この記事の想定読者
・公務員の退職手当の制度について調べている方
・現在公務員で、退職を考えている方(国家・地方問わず)
・公務員への就職・転職を考えている方
公務員の仕事がなんとなく合わない…辞めたいな~
合わない職場に居続けるのはしんどいですよね…
そうなんだよ~でも退職後の生活が心配で辞めれないよ~(泣)
公務員を退職したときは、退職手当が支給されますよ!
一般的に、民間の会社を退職した場合は退職金が支給されます。
公務員にも同様の制度があり、その手当を「退職手当」といいます。
参考 内閣人事局|国家公務員制度|給与・退職手当 (cas.go.jp)
この記事では、公務員を退職した場合に支給される手当について、その制度を解説します。
国家公務員退職手当法を基に解説しますので、原則は国家公務員の方を対象とした解説になります。
地方公務員の方は、各自治体の条例によって若干の違いがありますのでご注意ください。
(ただし、金額の計算方法や期間の計算など、基本的な考え方は同じ場合が多いです。)
現在、公務員として退職を考えている方の退職後の生活設計や、これから公務員を目指す方の、万が一に備えた参考になればと思います。
ぜひ、最後までご覧ください。
退職手当とは
そもそも退職手当とは、職員が継続勤務して退職する場合の、勤続・功労への報償を基本的性格とした手当です。
言い換えると、「長い間お疲れさまでした手当」ですね。
国家公務員の退職手当については国家公務員退職手当法によって、対象者や支給方法、計算方法など定められています。
参考 国家公務員退職手当法 国家公務員退職手当法 | e-Gov法令検索
その支給水準はおおむね5年ごとに官民比較を行い、民間企業の水準と同程度になるよう調整されています。
(前回は令和4年4月に調査結果が報告され、官民差がほとんどなかったため支給率は据え置かれています)
出典 人事院 民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について (jinji.go.jp)
なお、地方公務員については、地方公務員法第24条第2項に基づき、各地方自治体の条例で退職手当について定められています。
職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
地方公務員法 第24条第2項
退職手当の計算方法
「退職手当」の計算方法は以下のとおり。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
参考 国家公務員 退職手当の支給の計算 人事院 退職手当の支給 (jinji.go.jp)
知らない言葉だらけでわかりづらい!
ひとつずつ分解しながら見ていきましょう。
退職手当の計算をするときは、大きく二つの額を計算します。
それが、基本額と調整額です。
以下で、その大きな項目ごとに分けて見ていきましょう。
基本額
基本額はその名のとおり退職手当の基本的な支給額を構成します。
その中身は、「退職日の俸給月額」×「退職理由別・勤続期間別支給割合」です。
※1円未満の端数切捨て
基本額を計算するうえで必要な情報は以下の3つ。
- 退職日時点でいくら給与をもらっていたか
- 退職理由はなにか(自己都合、定年など)
- 何年働いていたか
それぞれについて見ていきましょう。
退職日の俸給月額
在職中の方はご存じだと思いますが、公務員の給与は俸給表に基づき金額が定まっており、退職日時点での自身に適用されている俸給月額を退職手当の算定に使用します。
算定するうえで、3つの注意点があります。
- 地域手当や扶養手当などの各種手当は含めない
- 管理職手当は含める(俸給の特別調整額に当たるため手当ではなく俸給扱いになる)
- 休職や停職中のため給与の支給を受けていない・減額されているときに退職しても減額はなかったものとして計算する
そもそも自分の俸給がわかりません…
給与明細に記載されているはずなので、確認してみましょう。
どうしてもすぐに確認したいときは、所属の庶務担当に聞いてみましょう。
参考 人事院 俸給表(令和4年度 人事院勧告後)houkyuuhyou.pdf (jinji.go.jp)
退職理由別・勤続期間別支給割合
上記の退職日時点の俸給月額に、「退職理由別・勤続期間別支給割合」をかけて基本の退職手当金額が計算できます。以下で勤続期間の計算方法と退職理由別支給割合について見ていきましょう。
勤続年数の計算方法
入職してから退職するまでの期間を計算します。
ここでの計算は月単位で行い、端数が6か月未満のときは切り捨て、6か月以上のときは切り上げます。(退職理由が定年・傷病・死亡のときは6か月未満でも全て切り上げます)
月の途中の採用・退職は、その月を一月として算定します。
前各項の規定により計算した在職期間に一年未満の端数がある場合には、その端数は、切り捨てる。ただし、その在職期間が六月以上一年未満(第三条第一項(傷病又は死亡による退職に係る部分に限る。)、第四条第一項又は第五条第一項の規定により退職手当の基本額を計算する場合にあつては、一年未満)の場合には、これを一年とする。
国家公務員退職手当法 第7条第6項
- 例① 2000年4月入職 2022年3月退職 ⇒ 22年
- 例② 自己都合退職 2000年11月入職 2022年3月退職 ⇒ 21年5か月 ⇒ 21年
- 例③ 自己都合退職 2000年10月入職 2022年3月退職 ⇒ 21年6か月 ⇒ 22年
なお、在職中の休業期間や休職期間には、勤続期間の算定から除かれるものがあります。
- 私傷病による休職の期間
- 育児休業の期間(ただし、子が1歳に達した日の属する月までの期間は3分の1を除算する。)
- 懲戒処分としての停職の期間
- 刑事休職及び研究休職の期間 ※ただし、その内容が公務の能率的な運営に特に資すると認められる等の場合には除算されない。
↑この休職・休業期間を取ったことがある人は、その期間の半分を勤続期間から引きますよ~ということです。(計算後の月未満は切り上げ)
例 12年勤続して自己都合退職する人が7か月間私傷病休職を取得していたとき
12年-4か月(7÷2=3.5か月 端数切り上げ)= 11年8か月 ⇒ 12年
- 職員団体専従休職(組合活動に従事するための休職)の期間
- 自己啓発等休業(大学等での学び直しや海外ボランティアに参加するための休職)の期間 ※ただし、その内容が公務の能率的な運営に特に資すると認められる等の場合には2分の1を除算する。
- 配偶者同行休業(配偶者の転勤についていくための休職)の期間
↑この休職・休業期間を取ったことがある人は、その期間の全部を勤続期間から引きますよ~ということです
例 12年勤続して自己都合退職する人が7か月間職員団体専従休職を取得していたとき
12年-7か月= 11年5か月 ⇒ 11年
退職理由別支給割合
勤続期間が同じであったとしても、退職理由によって支給割合は変わります。
見方としては、以下のとおり
- 自己都合であれば①
- 定年、応募認定(早期退職募集)、任期満了、事務都合、公務外死亡、通勤傷病 は勤続年数によって見るところが変わり、10年未満は②、11年から24年までは④、25年以上は⑥
- 公務外傷病(いわゆる私傷病 公務に起因しない病気)は③
- 公務上死亡、公務上傷病、整理・応募認定退職(組織改編等での応募退職)は⑤
例① 7年勤務して自己都合退職であれば支給率は 3.5154
退職日時点の俸給月額に3.5154をかけて基本額を計算します。
例② 30年勤務して応募認定退職(早期退職募集)であれば支給率は 40.80375
退職日時点の俸給月額に40.80375をかけて基本額を計算します。
調整額
俸給月額が3級以上の期間があった職員に対しては、上記で計算した基本額にさらに調整額が加算されます。
例 3級期間7年 4級期間8年 5級期間5年 6級期間3年で退職したとき
在職中の一番高い俸給期間5年分 ⇒ 6級3年、5級2年(=5年-3年)
36か月(6級期間)×43,350円+24か月(5級期間)×32,500円=2,340,600円
基本額に2,340,600円を加算します。
3級以上の期間があった職員でも、下記に当てはまる方は調整額が加算されないことがあります。
- 勤続期間9年以下 支給なし
- 勤続期間10年から24年以下 半額支給
- 勤続期間4年以下 半額支給
まとめ
以上、公務員の方が退職した場合に支給される退職手当について、その制度を解説しました。
まとめると以下のとおりです。
安定した仕事として人気の高い公務員。
一度就職するとその安定感からなかなか退職しづらいですよね。
でも、辞めたい気持ちが少しでもあるならば、退職後の生活についてしっかり考えてみましょう。
自身が進みたい方向性が見えてくるかもしれません。
退職後にかかるお金については、以下の記事も参考にしてください↓
自身の進退についてしっかりと考えて、後悔のない人生にしていきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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