この記事の想定読者
- そもそも退職金がどういったものかよくわからない
- 退職金と失業保険の違いがわからない
- 退職金をもらったときに失業保険に影響があるのか知りたい
退職金がもらえそうなんだけど、失業保険とはまた別なんだよね?
もらったら何か影響ある?
全く影響ありませんよ!
失業保険との関係については何も気にしなくてOKです。
企業を退職した際にもらえる退職金。
失業保険も退職金も企業を退職したときにもらえるお金ですが、よくある質問として以下の3つがあげられます。
それぞれの回答については以下のとおりです。
この記事では退職金と失業保険の関係について、よくある質問3選とその回答について解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
退職金とは
退職金とは、企業を退職したときに支払われるお金です。
一般的には、定年退職時などに千~二千万円ほどのまとまった金額が支払われるような「退職一時金」のイメージがあると思います。
退職金制度は企業ごとによって以下の2点の違いがあります。
- 退職金制度あり・なし
- 退職金額の計算方法
参考 リクナビNEXT 退職金制度とは
退職金制度あり・なし
そもそも、退職金は法的に必ず支払わないといけないお金ではありません。
それぞれの企業ごとにルールを策定し、それに従って支払われるかが決まります。(そのルールを退職金規定と呼びます)
令和3年度の人事院の調査では、民間企業の9割近くが退職金制度ありと回答しました。
参考 人事院 民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年4月21日公表) https://www.jinji.go.jp/nenkin/R3/taisyokukennkai.html
支払い方についても、一括で支払う「退職一時金」型や、年金形式で支払う「企業年金」型、両者併用型など様々な種類があります。
退職するときになって初めて退職金制度が無いことを知る人もいます。
聞きにくいと思いますが、在職中に退職金制度があるかどうか聞いておきましょう。
退職金額の計算方法
金額の計算方法も企業ごとの取り決め(退職金規定)によって変わります。
多数派は 退職時の基本給の一部または全部×勤続年数別支給率 です。
その他には、決まった金額を支払う定額制や、在職時の働きによって加算していくポイント制など、企業によってさまざまな種類があります。
入社後一定期間過ぎると、いつ退職しても年俸の1年分がもらえるリクルート社のフロンティア制など、ユニークな制度を取り入れる企業もあります。
※ なお、独立起業や転職を後押しするリクルート社のフロンティア制は、2021年に制度内容が変更され、上限支給額が100万円になりました。
自身の勤めている会社がどういった退職金規定になっているのか、調べてみるのも面白いかもしれませんね。
退職金と失業保険の関係
退職金と失業保険の関係について、以下の3つの質問から解説します。
退職金と失業保険って同じもの?
退職金は、企業の退職金規定によって退職時に企業から支払われるお金です。
一方、失業保険は雇用保険法によって退職後に国から支払われるお金です。
ポイントは以下の2点
- 支払いの根拠・対象者
- 費用の負担先・支払い時期
退職金=退職金規定 失業保険=雇用保険法
退職金は、前出のとおり各企業の退職金規定によって支払いの有無・金額が定められています。
退職金規定がない企業で働いていた場合、通常退職金は支払われません。(心づけ程度をもらえる可能性はあり)
また、企業によっては、1日でも勤務していれば退職金を支給するケースもありますし、勤続10年未満の退職のときは退職金を支給しない、というケースもあります。
良くも悪くも企業次第ということです。
一方、失業保険は雇用保険法で定められ、対象者に該当するのであれば雇用保険の被保険者全員に支払われます。
雇用保険に加入している限り、どこの企業に勤めていても対象になる可能性があります。
なお、ここでいう失業保険の対象者とは失業状態であることを言います。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
整理すると以下のとおり
- 退職金=各企業の退職金規定
- 失業保険=雇用保険法
- 退職金=退職金規定のある企業で働いて、規定に沿って退職した人
- 失業保険=雇用保険に加入していて、対象者に当たる人
退職金=企業 失業保険=国
退職金は、退職後に企業が支払います。
支払い時期は企業によって様々ですが、退職後1~2か月以内に一括で支払われるのが一般的です。
また、費用は企業が全額負担します。
失業保険は、退職後に対象者がハローワークに申請に行き、一定期間経過後に国が支払います。
支払い時期は、会社都合退職の場合で申請してから1か月程度。自己都合退職の場合は3か月程度かかります。
また、支払い方法も一括ではなく4週間ごとの分割支給になります。
費用は、企業と雇用保険の被保険者が折半で支払っている「雇用保険料」です。
失業保険等の雇用保険料率は、企業・被保険者ともに月額給与の0.6%
月収30万円の人であれば、被保険者の負担はひと月あたり1,800円です。(令和5年度)
参考 厚生労働省 令和5年度雇用保険料率のご案内 https://www.mhlw.go.jp/content/001050206.pdf
退職金額が多いと失業保険の金額も多くなる?
失業保険の受給金額は、「1日当たりの受給金額×給付日数」で計算できます。
「1日当たりの受給金額」は退職前6か月の給料から計算し、「給付日数」は離職理由・離職時の年齢・雇用保険をかけていた期間によって決まります。
参考 ハタラクティブ 基本手当日額とは?雇用保険について詳しく解説 https://hataractive.jp/useful/1818/
「給付日数」は、離職理由・離職時の年齢・雇用保険をかけていた期間によって決まるので、退職金の有無・金額は関係ありません。
「1日当たりの受給金額」は、退職前6か月間の給料を基に計算しますが、その計算に退職金は入りません。
参考 雇用保険事務取扱要領 50303(3)イ 賃金日額の算定の基礎に算入されないものの例
なお、退職金を在職中に給与に上乗せする等によって支払う「前払い退職金」については、条件付きで算定の対象になることがあります。詳しくは最寄りのハローワークで確認してください。
一般的な退職金は、雇用保険の受給金額に全く影響を及ぼさない ということです。
※ 以下、興味のある人だけ 退職金額と賃金日額の取り扱いの考え方
失業保険は離職前6か月間の「賃金」を基に計算します。
雇用保険法の「賃金」とは以下の定義をしています。
- 事業主が労働者に支払ったもの
- 労働の対償として支払ったもの
「労働の対償」の定義は以下のとおり
- 実費弁償的でないもの
- 恩恵的でない
契約等によって、事業主に支払いの義務があるものすべてを賃金としています。
要領では、賃金に該当する例として以下を挙げています。
- 労働基準法第26条の基準に基づく休業手当(法律によって支払いが義務付けられているため)
- 住宅手当(労働の対価ではないが、契約によって決まっていれば支払い義務あり)
また、要領では賃金に該当しない例として以下を挙げています。
- 傷病手当(健康保険組合から支払われている)
- チップ(事業主から支払われていない)
事業主の支払い義務が被保険者の退職後に確定したものは、「算定の基礎に算入されないもの」としており、定義上「賃金」ではあるが、算定の対象にはしないとされています。
よって、退職金は、
- 退職金規定によって支払い義務があり
- 事業主が労働者に支払っているため
定義上「賃金」に該当しますが、
- 離職後に支払い義務が確定するため
「算定の基礎に算入されないもの」として取り扱われています。
失業保険受給中に退職金が支払われたらどうなる?
通常、失業保険受給中にアルバイト等の就労を行って収入を得ると、就職or労働収入があったとして受給金額が調整されますが、退職金をもらっても受給金額は調整されません。
失業保険受給中に退職手当をもらった場合、雇用保険事務取扱要領(=法律を基にしたルールブック)では以下の取り扱いになるとされています。
「就職に該当しないことはもちろん、自己の労働によって収入を得た場合とは判断されない」
参考 雇用保険事務取扱要領 51255(5)ロの(ハ)
要は「失業期間中に働いて得たお金じゃないので、失業保険の支払いに影響ありませんよ。」
ということです。
失業認定日に退職金をもらったことを申告する必要もありません。
まとめ
以上、退職金と失業保険の関係3選について解説しました。
まとめると以下のとおり。
失業保険と退職金の関係についてのよくある質問3選
それぞれの回答
結論
退職してもらえるお金は様々です。
自身の頭で整理して、スムーズに転職活動を進めましょう。
ハローワークを利用しての転職活動については以下の記事も参考にしてください。
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