この記事の想定読者
- 再就職手当の受給条件を詳しく知りたい方
- 自身が再就職手当の対象になるか知りたい方
失業保険申請後に早期就職が決まると、再就職手当の対象になる可能性があります。再就職手当は、就職日前日の時点で残っている失業保険の総額から、60~70%分を一括で受給出来る制度です。
再就職手当の対象になるには、以下の8つの条件を全て満たす必要があります。
- 待期期間満了後の就職・事業開始である
- 基本手当の支給残日数が3分の1以上残っている
- 離職前の会社・関連企業への就職では無い
- (給付制限がある場合)待期期間満了後の1ヶ月はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職である
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 再就職先で雇用保険に加入する
- 過去3年以内に再就職手当をもらっていない
- 失業保険の申請前から内定がある会社への就職では無い
この8つの条件から、自身が再就職手当の対象になるかを確認する、簡単チェックは以下のとおり。自身の回答が全て「はい」であれば、ほぼ確実に再就職手当の対象になります。
この記事では、再就職手当の受給条件について、以下の3点から解説します。
- 再就職手当とは
- 再就職手当の8つの受給条件の詳細
- 自身が対象になるか確認する簡単チェック
ぜひ最後までご覧ください
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
再就職手当とは
再就職手当とは、失業保険の受給者が早期に就職が決まった場合に支給される、「就職促進給付」と呼ばれる給付金です。就職日前日の時点で残っている失業保険の総額から、60~70%を一括で受給することが出来ます。
再就職手当の、受給出来る金額の計算方法・申請方法についての詳細は、以下の記事を参考にしてください↓
再就職手当の8つの受給条件
再就職手当の対象になるには、以下の8つの受給条件を全て満たす必要があります。
- 待期期間満了後の就職・事業開始である
- 基本手当の支給残日数が3分の1以上残っている
- 離職前の会社・関連企業への就職では無い
- (給付制限がある場合)待期期間満了後の1ヶ月はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職である
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 再就職先で雇用保険に加入する
- 過去3年以内に再就職手当をもらっていない
- 失業保険の申請前から内定がある会社への就職では無い
参考 厚生労働省 再就職手当のご案内 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf 雇用保険業務取扱要領 57052(2)
以下で、8つの条件について1つずつ確認します。
簡単なチェック質問を記載しています。
質問の答えが「はい」であれば、その条件はほぼクリアしていると思ってください。
個人事業・フリーランスで就職を考えている方は、以下の記事を参考にしてください↓
待期期間満了後の就職・事業開始である
再就職手当の対象になるには、待期期間が満了してからの就職・事業開始である必要があります。待期期間とは、失業保険を申請してから、最初の7日間の失業状態を確認する期間です。この待期期間7日間の失業状態が確認出来なければ、失業保険・再就職手当はともに支払いの対象になりません。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
失業保険を申請してから、待期期間の7日間が経過する前に就職・事業開始すると、何の給付もありません。
待期期間中にアルバイトすると待期期間が延びる
待期期間中にアルバイトをすると、待期期間が延びる可能性があります。待期期間中でも、週20時間未満であればアルバイトは可能です。ただし、働いた日数分待期期間が延びてしまう可能性があります。再就職手当受給のために早期就職を目指す場合、待期期間中のアルバイトは避けた方が無難です。
再就職手当を狙うのであれば、失業保険申請後、最初の7日間は仕事探しに全集中しましょう。
すでにアルバイトを始めてしまっている方については、以下の待期期間中のアルバイトをした場合の記事を参考にしてください↓
就職日は雇用開始日
待期期間中の就職は再就職手当の対象になりませんが、ここで言う「就職日」は「雇用開始日」です。「就職が決まった日」ではなく、「仕事を始める日」が就職日になるということです。自身の雇用開始日がいつからになるかは、雇用契約書に記載されています。就職が決まったときは、就職先から雇用契約書を交付してもらい、必ず雇用契約の開始日を確認しておきましょう。
「内定日=就職日」ではない点がポイントです。
例
- 失業保険申請日 4月1日
- 待期期間満了日 4月7日
- 内定日 4月5日
- 雇用開始日 4月8日
⇒ 雇用開始日が待期期間満了日以降のため、再就職手当の対象になる。
基本手当の支給残日数が3分の1以上残っている
再就職手当の対象になるには、就職日時点での支給残日数が、所定給付日数の3分の1日以上ある必要があります。受け取れる失業保険の日数には上限があり、この上限を所定給付日数と言います。
所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間・離職理由・離職時の年齢の3つの要素によって決まり、自身の所定給付日数については、雇用保険受給資格者証の第一面19欄で確認してください。
失業保険は、就職日の前日分まで支払われます。所定給付日数から、失業保険として支払われた日数分を差し引いた支給残日数が、所定給付日数の3分の1日以上残っていないと再就職手当の対象になりません。
支給残日数 > 所定給付日数÷3 でないと、再就職手当の対象になりません。
支給残日数の計算の仕方
支給残日数の計算方法は以下のとおり。
失業保険は、失業状態が確認できた期間分を分割で支払い、所定給付日数から、支払われた失業保険の日数分が差し引かれていきます。就職日の前日まで失業保険を支払い、残った日数が「支給残日数」になります。
支給残日数は再就職手当の金額計算にも使用する
上記で計算した支給残日数は、再就職手当の金額計算にも使用します。
再就職手当の金額は、以下の式で計算されます。
支給率は60%または70%で計算されますが、支給残日数が所定給付日数の3分の2日以上であれば70%、3分の2日未満であれば60%になります。
離職前の会社・関連企業への就職では無い
再就職手当の対象になるには、「離職前の会社」または「離職前の会社の関連会社」以外への就職である必要があります。「離職前の会社」は、失業保険を受給する直前に離職した会社です。自身の「離職前の会社」は、雇用保険受給資格者証の第一面22欄で確認出来ます。
離職前の会社・関連会社への就職は、原則再就職手当の対象になりませんが、以下の「特別な事情」に該当する場合は、関連会社への就職でも再就職手当の対象になる可能性があります。
- 内定時点では関連会社では無かったが、その後関連会社になった
- 関連会社がハローワークに常時求人を出している
- 複数回ハローワーク窓口で職業相談を行い、熱心に求職活動を行っていた
- 技術性・専門性の強い職種への再就職である
参考 雇用保険業務取扱要領 57052(2)イの(ハ)のd
最終的な判断は管轄ハローワークで行います。確認してみてください。
なお、離職前の会社への就職は、どんな理由があろうと再就職手当の対象にはなりません。
関連会社の判断
離職前の会社の関連会社に該当するかは、以下の基準で判断します。
- 資本金の50%以上の出資がある(いわゆる親会社・子会社の関係)
- 従業員数のおおむね30%以上の人的交流がある
- 年間生産額または売上高の50%以上の取引がある
- (離職前事業所が倒産・廃止しているとき)資本金の50%以上の出資者が同じである
参考 雇用保険業務取扱要領57052(2)イの(ハ)
詳細な判断については、管轄のハローワークで確認してください。
二つ前の会社への就職は対象になる
離職前の会社への再就職は再就職手当の対象になりませんが、二つ以上前の会社への就職は再就職手当の対象になります。
例
- A社 在籍期間 2020年4月~2021年3月
- B社 在籍期間 2021年4月~2022年3月
- C社 在籍期間 2022年4月~2024年3月
C社を退職して失業保険を申請した場合
- C社への再就職は再就職手当の対象にならない
- A・B社への再就職は再就職手当の対象になる
対象にならないのは、雇用保険受給資格者証の第一面22欄に記載された会社と、その関連会社に就職した場合だけです。
同じ派遣会社を利用しての再就職は対象にならない
離職前の派遣会社と、同じ派遣会社を利用しての再就職は、再就職手当の対象になりません。派遣先で働く会社が違ったとしても、派遣元の会社が同じであれば、再就職手当の対象にはなりません。離職前と再就職後で、雇用契約を結ぶ会社が同じになるからです。
逆に、派遣先が同じでも、派遣元の会社が違う場合は再就職手当の対象になります。
待期期間満了後の1ヶ月はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職である
再就職手当の対象になるには、給付制限の最初の1ヶ月間は、ハローワークまたは民間職業紹介会社からの紹介による就職である必要があります。これは、給付制限がかかる方のみが対象になる条件です。給付制限の対象にならない方は、この条件は関係ありません。
給付制限とは、離職理由が自己都合退職・懲戒解雇退職の場合にかかる、一定期間給付の対象にならない制度です。
給付制限期間の最初の1ヶ月間の就職については、以下の2つのどちらかの機関による紹介就職でないと、再就職手当の対象になりません。
- ハローワーク
- 民間職業紹介会社
なお、給付制限の最初の1ヶ月間を過ぎた後は、自身で見つけた就職先でも再就職手当の対象になります。
ハローワークの紹介就職に該当するには
ハローワークの紹介就職に該当するには、ハローワーク窓口で紹介状の発行が必要です。
ハローワークの求人に応募するには、以下の3つの方法があります。
- 窓口で紹介状の発行を受けて応募
- 求職者マイページからオンライン自主応募
- 求人票に記載のある連絡先に直接連絡して応募
「窓口で紹介状の発行を受けて応募」以外の応募は、ハローワークの紹介就職に該当しません。
ハローワークの紹介就職を希望する方は、窓口で紹介状の発行を受けてから応募しましょう。
民間職業紹介会社の紹介就職に該当するには
民間職業紹介会社の紹介就職に該当するには、転職エージェントからの紹介が必要です。転職エージェントとは、民間職業紹介会社に所属する、企業と個人をマッチングする雇用契約の仲介者です。
転職エージェントが在籍する、民間職業紹介の代表的な会社は以下の3つ。
- リクルートエージェント
- マイナビエージェント
- デューダエージェント
民間職業紹介会社のサービスを利用し、転職エージェントから紹介を受けて就職することで、民間職業紹介会社の紹介就職に該当します。
民間の求人サイトを閲覧し、自身で応募した場合は紹介就職に該当しません。
注意してください。
1年を超えて勤務することが確実である
再就職手当の対象になるには、雇用契約の内容から判断して、1年を超えて勤務することが確実である必要があります。正社員としての採用や、雇用期間が定まっていないパート・アルバイトでの採用は、この条件を満たします。
派遣社員・契約社員・雇用期間が定まっているパート・アルバイトとしての採用は、以下の2つの条件を満たすと、「1年を超えて勤務する見込みあり」と判断されます(再就職手当の対象になる)。
- 契約更新される見込みがある
- 契約更新されると1年を超えて勤務が可能になる
契約更新見込みは、契約更新に条件が付いているかいないかで決まります。契約更新に特段の条件が付いていなければ、「契約更新見込みあり」と判断されます。契約更新にあたって達成すべき目標・ノルマが存在し、達成できなければ契約を更新しない、のように契約更新に条件が付いている場合は、「契約更新見込みなし」と判断されます。
面接時に契約更新の条件について確認し、就職を決める前に、ハローワークの窓口で更新可能性を判断してもらうのがオススメです。
なお、以下の2つの職種については、1年を超えて勤務することが確実とみなされず、再就職手当の対象にはなりません。
- 登録型派遣労働者
- 損害保険会社の代理店研修生
再就職先で雇用保険に加入する
再就職手当の対象になるには、所定労働時間が週20時間以上で、再就職先の会社で雇用保険に加入することが見込まれる必要があります。雇用保険の加入対象者に当たるかは、労働時間によって決まります。労働時間が、週単位であれば20時間以上、月単位であれば87時間以上の場合、雇用保険の加入対象になります。
雇用契約前に、自身の労働時間が何時間になるか、確認しておきましょう。
なお、公務員は雇用保険の加入対象になりませんが、雇用保険業務取扱要領では、特例として公務員への就職でも再就職手当の対象になるとしています。
参考 雇用保険業務取扱要領57052(2)イの(チ)の①
雇用保険の加入対象者とは、加入対象にならない人については、以下の記事を参考にしてください↓
過去3年以内に再就職手当をもらっていない
再就職手当の対象になるには、過去3年間の就職に対して、再就職手当をもらっていないことが必要です。ここでの「過去3年間」は「就職日」を基準としています。
例
- 就職日 令和6年5月1日
- 前回就職日 令和3年4月1日 前回再就職手当受給日 令和3年5月1日
⇒ 前回の再就職手当の対象になった就職日から3年以上経っており、再就職手当の対象になる。
「過去3年間に再就職手当をもらっていないこと」の条件は、短期間の離転職を防ぐためにあります。失業保険は、1年以上の雇用保険加入期間があれば受給対象になるため、「過去3年」の条件が無ければ、離転職を繰り返すことで過大な再就職手当を受け取れてしまいます。
こういった理由から、不正防止のために「過去3年間」の条件が設定されています。
失業保険の申請前から内定がある会社への就職では無い
再就職手当の対象になるには、失業保険の申請後に内定をもらった会社へ就職する必要があります。ここでは、会社に「応募した日」ではなく、「内定をもらった日」が基準になります。
例
- 応募した日 令和6年4月1日
- 失業保険申請日 令和6年4月5日
- 内定日 令和6年4月7日
内定をもらった日が失業保険申請後のため、再就職手当の対象になります。
※ ただし、条件1の「待期期間満了後の就職であること」と、条件4の「給付制限がある場合最初の1ヶ月は紹介就職であること」には注意が必要です。
そもそも、失業保険申請前にすでに内定がある場合、原則は失業保険の申請が出来ません。ただし、すでに内定をもらっている会社以外への就職を目指す場合は、失業保険の申請が可能です。また、その場合に失業保険の申請後に新たに別会社から内定をもらい、新たに内定をもらった会社に就職する場合は、再就職手当の対象になる可能性があります。
「すでに内定はあるが、その会社でいいのか決めかねている」ときは、失業保険の申請をしておくといいですね。
まとめ(締め)
以上、再就職手当の受給条件について、以下の3点から解説しました。
- 再就職手当とは
- 再就職手当の8つの受給条件の詳細
- 自身が対象になるか確認する簡単チェック
まとめると、以下のとおり。
再就職手当を受給するためには、以下の8つの条件を満たす必要があります。
- 待期期間満了後の就職・事業開始である
- 基本手当の支給残日数が3分の1以上残っている
- 離職前の会社・関連企業への就職では無い
- (給付制限がある場合)待期期間満了後の1ヶ月はハローワークか職業紹介事業者の紹介による就職である
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 再就職先で雇用保険に加入する
- 過去3年以内に再就職手当をもらっていない
- 失業保険の申請前から内定がある会社への就職では無い
この8つの条件から、自身が対象になるかを確認する簡単チェックは以下のとおり。
再就職手当は、早期就職を勧奨するとてもよい制度です。上手に利用して、生活を安定させながら再就職を目指しましょう。実りある転職になるよう祈っております。 最後までご覧いただきありがとうございました。
コメント