この記事の想定読者
- 公務員の失業者の退職手当制度について知りたい方
- 現在公務員で、退職を考えている方(国家・地方問わず)
- 公務員への就職・転職を考えている方、公務員として在職中の方
結論からいうと、公務員が退職時に支給されるお金は退職手当のみで失業保険の制度は適用されません。
ただし、退職手当の金額が一般の失業保険の総支給金額を下回るとき、その差額分が支給されます。
まとめると、以下のようになります。
このときの差額分を「失業者の退職手当」といい、この「失業者の退職手当」については、自身が請求しなければ支給されず、請求・支給方法は、国家公務員と地方公務員とで異なります。
この記事では、公務員を退職した場合に支給される手当について、その制度、申請方法を解説します。
現在、公務員として退職を考えている方は退職後の生活設計について考える参考にし、これから公務員を目指す方についても、万が一公務員の職が合わなかった場合のプランを考える参考にしてください。
公務員が退職時にもらえるお金
そもそも公務員が退職したときにもらえるお金ってなにがあるの?
退職時には「退職手当」が支給されます。また、その金額が少ないときは「失業者の退職手当」も支給されます。
公務員が退職後にもらえる手当は「退職手当」と「失業者の退職手当」の2つあり、その支給については国家公務員退職手当法によって定められています。
地方公務員については、地方公務員法第24条第2項に基づき、各地方自治体の条例で定められています。
参考 国家公務員退職手当法 国家公務員退職手当法 | e-Gov法令検索
失業者の退職手当については 国家公務員退職手当法第10条
地方公務員法 地方公務員法 | e-Gov法令検索
退職手当
この「退職手当」が民間企業で言うところの退職金と失業保険を合わせた制度に当たります。
計算方法は以下のとおり。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
参考 国家公務員 退職手当の支給の計算 人事院 退職手当の支給 (jinji.go.jp)
制度の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
失業者の退職手当
退職手当を計算してみたら10万円ぐらいしかなかった…貯金も無いし辞められないな~
退職手当が少ないときは、失業者の退職手当がもらえますよ!
「退職手当」が民間の失業保険の総支給額以下のとき、その差額分の支給を受けることができ、それを「失業者の退職手当」といいます。
必要書類をハローワークまたは各地方自治体に提出し、月1回の失業の認定を受けることで支給される手当です。
参考 失業者の退職手当制度の概要 内閣人事局|国家公務員制度|失業者の退職手当制度の概要 (cas.go.jp)
失業者の退職手当の計算参考 内閣人事局|国家公務員制度|失業者の退職手当の支給要件及び支給額算定基準 (cas.go.jp)
民間の失業保険の総支給金額
失業保険の総支給金額は以下のように計算します。
総支給金額-支給済の退職手当
上記で算出した総支給額から実際に支給された「退職手当」の金額相当分の日数を差し引き、その差額が「失業者の退職手当」として支給されます。
「失業者の退職手当」がいくら支給されるかの計算の流れとしては以下のとおりです。
- 「退職手当」の金額を計算する
- 自身の退職時点の賃金日額を計算する
- 1の「退職手当」を、2で計算した賃金日額で割り、「支給済みとされる日数」を計算する
- 民間の失業保険を支給される場合の総給付日数から、3で計算した支給済みの日数を差し引く
文字だけで見るとわかりにくいと思いますので、以下で具体的な例を見てみましょう。
例 俸給月額20万円 1年で自己都合退職 退職時年齢24歳
- 「退職手当」 200,000円×0.5022=100,440円
- 「賃金日額」 200,000円×6か月=1,200,000円 上記のURLに入力して賃金日額は4,887円
- 「支給済とされる日数」 100,440円(退職手当)÷4,887円(賃金日額)= 20.55 ≒ 20日(1日未満は切り捨て)
20日分の退職手当を支給されたとみなして、残り分を「失業者の退職手当」として支給します↓
90日(所定給付日数)-20日(既支給分)=70日
この例で言うと、70日分の「失業者の退職手当」が月1回の失業の認定日ごとに分割されて支給されます。失業状態が続いた場合に支給される「失業者の退職手当」の総支給額は、
70日×4,887円=342,090円
になります。
実際の申請方法
支給される金額がわかれば、次は実際の申請方法について見ていきましょう。
申請方法は国家公務員の場合と地方公務員の場合で違いがあり、冒頭でみたように以下のとおりになります。
さらに細かく見ていきましょう。
国家公務員の場合
国家公務員の場合は、法律や施行令によって支給方法が決まっているため、全省庁単一の取扱いになります。
どこに勤めていても申請方法は同じということです。
実際に、私が窓口を担当しているときも各省庁の地方分支局(運輸局や法務局)の方や、自衛隊や裁判所事務官、刑務官の方など、様々な省庁を退職した方が申請に来ていました。
その中には、私と同じハローワークを退職した人も申請に来ていました。(少し気まずかったですが…)
以下で実際の申請方法について見ていきます。
退職証明書の発行
退職後、それぞれの省庁の人事・総務担当から退職証明書を発行してもらいます。
これが民間の離職票にあたる書類になり、ここに退職時の俸給月額や在職時に支給されていた各種手当、支給された退職手当の金額などが記載されています。
退職後、スムーズに発行してもらえるよう、あらかじめ人事・総務担当者に発行希望を伝えておきましょう。
必要書類を持ってハローワークへ
上記の退職証明書と、その他必要書類を持ってハローワークへ申請に行きます。
ただし、申請時に失業状態であることが条件になります。
失業状態とは、「週20時間以上の仕事を希望しており、仕事が見つかればすぐにでも働くことができる状態で、就職先を探しているがまだ見つかっていない状態」のことを言います。
なので、以下のようなときは申請ができませんのでご注意ください。
- 自営業を希望している
- 学校に通うので働けない
- 妊娠、出産、育児、ケガ、病気のためすぐには働けない
- すぐに再就職するつもりがない
申請時に必要になる書類は以下の3つ。
- 退職証明書
- 本人確認書類
- 振込先口座の確認ができる通帳またはキャッシュカード
なお、以下の書類は公務員の申請時には必要ありません。
- マイナンバー確認書類
- 写真2枚
※ ただし、管轄のハローワークによっては写真2枚の提出が求められることがあります。事前に確認しておきましょう。
失業の認定を受ける
申請後、問題なければ次回来所する失業の認定日が指定されます。
この指定された認定日にハローワークへ行き、失業の認定を受けることで「失業者の退職手当」が支給されます。
当日の必要書類は、失業認定申告書と受給資格者証の2点。
失業の認定に当たってのポイントは以下の2つです。
- 失業認定日にハローワークへ行かなければ手当は支給されない
- 失業認定日の前日までに2回以上の求職活動実績が必要
なお、認定日は毎月16日(16日が土日祝日の場合はその前後)に設定されます。
指定口座への振込
ハローワークで失業の認定を受けると、その認定日から1週間程度で自身の指定した口座へ振り込まれます。
申請から振り込まれるまでの期間は、離職理由や先に支給された「退職手当」の金額にもよりますが、平均して3~4か月かかります。
支給日がいつになるかの計算は以下のとおり。ここはかなりややこしいので、興味のある方だけ見てください。どうしても具体的な日付が知りたい方は管轄のハローワークへ聞いてみましょう。
・支給日までの期間計算方法
退職後、すでに支給された「退職手当」の日数分を待機期間として算定し、自己都合退職の場合はさらにそこに給付制限期間が加算されます。
例 上記の例で既支給分が20日であり、申請日が令和5年2月1日 のとき
まずは申請日から7日間の待期期間(通常の失業保険と同等の期間)
令和5年2月1日~7日まで
これに既支給分の20日間も待期期間として足す
令和5年2月8日~27日まで
自己都合退職のため、待期期間経過後さらに2か月の給付制限期間
令和5年2月28日~4月27日まで
なので、支給対象期間は令和5年4月28日から
このときの最初の失業認定日は令和5年5月16日になり、口座に振り込まれるのはこの1週間後ぐらいで(5月23日前後)、最初の支給日数は令和5年4月28日~5月15日までの18日分(=87,966円)になります。
支給終了・就職まで繰り返す
就職する、または給付日数を全てもらいきるまで、この認定の手続きを繰り返します。
なお、早期で就職した場合は再就職手当の支給対象になる可能性があり、この再就職手当の支給条件は、通常の失業保険の場合と同じです。
地方公務員の申請方法
地方公務員の場合は、各地方自治体の条例によって定まっているため、申請方法はまちまちになります。この記事では一般的な申請方法を説明します。詳細についてはご自身のお勤め先の地方自治体に確認しましょう。
(大多数の自治体は国家公務員の申請方法と同じになっています。)
退職票の発行
退職後、それぞれの自治体の人事・総務担当から退職票を発行してもらいましょう。
これが民間の離職票、国家公務員の退職証明書にあたります。
これについても、スムーズに発行してもらえるよう事前に担当者に発行の希望を伝えておきましょう。
なお、この退職票は自治体によってはハローワークで発行できる場合があります。
※ハローワークと地方自治体が取り決めをしている場合。詳細は自治体の担当者に確認してください。
失業の証明
退職票をハローワークに持参し、求職申込をして失業の証明を受けます。
このときの必要書類は退職票のみです。
なお、失業の証明は、通常の失業保険・国家公務員の方・地方公務員の方、すべて同じように「失業状態」であることが必要になります。
繰り返しになりますが、失業状態とは「週20時間以上の仕事を希望しており、仕事が見つかればすぐにでも働くことができる状態で、就職先を探しているがまだ見つかっていない状態」のことを言います。
当てはまらない場合は支給の対象になりませんのでご注意ください。
失業証明書類の提出
ハローワークで求職の申し込みを行い、失業の証明をしてもらった後、その証明書を持って各自治体の退職手当支給部署に行き、支給を受けます。
担当がどこの部署になるのかや、細かな必要書類等は各地方自治体により違いますので、事前に庶務担当者に確認しておきましょう。
特に、
- 書類の提出からどれぐらいの期間で振り込まれるのか
- 他に申請の際に必要な書類があるのか
については必ず各地方自治体の担当まで確認お願いします。
支給終了・就職まで繰り返す
就職する、または給付日数を全てもらいきるまで、失業の証明・支給の手続きを繰り返します。
なお、地方公務員の方についても早期に就職した場合は再就職手当の支給対象になる場合があります。詳細については各地方自治体の担当に確認しましょう。
まとめ
以上、公務員の方が退職した場合に支給される手当、その制度と申請方法について解説しました。
まとめると以下のとおりです。
「失業者の退職手当」の申請方法↓
安定した仕事として人気の高い公務員。
一度就職するとその安定感からなかなか退職しづらいですよね。
それでも、人生は一度きり。悔いのない選択ができるよう、制度についてはしっかりと勉強しておきましょう。
退職後の必要なお金については以下の記事も参考にしてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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