失業保険はもらえる日数の上限が決まっており、上限分をもらい終われば支給終了になります。この記事にたどり着いた方は、支給終了が間近にせまった方が多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、給付日数が延長される制度はありますが、対象になることはほぼありません。失業保険の給付日数延長制度は以下の5つです。
この5つのうち、訓練延長給付以外はほぼ対象になることがありません。訓練延長給付以外のいずれの制度も、雇用情勢が悪化した場合(不景気や不況が来た場合)や激甚災害(大地震や大洪水など)が起こった場合に、地域や時期を限定して実施される制度で、対象になる条件が多く、その条件も自身で調整出来るものではありません。
対象になるまでのハードルが高く、支給終了間近になるまで対象になるか分かりません。
初めから対象にならないと考えて動くことをオススメします。
ただし、給付日数延長制度以外にも給付日数が増える可能性があり、それが以下のケースに当てはまる場合です。
- 就職困難者として認定される
- 特定受給資格者として認定される
就職困難者として認定されるのは、身体・知的・精神いずれかの障害をお持ちの方や、保護観察処分中の方などです。特定受給資格者として認定されるのは、解雇や退職勧奨、倒産や事業所の廃止などいわゆる会社都合で退職された方です。
ただし、この場合も対象になる方は失業保険の申請時点ですでに対象になっていることが多く、後から急に対象になる可能性は低いです。
この記事では、失業保険の給付される日数・延長給付制度について、以下の3点から解説します。
- 失業保険の給付日数の上限(所定給付日数)とは
- 失業保険の各種延長給付制度について
- 延長給付制度以外の給付日数が延びる方法
ぜひ最後までご覧ください。
ハローワークを利用しての仕事探しの方法や、ハローワークの求人については、以下の記事を参考にしてください↓
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険の給付日数の上限(所定給付日数)について
失業保険の給付される日数には上限があり、その日数を所定給付日数と言います。所定給付日数は、雇用保険加入期間・離職理由・離職時の年齢によって決まります。日数は90~360日分と幅があり、仕事探し期間を保障する給付制度のため、転職期間が長くなる恐れのある方の給付日数が長くなります。
参考 雇用保険業務取扱要領 50301(1)
自己都合退職・定年退職の方など
雇用保険加入期間 | 10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
特定受給資格者・特定理由離職者など(会社都合退職・やむを得ない理由での自己都合退職など)
雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1~5年未満 | 5~10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30~35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35~45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45~60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
転職のハードルが高くなる高年齢層、転職の準備期間が取れなかった会社都合での退職者など、失業状態の長期化の恐れがある方の保護が手厚くなっています。
失業保険は、4週に1度の失業認定日に失業状態を確認し、確認できた期間分が分割で支払われていきます。支払われた日数分は所定給付日数から差し引かれていき、所定給付日数分を全てもらい終われば失業保険の受給終了になります。
失業保険に有効期限があり、その期限を過ぎてしまうと、所定給付日数が残っていても失業保険を受け取れなくなってしまいます。有効期限を延ばす制度を受給期間延長制度と言い、詳細については以下の記事を参考にしてください↓
給付日数の延長制度について
通常、所定給付日数分を全てもらえば支給終了になりますが、特定の条件を満たす求職者の方は、給付日数の延長制度の対象になり、延長された日数分を追加で受けることが出来ます。
ただし、給付日数の延長制度は、恒常的な制度ではありません。突発的に失業者が大量に発生するなど、所定給付日数だけでは保護が十分ではない場合に、地域・期間・対象者などを限定して実施されます。
直近では、コロナウイルス流行時に個別延長給付が実施されました。
給付日数延長制度には、以下の5つがあります。
参考 雇用保険業務取扱要領 52301-52700
その時の雇用情勢や、住んでいる地域によって対象になるかが決まるので、自身で調整して対象になれるものではありません。初めから対象にならないと考えて、積極的に求職活動を進めていくことをオススメします。なお、訓練延長給付だけは、他の延長制度と違って対象になる方が多いです。
延長制度の対象になるのは、かなりレアケースです。
基本は対象にならないと考えていただいてOKです。
訓練延長給付
給付日数延長制度の中で、一番対象者が多い制度です。ハローワークの受講指示で公共職業訓練・求職者支援訓練を受講する方が対象になり、公共職業訓練を受講している間は給付を受け続けることが出来ます。
また、公共職業訓練の受講修了後も、一定の条件を満たす方は追加で給付日数が延長されます。この受講終了後に延長される給付を、終了後手当と言います。
参考 雇用保険法第24条 雇用保険業務取扱要領52351-52370
訓練延長給付の対象者
訓練延長給付の対象になる条件は、以下の3つ。
- 受講開始日時点で所定給付日数が残っている
- ハローワークから受講指示を受ける
- 訓練期間が2年以内である
ハローワークから受講指示を受け、職業訓練の開講日時点で給付日数が残っていればOKです。
ただし、受講指示を受けるためには、所定給付日数が一定以上残っている必要があります。
詳細は管轄のハローワークで確認しましょう。
終了後手当の対象になる条件は別にあり、それが以下の6つ。
- 訓練終了時点の残日数が30日以下(延長している場合でもOK)
- 訓練終了日時点で採用内定が無い
- 失業認定の不認定処分を受けていない
- 訓練修了前4週間の期間中に希望職種の求人に複数回応募している
- ハローワークからの職業紹介を拒否していない
- 希望職種の有効求人倍率が1倍以下
「訓練の受講が修了し、希望職種が人気なため、熱心に応募しているが就職先が見つからない場合」が対象になります。なお、ここで言う希望職種とは、受講した訓練に関係のある職種です。
有効求人倍率が1倍以下というのは、「募集している求人数」よりも「希望している求職者数」の方が多い状態です。働きたい求職者の方が多い=人気の職種 ということです。
事務系の職種は有効求人倍率が1倍を切っていることが多いので、事務系の訓練を受講する場合は終了後手当の対象になりやすくなります。
延長される期間・日数
所定給付日数分の支給終了後、訓練が終了するまでの期間が延長されます。具体的な日数は定まっておらず、訓練の終了日=延長の終了日になります。訓練延長を受けていた方が終了後手当の対象にならない場合は、訓練終了とともに支給終了になります。
訓練終了前に中途で退校すると、その退校日まで延長されます。
終了後手当は、最大30日分が延長されます。終了後手当で延長される日数の計算式は以下のとおり。
訓練終了時点で残りの日数が30日以下の場合、訓練終了の翌日から30日間は給付が受けられますよ。という制度です。
対象になるまでの流れ
訓練延長給付は、前出の条件を満たしている方は自動で延長の対象になります。所定給付日数分の支給が終了した後に、自動で給付日数が延長され、対象になるための追加申請の必要はありません。
終了後合手当は、訓練受講修了日にハローワーク窓口で審査があります。条件を満たしているかの確認があり、問題なければ延長の決定がされます。手続きの流れはハローワークごとに多少の違いがありますが、大まかには以下のとおり。
- 職業訓練の窓口で仕事探しに関しての条件を満たしているか確認
- 希望職種の求人に複数回応募しているか
- 希望職種の有効求人倍率が1倍を切っているか
- ハローワークの職業紹介を拒否して処分を受けていないか
- 失業保険の窓口で失業保険に関しての条件を満たしているか確認
- 給付日数の残りは30日を切っているか
- 訓練終了日時点で内定をもらっていないか
- 失業認定の不認定処分(当日不来所や活動実績不足)を受けていないか
- 問題無ければ延長決定され次回認定日の案内を受ける
対象になる可能性のある方は、ハローワークから案内があります。
しっかりと説明を聞いておきましょう。
個別延長給付
障害者手帳の取得には至らない難治性疾患をお持ちの方や、発達障害をお持ちの方などが対象になります。他にも、激甚災害・世界的なパンデミック・大規模不況など、外的な要因で対象になることもあります。近年では、コロナウイルス流行やリーマンショックによる、経済不況時に退職した方が対象になりました。
時期や地域を区切りやすく、緊急時に実施されることが多い制度です。
個別延長給付の対象者
個別延長給付の対象者は、特定受給資格者・特定理由離職者のいずれかであり、かつ、以下のいずれかを満たす方になります。
- 難治性疾患を有する
- 発達障害者
- 激甚災害の被害が原因で離職した
- 災害救助法による救助が行われた災害が原因で離職した
なお、障害者手帳をお持ちの方で、就職困難者に該当している場合は個別延長給付の対象者になりません(激甚災害に被災した場合を除く)。就職困難者として認定を受けると、通常の給付日数より手厚い保障が受けられるためです。
個別延長給付の対象者になるには、上記に当てはまることに加えて、以下の条件に全て当てはまる必要があります。
- 規定の回数以上求人に応募している
- 毎回の認定日にハローワークに行き認定を受けている
- 毎回の認定日に規定の回数以上求職活動をして認定を受けている
- 職業紹介拒否が理由の給付制限を受けていない
認定日に行かない、求職活動を規定回数以上行わない、職業紹介拒否を行うなど、ハローワークからの職業指導が不要であるとみなされた場合は対象になりません。
ただし、災害が理由で個別延長給付の対象になる方は、求人への規定回数以上の応募が無くてもOKです。被災地域では求人活動をしている企業が少なくなり、応募が難しくなるためです。
延長される期間・日数
激甚災害が理由で対象になる方は120日、それ以外の方は60日が延長される日数になります。ただし、所定給付日数が270日・330日の方の場合は、激甚災害が理由で対象になる場合は90日、それ以外の方は30日が延長される日数になります。
初めから給付日数が多い(270日・330日)方は、延長日数が少なくなります。
対象になるまでの流れ
対象になる可能性のある方は、ハローワークから案内があります。規定回数以上の求人への応募回数が必要になるため、積極的に求人へ応募していきましょう。
認定日にハローワークに行かない、規定回数以上の求職活動をしない、など、失業の不認定を受けてしまうと延長給付の対象外になります。失業認定はしっかりと受けましょう。
広域延長給付
特定の地域に離職者が大量に発生した場合に、その地域に居住していた離職者が対象になります。地域を超えた求職活動を支援するための延長給付制度で、広域な求職活動の支援期間が給付日数の延長期間になります。
炭鉱夫の方など、特定地域に同じ職種の方が大勢いる場合を想定した制度のため、昨今の雇用状況では対象になる可能性はほぼありません。広域延長給付が実施される基準は、以下の1の数字が2の数字の2倍以上になる場合です。
- 特定地域の直近4ヶ月間の初回受給者(離職者)÷同地域の直近4ヶ月間の雇用保険被保険者(働いている人)
- 全国の直近5年間の初回受給者(離職者)÷全国の直近5年間の雇用保険被保険者(働いている人)
まとめると、過去5年間の全国平均の2倍以上の離職率がある地域から、他の地域へ就職したい方に対して実施されます。
広域延長給付の対象者
離職者が大量に発生した地域に居住している方が対象になります。なお、広域な求職活動を行うことを前提としており、就職後は他の地域に居住することが想定されるため、以下の理由などで転居が不可能な場合は対象になりません。
- 同伴すべき家族が事業をしている
- 元の居住地域で家屋・土地の管理をしないといけない
- 同伴すべき家族が重病で引っ越し出来ない
延長される期間・日数
広域延長給付の延長期間は、上記の「地域の離職率が全国平均の2倍以上」の基準を満たす期間中に、広域な求職活動の支援を受けている期間です。この基準を満たしている間は延長され続けますが、上限は90日間です。
地域の雇用情勢が回復するまで延長されますが、90日を超えて延長されることはありません。
対象になるまでの流れ
対象者にはハローワークから案内があります。実施されれば特定地域の離職者全員が対象になる可能性があるため、案内は大々的に行われます。念のため、管轄ハローワークのHPを確認すると漏れがなく安心です。
ただし、対象になるかは上記の「地域の離職率が全国平均の2倍以上」の基準を満たしているかが全てです。個人の事情では延長されませんので、案内があるまでは無い制度として活動することをオススメします。
もしハローワークから案内があれば、しっかりと説明を聞いておきましょう。
全国延長給付
全国的に失業の状況が著しく悪化した場合に、全国の受給者全員が対象になる制度で、未曽有の経済危機・不況時に対象になります。離職者全員が対象になるため、実施までのハードルがかなり高い制度です。リーマンショック時やコロナウイルス流行時にも実施されることがなかったため、現状、対象になる可能性はほぼありません。
※ なお、調べた限りでは、令和6年11月時点までに全国延長制度が実施されたことはありません。
全国延長給付の対象者
雇用情勢が一定の事態に達したときに、離職理由に関わりなく全ての受給資格者が対象になります。全国延長給付が実施されるのは、直近の連続4ヶ月間で以下のすべてに当てはまるときです。
- 失業保険をもらっている人÷(失業保険をもらっている人+雇用保険の被保険者)の割合が4%以上
- 失業保険の初回受給者(直近で退職した人)÷雇用保険の被保険者(働いている人)の率が下がる傾向にない
延長される期間・日数
延長される期間は、上記の基準を満たしている期間です(上限90日)。上記の基準を満たさなくなれば、その月の末日で延長給付が終了します。
90日分の延長を受け終わる・上記基準を満たさなくなる・就職するのいずれかで、延長給付が終了します。
対象になるまでの流れ
対象になる方は、ハローワークから案内があります。実施される場合は全国的に行われるので、テレビやネットなどでも情報が出ます。大規模な経済不況が到来した場合は、チェックしてみましょう。
地域延長給付
雇用機会が不足している地域に住んでいる方が、特定受給資格者・特定理由離職者に該当する場合に対象になります。「雇用機会が不足している地域」は四半期ごとに厚生労働省によって確認され、告示によって定められています。
自身の地域が対象になっているかは、管轄ハローワークの窓口で確認しましょう。
広域延長給付と似た制度になりますが、以下の点で違いがあります。
- 会社都合退職者・やむを得ない理由での自己都合退職者に限られている
- 他の地域への就職を希望している場合は対象外になる
なお、他の延長給付の制度と違い、地域延長給付だけは暫定措置の制度です。現状の有効期限は令和9年3月31日までになっています。(令和6年11月時点)
地域延長給付の対象者
地域延長給付の対象者は、以下の条件を全て満たしている方です。
- 「特定受給資格者」または「特定理由離職者」
- 指定地域に住んでいる
- 規定の回数以上求人に応募している
- 毎回の認定日にハローワークに行き認定を受けている
- 毎回の認定日に規定の回数以上求職活動をして認定を受けている
- 職業紹介拒否が理由の給付制限を受けていない
特定受給資格者・特定理由離職者とは、いわゆる「会社都合退職」や「正当な理由のある自己都合退職」、「やむを得ない理由での自己都合退職」などです。解雇や退職勧奨、病気や介護を原因として離職した場合が該当します。
地域延長給付の対象になるためには、指定地域に住んでいる必要があります。指定地域に該当するのは、以下の3つの条件をすべて満たしている地域です。
- 地域の失業率が平成21年1月の全国平均(4.1%)以上
- 最近1ヶ月の地域の有効求人倍率が平成21年1月の全国平均(0.65倍)以下
- 失業保険をもらっている人÷(失業保険をもらっている人+雇用保険の被保険者)の割合が平成21年1月の全国平均以上
すべての条件に平成21年1月の基準が出てきますが、平成21年1月(2009年1月)はリーマンショックの影響で雇用状況がかなり悪い時期でした。地域の雇用状況がそれよりも悪い場合に、指定地域に該当します。
なお、指定地域になる上記の条件3つともを満たしていても、近隣に有効求人倍率が高い(=働く場所がたくさんある)地域がある場合は対象にならないこともあります。制度の詳細については、管轄ハローワークに確認しましょう。
延長される期間・日数
地域延長給付として延長される日数は60日です。ただし、所定給付日数が270日・330日の方は、30日が延長される日数になります。
個別延長給付と同じく、初めから給付日数が多い(270日・330日)方は、延長日数が少なくなります。
対象になるまでの流れ
対象になる可能性のある方は、ハローワークから案内があります。規定回数以上の求人への応募回数が必要になるため、積極的に求人へ応募していきましょう。
認定日にハローワークに行かない、規定回数以上の求職活動をしない、など、失業の不認定を受けてしまうと延長給付の対象外になります。失業認定はしっかりと受けましょう。
延長給付制度以外に給付日数が増える方法2選
給付日数の延長制度以外でも、以下の2つのケースに該当すると給付日数が増える可能性があります。
- 就職困難者として認定される
- 特定受給資格者として認定される
就職困難者としての認定は、障害者手帳をお持ちの方や保護観察処分中の方などが該当します。特定受給資格者としての認定は、解雇や退職勧奨など、いわゆる会社都合での退職の方が該当します。
失業保険の申請時点で上記2つの状態にあったのであれば、給付途中からでも対象になります。ただし、元から対象になっている方で、すでに給付日数が増えている状態であれば、給付日数は変わりません。
就職困難者について
就職困難者として認定されるのは、身体・知的・精神いずれかの障害をお持ちの方や、保護観察処分中の方などです。就職困難者として認定されると、以下の3点のメリットがあります。
- 認定日ごとに必要な求職活動の回数が1回以上になる(通常は2回以上)
- 所定給付日数が多くなる(150日・300日・360日のいずれか)
- 常用就職支度手当の対象になる可能性がある
就職困難者として認定される対象者
就職困難者として認定される方は、以下に当てはまる方です。
- 身体・知的・精神いずれかの障害をお持ちの方
- 保護観察所長からハローワークへ依頼のあった保護観察中の方
- 社会的事情により就職が著しく阻害されている方
- アイヌ地区住民
- 中高年齢失業者等求職手帳を所持する方
- その他教育・就労環境等により安定所長が就職が著しく困難であると認める方
求職活動に必要な期間が長くなる可能性があり、その分保護が手厚くなります。
就職困難者の所定給付日数
就職困難者として認定されると、所定給付日数が150日・300日・360日のいずれかになります。
雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
離職理由は関係ありません。自己都合退職・会社都合退職のどちらでも、就職困難者に該当する場合は、上記の表に当てはまる日数になります。
就職困難者の認定を受ける方法
就職困難者の認定は、失業保険申請時点において該当する状態にあったかで判断されます。就職困難者であるかは、障害者手帳や医師の意見書、その他行政機関の書類などで確認します。
申請時点で該当する状態にあったのであれば、証明書類の提出は後日でも可能です。申請時点で確認出来る書類をハローワークに提出しましょう。さかのぼっての認定は、失業保険の支払い開始後でも可能です。失業保険支給終了日の翌日から2年以内に申請を行ってください。
申請時点では言い出せなくても、確認書類があればさかのぼって認定されます。
申請時点で制度を知らなかった方でもOKです。該当する方は、管轄ハローワークで確認しましょう。
失業保険の申請時点で就職困難者に該当する状態ではなかった方が、申請後に就職困難者に該当する状態になったとしても、就職困難者として認定されません。失業保険申請時点でどのような状態であったか、が判断基準になります。
対象者であるかの確認は、書類・資料・手帳などを用いて行われます。身体・知的・精神いずれかの障害をお持ちの方は、障害者手帳や医師の診断書、保護観察処分中の方は、保護観察所長が発行する依頼書など、社会的事情による方は、状況確認が可能な各種書類などで行います。
該当する方は、自身が認定されるのに必要な書類をハローワークで確認し、窓口へ提出しましょう。
特定受給資格者について
特定受給資格者として認定されるのは、解雇や退職勧奨、倒産や事業所の廃止などいわゆる会社都合で退職された方です。特定受給資格者として認定されると、以下の3つのメリットがあります。
- 所定給付日数が手厚くなる(日数が多くなる)
- 失業保険の給付を早く受けられる(給付制限がかからない)
- 健康保険料が低くなる(健康保険料の減免制度)
特定受給資格者として認定される対象者
特定受給資格者として認定されるのは、以下の理由で退職した方です。
- 倒産
- 解雇(懲戒解雇を除く)
- 事業所の廃止
- 事業所からの退職勧奨
- セクハラ・パワハラ・マタハラ
- 給与遅配
- 労働条件の著しい相違
- 残業過多
- 事業所の業務が法令に違反した
この他にも、契約社員の方が、契約更新を希望しているにも関わらず契約更新がされなかった場合や、期間限定の希望退職者募集制度への応募による退職なども当てはまります。
該当する範囲は、ハローワークインターネットサービスの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」から確認出来ます。
詳細な判断基準については、管轄ハローワークで確認しましょう。
特定受給資格者の所定給付日数
特定受給資格者として認定されると、所定給付日数が90日~330日までの幅で決定され、離職理由以外が同じ条件の離職者よりも手厚い給付の対象になります。
雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1~5年未満 | 5~10年未満 | 10~20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30~35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35~45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45~60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
特定受給資格者として認定を受ける方法
特定受給資格者として認定されるかは離職理由によって決まり、離職理由は離職票の7欄で確認出来ます。1A~2C、3A、3Bのいずれかに〇が付いていれば、特定受給資格者として認定されます。
上記以外の箇所に〇が付いていたとしても、「離職理由変更の異議申立」を行うと、離職理由が変更される場合があります。離職理由変更の異議申立は、失業保険の申請時にハローワーク窓口で行います。手続きの流れは以下の通り。
- 窓口の職員に離職理由が違うことを伝える
- 離職理由が確認出来る証拠書類や申立書を記入・提出する
- 自身の管轄ハローワークから会社の管轄ハローワークへ離職理由確認の依頼がされる
- 会社の管轄ハローワークが会社へ申立内容の確認を行う
- 会社の管轄ハローワークから自身の管轄ハローワークへ回答が返ってくる
- 自身の管轄ハローワークが回答内容を元に離職理由を判定
申立があってから、実際に離職理由が変更されるまで1ヶ月~2ヶ月かかります。離職理由変更の異議申立を行う場合は、早めに申し出ましょう。また、離職理由変更の異議申立を行えば、必ず離職理由が変わるわけではありません。証拠書類が無く、会社側も事実を認めなければ、会社都合の事実があったとしても離職理由が変わらないことがあります。
会社都合で退職する方は、必ずその旨を会社の人事・労務・総務担当者に確認し、証拠書類も集めておきましょう。保管しておくとよい証拠書類は、以下のとおりです。
- 解雇通知
- 退職勧奨を受けた書類
- 雇用契約書
- 出勤簿・給与明細
会社都合で退職する場合は、基本的に退職届の提出は不要です。会社に言われるがまま退職届を提出してしまい、自己都合退職になってしまうケースもあります。自身の退職がどういった扱いになるか考えて、出来れば退職前にハローワーク窓口で離職理由について相談しておきましょう。
まとめ(締め)
以上、失業保険の給付される日数・延長給付制度について、以下の3点から解説しました。
- 延長給付制度以外の給付日数が延びる方法
- 失業保険の給付日数の上限(所定給付日数)とは
- 失業保険の各種延長給付制度について
まとめると以下のとおり。
失業保険の給付される日数には上限があり、その日数を所定給付日数と言います。所定給付日数は、雇用保険加入期間・離職理由・離職時の年齢によって決まり、90~360日の幅があります。
所定給付日数分を全てもらえば支給終了になりますが、特定の条件を満たす求職者の方は、給付日数の延長制度の対象になり、延長された日数分を追加で受けることが出来ます。給付日数延長制度は以下の5つ。
ただし、訓練延長給付以外はいずれも恒常的な制度ではなく、対象になることはほぼありません。対象になるまでのハードルが高く、自身ではどうにも出来ない条件がほとんどなため、初めから対象にならないと考えて動くことをオススメします。
上記の給付日数延長制度以外にも給付日数が増える可能性があり、それが以下の2つ。
- 就職困難者として認定される
- 特定受給資格者として認定される
就職困難者としての認定は、障害者手帳をお持ちの方や保護観察処分中の方などが該当します。特定受給資格者としての認定は、解雇や退職勧奨など、いわゆる会社都合での退職の方が該当します。
給付を受けている途中でも、上記の2つに認定されれば給付日数が増えます。ただし、元から認定されている場合は、すでに日数が増えている状態のため、給付日数は変わらないので注意しましょう。
残念ながら、支給終了間近になってから、失業保険の給付日数が延びる可能性はほとんどありません。給付日数の終了が近づいているのであれば、再就職先を見つけることが一番の近道です。ハローワークや民間の職業紹介会社などの仕事探しの機関を利用しながら、なるべく早期の再就職を目指しましょう。
実りある転職になるよう祈っております。最後までお読みいただきありがとうございました。
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