この記事の想定読者
- 転職したいけれど、生かせるスキルが無くて不安な方
- 一から学びたい分野があるが、今の仕事と両立して学ぶのが難しい方
- 会社を退職して資格を取りたいが、退職後の生活が不安な方
こんな会社辞めたい!でもスキルがなくて転職できない…
そんなときは!転職に生かせるスキルを学べて、さらにお金ももらえるしくみを利用しよう!
また怪しい広告を踏んでしまった…と思われた方、いらっしゃいませんか?たしかに書き出しは怪しいネット広告ですが。(笑)これは国(厚生労働省)が実施しているれっきとした制度です。
その名を「専門実践教育訓練給付」、「教育訓練支援給付金」といいます。
それぞれ以下のような制度になっています。
対象者
- 雇用保険に3年以上加入している
- 在職中 または 離職から1年以内
給付内容
- 入学金、受講料の50%を還付(上限あり)
- 講座の目的とする資格を取得して就職で+20%還付=合わせて最大70%還付(上限あり)
対象者
- 上記の専門実践教育訓練給付の支給対象になっている
- 教育訓練給付金を受けるのが初めて(一般、特定一般、専門どれも)
- 受講開始日時点で離職しており、その後も失業状態が続いている
- 受講開始日時点で45歳未満
- 昼間の通学生の学校に通う
給付内容
- 失業保険の80%の金額を訓練修了までもらえる
そして、私がおすすめしたい「専門実践教育訓練給付+教育訓練支援給付金」の利用の仕方はこれです↓
入学後、失業保険を最速でもらいきり、その後は教育訓練支援給付をもらいながら、週20時間未満アルバイトをして生計を維持しつつ、転職に生かせるスキルを取得して卒業と同時に就職する。
以下で、この利用方法をおすすめする理由の解説と具体的な試算を行います。ぜひ最後までご覧いただき、有利な転職活動をすすめましょう!
※ あくまで私の個人的なおすすめです。全員に当てはまるわけではありませんのでご承知おきください。
※ すでに制度についてはご存じで、おすすめ内容について知りたい方はおすすめ利用法とその理由まで飛ばしてください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
教育訓練給付制度とは
働く人の主体的で、中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度です。
出典 厚生労働省
「仕事に生かせるスキルを身に着けて、長く働きましょう&早期に再就職しましょう。それを進めるための勉強であれば、国がお金を補助しますよ。」という制度です。
私自身、雇用保険に加入していれば利用したかった…
- 一般教育訓練給付
- 特定一般教育訓練給付
- 専門実践教育訓練給付
- 教育訓練支援給付
の4種類あり、それぞれ申請方法と支給される金額が違います。この記事では、その中の「専門実践教育訓練給付」と「教育訓練支援給付」について解説します。
それ以外の給付金に関心のある方は、以下の記事を参照してください。
専門実践教育訓練給付について
専門実践教育訓練給付とは、
- 雇用保険に3年以上加入している(初めての申請であれば2年以上)
- 在職中 または 離職から1年以内
- 過去3年以内に教育訓練給付を受けていない
この対象に当てはまる人が、厚生労働大臣の指定する講座を受講することで、
- 入学金、受講料の50%を還付(上限あり)
- 講座の目的とする資格を取得し、1年以内に就職することで+20%還付(上限あり)
といった還付を受けることができる制度です。(最大70% 上限144万円の還付)
事前にキャリアコンサルティングを受けて、受講開始1か月前までにハローワークに給付の申請を行い、受講開始後6か月ごとにハローワークの窓口に書類を提出することで、給付を受けることができます。
主な対象講座
専門実践訓練給付金の対象になる主な資格は、
- 業務独占資格や名称独占資格であれば看護師、保育士、柔道整復師、理・美容師、調理師など
- 専門職大学院であれば東京大学や京都大学などの大学院
- 高度情報通信技術関係資格であればITストラテジストやプロジェクトマネージャなど
幅広い分野が対象になっています。
業務独占資格や名称独占資格は、厚生労働省認可の資格が多いのが特徴的ですね。
令和4年10月現在では、大学生や社会人に人気の
- 宅地建物取引士
- 行政書士
- 税理士
- 公認会計士
などは対象講座に指定されている学校がありません。一般教育訓練や特定一般教育訓練では対象になっている講座があるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
対象講座かどうかは学校次第
対象講座の指定は、民間の資格スクール等が数年ごとに厚生労働大臣へ申請を行い、審査を受けたうえで判断されます。現在は1,346講座がその対象になっています。(令和4年10月時点)指定は講座ごとによって行われており、学校単位ではありません。なので、同じ学校でもA講座は対象だけど、B講座は対象外、ということがあります。
教育訓練給付金の受給を希望するときは、必ず、受講希望の講座が対象になっているかを調べ、念のため学校にも確認を取っておきましょう。
対象講座かどうかは、以下の検索システムで調べることができます。
厚生労働省 教育訓練給付制度[検索システム] (mhlw.go.jp)
教育訓練支援給付金の対象講座を検索する場合は、「通学制(昼間)」と、「専門実践教育訓練」にチェックを入れて、それ以外のチェックは外して検索してください。
教育訓練支援給付金について
教育訓練支援給付金とは、
- 専門実践教育訓練給付の給付対象になっている
- 教育訓練給付金を受けるのが初めて(一般、特定一般、専門全て含めて)
- 受講開始日時点で離職しており、その後も失業状態が続いている
- 受講開始日時点で45歳未満
- 昼間の通学生の学校に通う
この対象に当てはまる人が、ハローワークに申請することで
- 失業保険の受給終了後、失業保険の80%の金額を訓練修了までもらえる
といった給付の制度です。
この制度は、元々は2022年3月31日受講開始日までの時限措置でしたが、2022年7月1日に新たな制度が施行され、2025年3月31日受講開始日まで期限が延びました。
「人への投資」が叫ばれ続ける限り、今後も期限は延びていくかもしれませんね。
専門実践教育訓練給付の申請と同時時に、または離職から1か月以内にハローワークへ申請し、受講開始後2か月ごとにハローワークに書類を提出することで給付を受けることができます。
なお、失業保険と同時にはもらえませんので、失業保険をもらい終わってから給付を受けることになります。(申請はもらえる前に事前に行います)
参考 教育訓練給付制度|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
給付金額の計算方法
実際に給付される金額の計算は、以下のとおり。
「離職直前の賃金額 ⇒ 失業保険の日額 ⇒ 教育訓練支援給付金の金額」です。
失業保険は、離職直前の給与の60~70%程度になることが多く、教育訓練支援給付金は、その失業保険の80%の金額になります。また、それぞれの給付金は「一日ごとに計算して支給」されます。
以下の表は、月額の給与額に対応する、失業保険と教育訓練支援給付金の日額をざっくりと計算したものです。参考までに確認してみてください。
出典 厚生労働省 雇用保険基本手当日額の変更~令和4年8月1日から実施~ 000966220.pdf (mhlw.go.jp)
参考 厚生労働省 雇用保険業務取扱要領 50601-50900 雇用保険業務取扱要領 58522(2)-58525(5)
途中でもらえなくなるケース
教育訓練支援給付金は、途中で給付の対象にならなくなってしまうケースがあります。
それが以下のケース。
- 出席率が80%未満になってしまった場合
- 最初に予定していた修了期間では修了できなくなった場合
- 雇用保険の被保険者になってしまった場合
参考 厚生労働省 専門実践教育訓練給付、教育訓練支援給付金について 000558050.pdf (mhlw.go.jp)
出席率が80%未満になってしまった場合
出席日数を開講日数で割り、出席率が8割を下回ったとき、教育訓練支援給付金の受給対象外になります。インフルエンザや大規模災害など、やむを得ない理由で欠席した日については、開講日数の計算に入れません。
8割以上の出席率は2か月の支給単位期間ごとに計算され、一度でも8割を切ると、以降の教育訓練支援給付金はすべてもらえなくなります。(その後、出席率が改善されて、トータルの出席日数が8割以上になってもダメです)
最初に予定していた修了期間では修了できなくなった場合
最初に予定していた修了期間では修了出来なくなったとき、教育訓練支援給付金の受給対象外になります。
ざっくり言うと、留年してしまった場合です。
大規模災害等でそもそも講座が開講されなかった場合や、学校側の問題で修了できなくなった場合を除きます。なお、このケースは専門実践教育訓練給付金についても給付の対象ではなくなります。
雇用保険の被保険者になってしまった場合
雇用保険の被保険者になってしまったとき、教育訓練支援給付金の受給対象外になります。
要は、週20時間以上の仕事に就職した場合です。
週20時間以上の仕事をしている期間は、働いていない日も含めてすべて受給対象外になります。
ただし、「週20時間以上の仕事をしていない状態」に戻れば給付の再開が可能です。
参考 教育訓練支援給付金を受給している人が働いている場合の認定について 厚生労働省 雇用保険についての業務取扱要領 58566(6)
申請の流れ
教育訓練支援給付金の申し込みは以下のとおりです。
受講開始前、または退職後1か月以内に、
- 離職票
- 教育訓練給付金受給資格者証
をハローワークに持参して申請する。そのときに、
- 失業保険の受給資格がある場合は同時に失業保険も申請する。
- 失業保険の受給資格がない場合は教育訓練支援給付金の申請のみを行う。
これだけです。専門実践教育訓練給付の申請をすでに済ませているのであれば、手続き自体は5~10分で終わります。
その後は、受講開始後2か月に1回ずつハローワークの窓口へ
- 教育訓練給付金受給資格者証
- 受講証明書
を持って申請に来ます。
おすすめ利用法とその理由
では、冒頭でおすすめした「専門実践教育訓練給付+教育訓練支援給付金」の利用の仕方である、
入学後、失業保険は最速でもらいきって、その後は教育訓練支援給付をもらいながら週20時間未満アルバイトをして生計を維持しつつ、転職に生かせるスキルを取得して卒業と同時に就職する。
について、理由から説明し、最後に具体的に計算をしましょう。
理由1 バイトしていても給付は満額
教育訓練支援給付は失業保険と違い、週20時間未満であれば、働いていても給付が満額もらえます。(失業保険は、働いている日については給付がもらえなかったり、減額されたりします)
ここは、教育訓練支援給付を受けるにあたっての一番の強みかなと思います。もちろん、スキルの取得・就職が第一の目的ため、バイトのために学校を休まないといけなくなってしまったり、体を壊すまで働く、などはやめておきましょう。
参考 教育訓練支援給付金を受給している人が働いている場合の認定について 厚生労働省 雇用保険についての業務取扱要領 58566(6)
バイトをするのは給付制限中&失業保険をもらい終わってから
教育訓練支援給付金は、失業保険をもらい終わってからでないと支給されません。失業保険受給中にアルバイトをすると、働いた日については給付がもらえなかったり、減額されます。ここで、もらえなかった給付については、後日支給されるのですが、その分失業保険の受給期間が延びてしまいます。
例 R4.4.1~R4.6.29の期間で90日分支給予定の人が、1日4時間以上5日間働いた。
⇒R4.4.1~R4.7.4の期間で90日分支給される
⇒教育訓練支援給付金が5日分もらえない。
もちろん、お金をもらうことが目的ではないので、失業保険の受給中に働くことは悪いことではありません。働く場合は、転職に有利な資格を取得することを優先し、資格勉強とアルバイトのバランスを取りながら働きましょう。
ちなみに、給付制限中はいくら働いても支給に影響はありません。
理由2 退職から2年目以降は社会保険料や税金を抑えられる
教育訓練支援給付金と失業保険はともに非課税であり、社会保険料の算定にあたっても所得とみなされません。これは、1年以上学校に通う場合に大きなメリットになります。
退職後に生活を大きく圧迫する税金・社会保険料は以下の4つです。
- 所得税
- 住民税
- 健康保険料
- 国民年金
退職後の生活を考える場合は、必ずこの4つを念頭に置きましょう。
具体的な利用例
前提条件の説明が終わりましたので、以下で具体的な利用について見ていきます。
今回は、独身のパターンで見ていきます。
実際の試算例(独身の場合)
前提条件は以下のとおりとします。それぞれの条件が何に影響するかを記載しておきます。
- R3.12.31に満30歳で自己都合退職(1991年12月1日生まれ)⇒ 給付日数と健康保険料
- 失業保険の申請はR4.2.1に行う ⇒ トータルの給付額
- 退職前年収400万(月給25万円 賞与年2回50万円ずつ)⇒ 失業保険、教育訓練支援給付金、健康保険料、住民税
- 東京都中央区在住 ⇒ 健康保険料、住民税
- 前年の社会保険料72万円(400万×18%)⇒ 健康保険料、住民税
- 失業保険・教育訓練支援給付金受給中は週20時間を超えない年98万円のアルバイトを行う ⇒ 生活費計算
- 社会保険の猶予・軽減・減免措置は受けない ⇒ 生活費計算
- 教育訓練支援給付金はR5.12.31まで受給する ⇒ 収入の計算
- 税金や社会保険料の細かな納税時期は勘案しない ⇒ 計算の詳細
これを基にして、可処分所得(=会社員時代の手取りの給料)を計算していきます。可処分所得は、収入から「税金・社会保険料」を引いた金額です。全て使っても法律で罰せられません。
①所得税
- R4年分 0円(令和4年分 所得0円)
- R5年分 0円(令和5年分 所得0円)
参考 所得税の計算ツール(給与所得控除は自身で計算)所得税 簡易計算ツール | ZEIMO
②住民税
- R4年分 163,500円(令和3年の所得で計算)
- R5年分 0円(令和4年の所得で計算)
参考 住民税の計算ツール 住民税の税額を自動計算できるサイト!全国1741市区町村の令和4年度料率に対応! (juuminzei.com)
③健康保険料
- R4年分 236,188円(令和3年の所得で計算)
- R5年分 41,400円(令和4年の所得で計算)
参考 国民健康保険計算機|全国の市区町村の国民健康保険料を自動計算できる (kokuho-keisan.com)
④国民年金
- R4年分 199,080円(16,590円×12か月)
- R5年分 199,080円(同上)
参考 令和4年度 月額国民年金保険料16,590円 国民年金保険料|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
支出を計算
- R4年分支出 ①+②+③+④=0円+163,500円+236,188円+199,080円=598,768円
- R5年分支出 ①+②+③+④=0円+0円+41,400円+199,080円=240,480円
①失業保険 待機満了R4.2.7 給付制限R4.2.8~R4.4.7 給付期間R4.4.8~R4.7.6
- R4年分 5,542円×90日=498,780円
- R5年分 0円
②教育訓練支援給付金 給付期間R4年分(R4.7.7~R4.12.31) R5年分(R5.1.1~R5.12.31)
- R4年分 4,433円×178日=789,074円
- R5年分 4,433円×365日=1,618,045円
③アルバイト R4・5年分ともに980,000円
収入を計算
- R4年分収入 ①+②+③=498,780円+789,074円+980,000円=2,267,854円
- R5年分収入 ①+②+③=0円+1,618,045円+980,000円=2,598,045円
なお、アルバイトが年間98万円の理由は、所得税・住民税がかからない金額だからです。
- R4年分 2,267,854円-598,768円=1,669,086円(1月あたり139,090円使える)
- R5年分 2,598,045円-240,480円=2,357,565円(1月あたり196,463円使える)
1年目は少し厳しいかもしれませんが、2年目は会社員時代と遜色ない金額になるのではないでしょうか。
今回の試算は社会保険料の猶予・軽減・免除制度を使用していませんので、使用した場合はもう少し可処分所得が増えます。
ただし、ここで気を付けなければいけない点を3点あげておきます。
- アルバイトで年98万円は、東京都の最低賃金から算定すると月76時間以上働く ⇒ 6.5時間×週3日=19.5時間/週(週20時間超えずに76時間働く例) 勉強しながらなのでけっこうしんどいです。
- 教育訓練支援給付金は欠席があるとその日の分は支給されない 上記の計算はフル出席の場合で行っています
- 学校に通うための経費、入学金等がかかる ⇒ 専門実践教育訓練給付から、入学金+受講料の50%(修了後追加で20%還付)の還付があるが、その他の教材費がかかることが多い。また、還付は先に受講料等を支払ってからになるので、貯金がないと厳しい。
家庭をお持ちの方
家庭をお持ちの方について、専門実践教育訓練給付を受けることはオススメできますが、退職して教育訓練支援給付金を受けることまではオススメできません。
独身の方に比べて、不確定要素が多すぎる+冒険しづらいからです。ただし、子どもが1人だけ、またはいない場合や、配偶者の方が働いているのであれば検討してみる価値はあると思います。
その場合は、以下の点に注意して試算してみてください。
- 社会保険はどうするのか 健康保険(扶養or国民健康保険)&年金(第一号or第三号)
- 配偶者の所得によっては社会保険料の猶予制度等が使用できない場合がある
- 子供の年齢、かかる学費等を試算しておく
今の生活状況、必要経費等を把握し、退職してまで学校に行くのか、夜間や通信ではダメなのかをしっかりと考えましょう。
まとめ
以上、国からの給付を受けながら、転職に有利な資格を取る方法について解説しました。
私のおすすめの「専門実践教育訓練給付+教育訓練支援給付金」の利用の仕方はこれです↓
入学後、失業保険は最速でもらいきって、その後は教育訓練支援給付をもらいながら週20時間未満アルバイトをして生計を維持しつつ、転職に生かせるスキルを取得して卒業と同時に就職する。
ご自身の状況や家計の状態によっては、在職しながら資格を取る方が有効な場合もあり、今回紹介したのはあくまでも私個人のおすすめで、全員に当てはまるものではありません。
しかし、フルタイムで仕事をしながら転職に生かせるスキルを身に着けるのはかなりの時間と労力が必要です。どうしても体力的に仕事を辞めないといけない場合が出てくるかもしれません。
そういったとき、今回の制度は心強いものになりますね。
まずは、自身の今後のキャリアについてしっかりと考え、家計の状況についてもしっかりと把握しておきましょう。転職に有効なスキルを身に着け、人生100年時代を上手に泳ぎ切れるよう応援しています!
最後までご覧いただきありがとうございました。
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