転職して給料が下がった方必見!ハローワークからもらえる就業促進定着手当について

雇用保険制度

※ この記事で解説する手当は、ハローワークで失業保険の申請をした後に就職が決まった方が対象です。

この記事の想定読者

  • 今現在転職を考えている方
  • 転職後の給料が下がりそうな方(アルバイト・時短勤務など)
  • 就業促進定着手当の制度について知りたい方

転職先の給料が前の会社よりも少ないとき、ハローワークから「就業促進定着手当」という給付金がもらえます。

その対象者は以下の3つの条件に当てはまる方

対象者の条件
  • 再就職手当をもらっている
  • 転職後、同じ会社で6か月以上雇用されている
  • 転職後6か月間の賃金日額が転職前よりも下がっている

もらえる金額の計算方法は以下のとおり

(転職最終6か月間の賃金日額-転職最初の6か月間の賃金日額)×転職後6か月間の働いた日数

例 前職賃金日額8,000円 転職後賃金日額6,000円 働いた日数120日 の場合

(8,000円-6,000円)×120日=240,000円

この記事では、

  • 他にやりたいことがあり、その間アルバイトで食いつなぎたい
  • 介護や育児などで一時的に時短勤務がしたい

などの理由で給料が下がる転職を考えている方や、転職して給料が下がってしまった方に向けて「就業促進定着手当」の制度や申請方法を解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓

雇用保険に関する業務取扱要領(令和5年8月1日以降) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

就業促進定着手当とは

「就業促進定着手当」とは、「再就職手当」の支給を受けた人が転職先で6か月以上雇用され、その6か月間の給料が転職前の6か月間の給料を下回るとき、その差額分が支給される制度です。

ファスタ
ファスタ

就業促進定着手当は、失業保険を申請した後に就職した人のみ対象になります。

就業促進定着手当の対象者になる条件

就業促進定着手当の対象者になる条件は以下の3つ

対象者の条件
  • 再就職手当をもらっている
  • 転職後、同じ会社で6か月以上雇用されている
  • 転職後6か月間の賃金日額が転職前よりも下がっている

参考 雇用保険業務取扱要領 57262

再就職手当をもらっている

1つ目の条件は、「再就職手当」をもらっていることです。「再就職手当」とは、失業保険を申請後、早期で転職先が決まったときに支給される手当です。

失業保険の申請後に転職先が決まった方は、ハローワークへ就職の申告に行き「再就職手当」の案内を受けましょう。

ファスタ
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失業保険の申請前に就職が決まっている場合は、再就職手当の対象になりません。

再就職手当とは、申請方法や必要な書類については以下の記事を参考にしてください↓

転職後、同じ会社で6か月以上雇用されている

2つ目の条件は、「再就職手当」の支給を受けてから、6か月以上同じ会社で雇用され続けることです。ここでいう「雇用」とは、「雇用保険の被保険者になっている」という意味です。

雇用保険の被保険者になる条件は以下の2つ

  • 働く時間が週20時間以上
  • 通算31日以上の雇用見込みあり

正社員であればほぼ確実に雇用保険の被保険者になります。パートやアルバイトであっても、上記の条件を満たせば雇用保険の被保険者になります。自身が雇用保険の対象になっているかわからない方は、会社の総務・人事担当の方に聞くか、ハローワークの窓口で聞いてみてください。

なお、公務員の方は雇用保険の被保険者にはなれませんが、例外として「就業促進定着手当」の申請が可能です。

参考 雇用保険業務取扱要領 57262(2)ロ(ニ)

ファスタ
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公務員への再就職でも、再就職手当・就業促進定着手当のどちらも対象になれます。

雇用保険の加入対象者についての詳細は、以下の記事を参考にしてください↓

転職後6か月間の賃金日額が転職前よりも下がっている

3つ目の条件は、転職後最初の6か月間の給料の1日あたりの金額が、転職前最終6か月間の給料の1日あたりの金額下回っていることです。

転職後最初の6か月間の給料の1日あたりの金額は、所定の計算方法があり、詳細な計算方法については後述します。ざっくり「6か月間の給料」÷「実際に働いた日数」ぐらいで計算した金額と考えてください。

転職前最終6か月間の給料の1日あたりの金額は、「雇用保険受給資格者証」で確認できます。雇用保険受給資格者証の第1面14欄「離職時の賃金日額」を確認してください。

就業促進定着手当の計算方法

就業促進定着手当の計算式は以下のとおり。

(転職最終6か月間の賃金日額-転職最初の6か月間の賃金日額)×転職後6か月間の働いた日数

ファスタ
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  • 転職前最終6か月間の賃金日額
  • 転職後最初6か月間の賃金日額
  • 転職後6か月間の働いた日数

それぞれの具体的な計算方法を見ていきます

転職前最終6か月間の賃金日額

転職前最終6か月間の賃金日額は、雇用保険受給資格者証の第1面14欄「離職時の賃金日額」で確認できます。

なお、この賃金日額には上限・下限があります。上限を超えているときは上限金額になり、下限を下回っているときは下限金額になります。

上限(令和4年8月1日時点)
  • 離職時の年齢 30歳未満 13,670円(月収換算40万円程度)
  • 離職時の年齢 30~45歳未満 15,190円(月収換算45万円程度)
  • 離職時の年齢 45~60歳未満 16,710円(月収換算50万円程度)
  • 離職時の年齢 60~65歳未満 15,950円(月収換算48万円程度)
下限(令和4年8月1日時点)
  • 全年齢共通 2,657円(月収換算8万円程度)

例 転職前の賃金日額が20,000円 転職後の賃金日額が15,000円  年齢40歳 働いた日数120日 の場合

15,190円-15,000円)×120日 = 22,800円 になる

賃金日額の計算方法は、離職日から6か月間さかのぼり、その間に支払われた賃金額を足し、180日or働いた日数×0.7 で割ったどちらか高い方の金額になります。

このとき、賃金額の計算に入る手当と入らない手当があり、ざっくりと分けると以下の区別になります。

計算に入る手当
  • 住宅手当
  • 通勤手当
  • 日・宿直手当
  • 有給休暇日に支払われる給与
計算に入らない手当
  • 賞与・ボーナス
  • 傷病手当金
  • お客さんからもらうチップ
  • 解雇予告手当
  • 退職金

代表的な例を記載しましたが、この他にも計算に入る手当と入らない手当があります。

手当の種類によっては、条件付きで計算に入るものがあり、非常に計算がややこしいです。基本戦略としては、金額の計算はハローワークに任せ、どうしても金額に納得がいかないときに窓口で確認しましょう。

もっと自分で細かく確認したい!

ファスタ
ファスタ

そういう方は、雇用保険事務取扱要領の50451-50504の箇所を見てみてください。

(難解な文章なので自分での計算はオススメしません。)

転職後最初の6か月間の賃金日額

転職してから6か月間の給料を足して、「180日」or「働いた日数×0.7」で割ったどちらか高い方の金額になります。ここでも計算に入る手当と入らない手当があり、考え方は「離職前6か月間の賃金日額」と同じです。

また、入社日が給料締め日の途中のときは、入社月を除いた最初の6か月間の給料から計算します

転職後6か月間の働いた日数

転職後6か月間の働いた日数になります。厳密に言うと「給料の支払い基礎となった日数」になり、純粋に働いた日数とは違う場合もあります。

ファスタ
ファスタ

「実際に働いた日数」と、「計算で用いる日数」が異なるのはかなりレアケースです。

「実際に働いた日数」=「計算で用いる日数」と考えて大丈夫です。

なお、これについても、入社日が給料締め日の途中のときは、入社月を除いた最初の6か月間の働いた日数から計算します

支給金額の上限

金額の計算方法がわかったよ!これで計算すると…

うわ!100万円ももらえるのか!やった~!!

ファスタ
ファスタ

ちょっと待って!支給金額には上限があります。

「就業促進定着手当」には支給金額の上限があり、それは 賃金日額×支給残日数×40%(又は30%) です。

文字にすると少しわかりづらいのですが、「就業促進定着手当」の支給金額の上限は、就職日の前日まで支払った失業保険の残日数から「再就職手当」を支払った残りの金額になります。

「就業促進定着手当」の上限

= 所定給付日数-就職日の前日までの失業保険-再就職手当

参考 雇用保険業務取扱要領 57264(4)

例 所定給付日数90日 基本手当日額5,000円 給付開始から10日後の就職の場合

  • 失業保険 10日×5,000円 = 50,000円
  • 再就職手当 80日×70%×5,000円 = 280,000円

就業促進定着手当の支給金額の上限は、

(90日(所定給付日数)-10日(就職日前日までの失業保険)-56日(再就職手当))× 5,000円 = 120,000円

ファスタ
ファスタ

失業状態が続いた場合にもらえたはずの、所定給付日数の全額は超えない

といことです。

対象にならない人

制度や計算方法についてはなんとなくわかったよ!でも疑問なんだけど、対象にならない人もいるの?

ファスタ
ファスタ

もちろんいますよ。少し特殊事例ですが…

対象者にならないよくある例は以下の4ケースです。

  • 自営業を開始した人
  • 前職給与が高すぎるor低すぎる人
  • 転職して6か月経つ前に辞めた人
  • 海外の法人に再就職した人

自営業を開始した人

自営業を開始して「再就職手当」をもらった人は「就業促進定着手当」の支給対象になりません。「就業促進定着手当」の受給条件である「雇用されること」の条件を満たさないからです。ここで気をつけたいのは、自身は雇用されていると思っていたが、実際は業務委託契約になっている場合です。

この事例がよくあったのは以下の業種

  • 生命保険の募集人
  • 運送業

契約書をもらうときに、その題名が「雇用契約書」になっているか確認をしましょう。これが「業務委託契約書」の場合は就業促進定着手当の対象になりません

ファスタ
ファスタ

この事例、実際にけっこうあったのでしっかり確認しましょう。

契約書の発行については法的な義務はありませんが、労働契約の締結時には会社はその重要な内容について労働者に書面で提示する必要があります。(労働基準法第15条)

「働く条件についての通知」は働き始める前に必ずもらうようにしましょう。

参考 厚生労働省 人を雇うときのルール|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

前職給与が高すぎるor低すぎる人

「就業促進定着手当」の支給金額の計算には転職前の最後の6か月間の給料の1日分の金額を使用しますが、それには上限と下限があります。(毎年8月1日に改定)

上限(令和4年8月1日時点)
  • 離職時の年齢 30歳未満 13,670円(月収換算40万円程度)
  • 離職時の年齢 30~45歳未満 15,190円(月収換算45万円程度)
  • 離職時の年齢 45~60歳未満 16,710円(月収換算50万円程度)
  • 離職時の年齢 60~65歳未満 15,950円(月収換算48万円程度)
下限(令和4年8月1日時点)
  • 全年齢共通 2,657円(月収換算8万円程度)
前職給料が高すぎる↑人の例

年齢36歳 前職日額20,000円(月収60万円) 転職後日額16,000円(月収48万円)

この場合は前職日額が上限15,190円を超えているため、「就業促進定着手当」の計算をするときの前職の賃金日額が15,190円になります。

計算式 15,190円(前職)-16,000円(転職後)<0

転職後の賃金日額が前職の賃金日額を上回るため、支給の対象になりません

前職給料が低すぎる↓人の例

前職日額2,500円(月収7.5万円) 転職後日額2,000円(月収6万円)

この場合、前職賃金日額も転職後賃金日額も下限の2,657円を下回っているため、どちらも下限の2,657円になります。

計算式 2,657円(前職)-2,657円(転職後)=0

前職から給料が下がっていないとみなされるので、支給の対象になりません

転職して6か月経つ前に辞めた人

転職して6か月経つ前に辞めた人は支給の対象になりません

注意したいのは、ここで言う「辞めた人」というのは「雇用保険の被保険者でなくなった人」ということです。

同じ会社で6か月以上働き続けていたとしても、以下の事例では支給対象者ではなくなる場合があります。

  • 働く時間が週20時間未満になる
  • 会社の役員に就任する
  • 系列の会社へ出向する

いずれも、一度は雇用保険の被保険者ではなくなる可能性があるからです。

(系列会社への出向だけは、そのまま元の会社で雇用保険の被保険者になり続ける可能性があります)

海外の法人に再就職した人

海外法人に就職した人も支給対象ではなくなります

これは「雇用されている」=「雇用保険の被保険者である」ことの条件を満たさないからです。

ただし、日本法人の海外支社に就職する場合は雇用保険に加入できる場合がありますので、自身がどちらに当たるかは会社の総務・人事担当者かハローワークの窓口で確認しましょう。

申請方法

再就職後6か月以上経ってから、再就職手当をもらったハローワークへ必要書類を提出することで申請します。

このときの提出方法は郵送でも窓口に持って行くでもどちらでも大丈夫です。

必要書類
  • 就業促進定着手当支給申請書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 転職後6か月間の出勤簿の写し
  • 転職後6か月間の給与明細又は賃金台帳の写し

申請期限

再就職後6か月以上経過した日の翌日から2か月以内が申請の期限になります。

2か月しかないの!?急がないと~!!

ファスタ
ファスタ

焦らなくても大丈夫です。

「就業促進定着手当」などの就職促進給付の申請期限は、申請できるときから2年間あります。

「就業促進定着手当」であれば、再就職後6か月以上経過した日の翌日から2年間が申請期限になります。

申請にあたっての必要書類には会社の証明が必要なものがありますが、あまりにも申請が遅すぎると会社が証明できなくなる場合もあります。申請はなるべく早くに済ませましょう。

参考 雇用保険の給付金の申請期限について ハローワーク新宿 001353947.pdf (mhlw.go.jp)

必要書類

申請にあたっての必要書類は以下の4つ。

必要書類
  • 就業促進定着手当支給申請書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 転職後6か月間の出勤簿の写し
  • 転職後6か月間の給与明細又は賃金台帳の写し

就業促進定着手当支給申請書

ハローワークへ「再就職手当」を申請し、支給の決定がされると以下の3つの書類が送られてきます。

  • 再就職手当の支給決定通知書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 就業促進定着手当支給申請書

このうちの「雇用保険受給資格者証」と「就業促進定着手当支給申請書」が「就業促進定着手当」の申請に必要になります。無くさないようにしっかりと保管しておきましょう。

この「就業促進定着手当支給申請書」は自身で記入するところと会社に証明してもらうところがあります。

書き方については以下のURLを参考にしてください。

わかりやすい就業促進定着手当支給申請書の書き方・記入例|転職Hacks (ten-navi.com)

雇用保険受給資格者証

これは前出のとおり「再就職手当」の申請後、ハローワークから送り返されます。

「就業促進定着手当」の申請以外でも、役所などに失業期間の証明としてコピーを提出することもあります。

ファスタ
ファスタ

もう使わないだろうと思って、捨てたり無くしてしまう方が非常に多いです。

必ず大切に保管しておきましょう。

再発行する場合は

  • 本人確認書類
  • 写真1枚

この2つを持ってハローワークの窓口に行ってください。

転職後6か月間の各種証明書類

会社に準備してもらう証明書類が以下の2つあります。

  • 転職後6か月間の出勤簿の写し
  • 転職後6か月間の給与明細又は賃金台帳の写し

「就業促進定着手当支給申請書」の証明を会社に依頼するときに一緒に依頼しておきましょう。

まとめ

以上、転職して給料が下がってしまった場合にもらえる「就業促進定着手当」について解説しました。

まとめると以下のとおり

就業促進定着手当の対象者の条件は以下の3つ

対象者の条件
  • 再就職手当をもらっている
  • 転職後、同じ会社で6か月以上雇用されている
  • 転職後6か月間の賃金日額が転職前よりも下がっている

金額の計算方法は以下のとおり

(転職前最終6か月間の賃金日額-転職後最初の6か月間の賃金日額)×転職後6か月間の働いた日数

申請方法は、以下の必要書類を窓口又は郵送にてハローワークへ提出。

必要書類
  • 就業促進定着手当支給申請書
  • 雇用保険受給資格者証
  • 転職後6か月間の出勤簿の写し
  • 転職後6か月間の給与明細又は賃金台帳の写し

給料の下がる転職について、基本的にはオススメしません。しかし、自身のやりたいことや家庭状況によって、一時的に給料が下がる転職が必要になる場合もあります。そういったときは、就業促進定着手当制度を活用し、生活の安定を図りましょう。

実りある転職になるよう祈っております。最後までご覧いただきありがとうございました。

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