後、失業保険受給申請に必要な書類は以下のとおり。
- 離職票-1
- 離職票-2
- 受給期間延長等通知書
- 働ける状態であることの確認書類
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 振込先希望の銀行口座の通帳orキャッシュカード
- 顔写真2枚(今後毎回マイナンバーカード提示で省略可能)
失業保険を受給するためには手続き時点で失業状態である必要があり、働ける状態ではない方は失業状態とはみなされません。通常の失業保険受給申請では、働ける状態であるかの確認は申請者本人の主観的な自己申告のみで行いますが、受給期間延長後の失業保険受給手続きでは、働ける状態であることの客観的な確認が必要になります。
働ける状態であることの確認書類の提出が無いと、失業保険の申請手続きは出来ませんのでご注意ください。(定年退職の場合を除く)
働ける状態であることの確認書類は、受給期間延長の理由によって変わります。妊娠・出産・育児での延長であれば母子手帳、ケガ・病気での延長であれば医師の診断書、配偶者の海外勤務への同行であれば帰国日の確認が出来るもの、などが確認書類になります。なお、定年を理由とした延長であれば、確認書類は必要ありません。
取得に時間がかかるものもあります。
早めに準備を進めておきましょう。
受給期間延長制度利用にあたっての注意点
受給期間延長の申請について、以下3つの注意点があります。
- 延長できるのは元々の受給期間内に働けない理由がある場合だけ
- 働けない事情がなくなった後は速やかに手続きが必要
- 受給期間延長中に仕事が決まると失業保険対象外
延長できるのは元々の受給期間内に働けない理由がある場合だけ
受給期間延長が出来るのは、元々の受給期間内に働けない理由がある場合だけです。元の受給期間内に働けない理由が無ければ、受給期間延長申請は出来ません。
退職後、失業保険の申請をしないまま1年間放置し、その後に働けない理由が出来た場合や、受給期間延長申請後に働ける状態になったため失業保険の受給手続きを行い、その後に働けない理由が出来た場合は、受給期間延長申請が行えません。
いつでも何度でも利用できる制度ではありませんので、申請の時期・利用のタイミングには十分注意しましょう。
働けない事情がなくなった後は速やかに手続きが必要
受給期間延長申請後、働けない事情が無くなり、働ける状態になった後は速やかな手続きが必要です。働ける状態になった後は、失業保険の受給申請をしていなくても有効期限は進行していきます。失業保険の速やかな手続きが無ければ、延長した有効期限が無駄になってしまう可能性があるのでご注意ください。
働けない状態がやめば、速やかに失業保険の手続きを進めていきましょう。
働ける状態であることの証明書類の提出は、失業保険の受給申請後でもOKです。
受給期間延長中に仕事が決まると失業保険対象外
受給期間延長中に次の仕事が決まると、失業保険の対象外になります。前出のとおり、失業保険は失業状態である場合に受給の対象になります。次の仕事が見つかっている場合は、失業状態ではないとされ、失業保険の受給申請が出来ません。
また、早期に就職が見つかった場合は、再就職手当の対象になる可能性がありますが、再就職手当の対象になるのは、失業保険の受給申請をした後に就職先が見つかった場合です。失業保険の申請前に仕事が見つかった場合は、雇用保険の失業等給付からは何も給付されなくなりますので、雇用保険の給付制度の利用を考えている方はご注意ください。
出産後の育児中や、病気療養中に次の仕事を見つけ、失業等給付が受給出来ない方も一定数いらっしゃいます。
就職を優先するのか、給付を受けながら仕事を探すのか、自身の希望をしっかりと考えましょう。
受給期間延長制度のよくある質問
失業保険の受給期間延長制度について、よくある質問と回答を以下で記載します。よくある質問は以下の3つ。
- 受給期間延長中にアルバイトは出来る?
- 受給期間延長制度を利用して延長される「受給期間」とは何ですか?
- (ケガ・病気が理由の場合)病院に行っていないが受給期間延長制度は利用できる?
受給期間延長中にアルバイトをすると延長出来なくなる可能性がある
受給期間延長中に働くと、働いた日以降の受給期間が延長出来なくなる可能性があります。受給期間延長制度は、働けない状態が30日以上継続した場合に対象になる制度です。延長期間中にアルバイトを行うと、働いた日以降は働ける状態であるとみなされる可能性があります。
ただし、働く日数が2~3日程度のみである場合など「働く日数が少ない&単発の契約」であれば、事前にハローワークに申し出ることで受給期間延長を継続できることもあります。
実際に働く内容や状況、管轄ハローワークによって微妙に判断が分かれます。
もし受給期間延長中に働いてしまった・働かなければいけなくなった場合は、必ず管轄ハローワークに相談しましょう。
延長される「受給期間」とは「失業保険の有効期限」である
受給期間延長制度を利用して延長される「受給期間」とは、「失業保険の有効期限」です。受給期間延長制度を利用しても、受け取ることの出来る失業保険金額が増えるわけではありません。
受給期間延長制度を利用しても、もらえる金額の上限は変わりませんのでご注意ください。
病院に行かないと受給期間延長制度の利用は難しい(ケガ・病気が延長理由の場合)
病院に行かなければ、ケガ・病気を理由とした受給期間延長制度の利用は難しくなります。ケガ・病気を働けない理由として受給期間延長制度を利用するためには、必ず、働けない状態であることの証明が必要になります。
医師以外が働けないことの証明を行うのは不可能に近いため、病院を利用していなければ、ケガ・病気を理由とした受給期間延長制度の対象になるのは難しくなります。
ケガ・病気を延長理由とする場合は、病院に行き医師の診断を受けましょう。
まとめ(締め)
以上、失業保険の受給期間延長制度について、以下の3点から解説しました。
- 失業保険の受給期間延長制度とは
- 失業保険の受給期間延長制度の対象者・申請方法について
- 受給期間延長制度の利用にあたっての注意点
まとめると以下のとおり。
雇用保険に加入していた方が失業状態にあるとき失業保険が受給出来ますが、失業保険には有効期限があり有効期限を過ぎると受給が出来なくなります。有効期限は退職日の翌日から1年間で、この有効期限を延長する制度を受給期間延長制度と言い、元の有効期限を最大3年間延長することが出来ます。
受給期間延長制度を利用することで、以下のメリット・デメリットがあります。
受給期間延長制度対象になるためには、以下のいずれかの理由で30日以上働けない状態である必要があります。
- 妊娠・出産・育児
- 病気やけが
- 親族の介護
- 配偶者の海外勤務への同行
- 海外青年協力隊などの公的機関が行う海外技術指導への参加
- 60歳以上の定年退職後の休養(1年間だけ)
- 事業を開始した
上記の状態であれば勝手に対象になるわけではなく、受給期間延長制度を利用するためには、必要書類を準備し、ハローワークへの申請が必要になります。申請の流れ、必要書類は以下のとおり。
- 受給期間延長申請書
- 離職票2
- (失業保険申請手続き後の場合)雇用保険受給資格者証
- 延長理由を証明する書類(診断書、介護証明書など)
- (代理人が行う場合)委任状
受給期間延長制度の利用に当たっては、以下の3点に注意が必要です。
- 延長できるのは元々の受給期間内に働けない理由がある場合だけ
- 働けない事情がなくなった後は速やかに手続きが必要
- 受給期間延長中に仕事が決まると失業保険対象外
ケガ・病気・妊娠・出産・育児など、受給期間延長理由にある状態での仕事探しは、想像をはるかに超える過酷さがあります。受給期間延長制度を上手に利用し、気力・体力をしっかりたくわえて、希望の就職先へ転職できるようがんばりましょう。
実りある転職になるよう祈っております。最後までお読みいただきありがとうございました。
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