パートナーと同棲生活を始めるために遠方に引っ越し、会社を退職する場合は失業保険の申請が出来るのでしょうか。また、その理由で退職した場合に失業保険を有利に受給できる方法があるのでしょうか。
結論から言うと、同棲開始に伴う引っ越しで退職をしても、失業保険は受給可能です。同棲開始に伴う引っ越し退職は、基本は自己都合退職として処理されていますが、以下の事情に当てはまる場合は特定理由離職者に該当するとして、離職理由が変更されます。
特定理由離職者に該当すると、以下の2つのメリットがあります。
- 2ヶ月の給付制限が無くなる(失業保険が早く受給できる)
- 国民健康保険料が減免される
同棲開始に伴う引っ越し退職で、特定理由離職者に該当するための手続きの流れは以下のとおり。
- 失業保険の申請に行く
- 申請時に特定理由離職者に該当する旨を申し出る
- 必要書類を確認し提出する
この記事では、同棲開始に伴う引っ越しで退職した場合の失業保険について、以下の3点から解説します。
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で失業保険は受給できるのか
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で特定理由離職者に該当するケース
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で特定理由離職者に該当する手続き方法
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
同棲開始の引っ越し退職でも失業保険はもらえる
同棲開始に伴う引っ越しで退職をしても、失業保険は受給出来ます。ただし、失業保険を受給するためには「失業状態」である必要があるので、引っ越し後は仕事探しを行う必要があります。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
以下に当てはまる場合は、「失業状態」であるとみなされず、失業保険の対象になりませんので注意してください。
- 週20時間以上の仕事を探さない・探せない
- 週20時間以上の仕事が見つかってもすぐには働けない・働かない
引っ越し作業が落ち着いてから失業保険を申請し、失業保険申請後は仕事探しに専念しましょう。
「失業状態」では無いのに失業保険の申請を行う。特定理由離職者に該当しない理由での退職なのに特定理由離職者に該当すると偽る。など、不正に失業保険の申請を行った場合は不正受給として処分されます。
失業保険の申請は、誠実に正しく、ありのままを申告してください。
不正受給として処分された場合はどうなるのか、詳細については以下の記事を参考にしてください↓
同棲開始の引っ越し退職で特定理由離職者になる方法
同棲開始に伴う引っ越しで退職した場合は、基本は自己都合退職になります。ただし、以下の事情があっての同棲開始に伴う引っ越しであれば、特定理由離職者になる可能性があります。
「同棲開始」による引っ越しは特定理由離職者になりませんが、「結婚予定がある」or「婚姻関係にある」と認められる場合は、特定理由離職者になる可能性があります。
参考 雇用保険業務取扱要領50305-2(5-2)ロの(ニ)(ホ)
特定理由離職者に該当すると、以下の2つのメリットがあります。
- 2ヶ月の給付制限が無くなる(失業保険が早く受給できる)
- 国民健康保険料が減免される
自己都合退職の場合は、2ヶ月間の給付制限期間があります。給付制限期間がある場合は、失業保険の手続きをしてから実際に口座に初めてお金が入るまで3ヵ月近くかかります。給付制限が無くなるとこれが2ヶ月間短縮され、手続きから実際に口座にお金が入るまでの期間が1ヶ月程度になります。
退職後、配偶者や親族の社会保険の扶養に入る方以外は、国民健康保険に加入します。保険料の計算には前年の所得が使用されますが、特定理由離職者に該当する場合は減免制度の対象になり、前年の所得を30%まで圧縮して計算されます。
例 前年の所得300万円の方が特定理由離職者になった場合
⇒ 前年の所得を90万円として保険料を計算
※ 国民健康保険料の計算の詳細については、お住いの自治体のHPまたは窓口で確認してください。
特定理由離職者に該当して損になることはありませんので、該当する方は積極的に申し出ましょう。
※ 以下で解説するのは、あくまでも特定理由離職者になる「可能性」のあるケースです。最終的な判断は、自身が失業保険の申請をしたハローワークが行います。
結婚の予定がある
同棲開始に伴う引っ越しでも、結婚の予定があれば特定理由離職者になる可能性があります。雇用保険業務取扱要領上、「結婚に伴う転居」は特定理由離職者に該当します。結婚・同棲による引っ越し退職の取扱いを整理すると、以下になります。
- 結婚に伴う引っ越し ⇒ 特定理由離職者
- 同棲開始に伴う引っ越し ⇒ 特定理由離職者ではない
結婚に伴う引っ越しについて、雇用保険業務取扱要領上は「結婚の時期」について規定がありません。よって、なんらかの事情で結婚が遅れ、先に同棲を開始する場合でも、「結婚に伴う転居」とみなされて特定理由離職者になる可能性があります。
ただし、結婚が遅れる理由が正当であり、結婚を遅らせる期間については1~3ヵ月程度が目安になります。
例
- 親族の体調が悪く結婚の挨拶が出来ない
- 宗教上の理由で結婚出来る日が年に数回しかない
ちなみに、雇用保険業務取扱要領では「引っ越し時期」についての規定はあり、退職から引っ越しまでが概ね1ヶ月以内である必要があります。
事実上の婚姻関係がある
同棲開始に伴う引っ越しでも、事実上の婚姻関係があれば特定理由離職者になる可能性があります。雇用保険業務取扱要領上、「配偶者」と別居生活を続けることが難しくなり、引っ越して退職した場合は特定理由離職者になります。ここでの「配偶者」は、実際に入籍していなくても「事実上の婚姻関係」があれば認められます。
つまり、事実上の婚姻関係があるパートナー(⇒結婚してなくてもOK)と別居生活が困難になり同棲を開始する場合は、特定理由離職者に該当する可能性があります。
「事実上の婚姻関係」があるかの判断は各ハローワークで行いますが、一般的な基準は以下のとおり。
- 結婚式などの儀式を行っている
- 同居している(3年以上)
- 家計の財布が同一である
- 普段から契約書などに「妻」「夫」と記載している
- 周囲からも夫婦として扱われている
- 住民票上で同一世帯の届出をしている
参考 弁護士法人ALG&Associates
弁護士法人なかま法律事務所 https://nakama-rikon.jp/procedure/16573
この基準はあくまでも参考です。
当てはまっていないと絶対ダメ!というものではありません。
引っ越しによって「通勤が困難」になることが必要
結婚・同棲に伴う引っ越し退職で特定理由離職者に該当するためには、引っ越したことで「通勤が困難」になることが必要です。「通勤が困難」とは、以下のような状態を言います。
- 通常の交通機関を利用して移動時間が往復4時間以上かかる(乗り継ぎ含む)
- 交通機関の便が悪く通勤に著しい障害を与えるとき
移動時間が往復4時間以上かかる
引っ越し後の自宅から、退職前の会社までの通勤が片道2時間以上かかる場合です。通常の交通機関の利用を想定し、乗り継ぎ時間も含みます。グーグルマップやYahoo!路線図で検索し、片道の通勤時間が2時間を超えているか確認しましょう。追加料金のかかる急行電車などは通勤時間の計算対象外です。
※ 追加料金のかかる急行電車…あずさ・かいじ・くろしお・サンダーバードなど
なお、片道2時間以上かからない場合でも、ハローワークによっては認定される場合があります。片道2時間以上にギリギリ満たないときは、一度ハローワークに相談してみましょう。
交通機関の便が悪く通勤に著しい障害を与える
1本乗り過ごすと会社の始業に間に合わない場合や、終業後の電車では当日中に自宅に帰れなくなる場合などです。都市圏ではあまり見られませんが、通勤にバスや船などを利用する場合に該当することが多いです。
同棲開始の引っ越し退職で特定理由離職者になる手続き
引っ越しを理由に退職した場合は、失業保険申請時点では自己都合退職として処理されています。自己都合退職から特定理由離職者になるためには、所定の手続きを行う必要があり、手続きの流れは以下のとおり。
- 失業保険の申請に行く
- 申請時に特定理由離職者に該当する旨を申し出る
- 必要書類を確認し提出する
失業保険の申請に行く
退職後、会社から離職票が届き次第、ハローワークに失業保険の申請に行きましょう。失業保険の申請に必要な書類は以下のとおり。
- 離職票1.2
- マイナンバー確認書類(マイナンバーカード、マイナンバー入りの住民票など)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 本人名義の通帳orキャッシュカード
- 写真2枚(毎回の手続きにマイナンバーカードを提示で省略可)
離職票が会社から届かないときは、仮の手続きを進めることも可能です。
退職後2週間以上経っても届かない場合は、一度ハローワークに相談してみましょう。
失業保険を申請するためには、失業状態である必要があります。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
すでに週20時間以上で働いている、仕事を探さない・探せないは失業保険の対象になりませんので、ご注意ください。
失業保険の受給要件・申請時の持ち物についての詳細は、以下の各記事を参考にしてください↓
申請時に特定理由離職者に該当する旨を申し出る
失業保険の申請時に、窓口で離職理由の確認がありますので、このときに「引っ越しが理由で通勤が困難になり退職した」ことを申し出ましょう。申し出ると、引っ越しの理由を聞かれるので、前出の特定理由離職者に当てはまる理由(結婚予定があるetc…)を伝えてください。
引っ越し理由が特定理由離職者に該当する場合は、窓口の職員から追加で確認が必要な書類の説明があります。しっかりと説明を聞いておきましょう。
必要書類を確認し提出する
説明のあった必要書類を準備し、窓口に提出します。提出は後日で大丈夫ですが、あまり遅くなりすぎると失業保険の受給に影響が出てしまうので、なるべく早めに提出しましょう。どんな書類が必要になるのかについては、実際の引っ越し理由・ハローワークによって異なります。例として挙げられるのは以下の書類です。
- 賃貸借契約書(事実上の婚姻関係の証明)
- 預金通帳や各種契約書(事実上の婚姻関係の証明)
- 申立書(結婚予定・事実上の婚姻関係の証明)
自身の受給ハローワークの担当の説明をしっかりと聞き、準備しましょう。
準備できない書類がある場合は、理由を説明し、他の書類で代替できないか相談しましょう。
まとめ(締め)
以上、同棲開始に伴う引っ越しで退職した場合の失業保険について、以下の3点から解説しました。
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で失業保険は受給できるのか
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で特定理由離職者に該当するケース
- 同棲開始に伴う引っ越し退職で特定理由離職者に該当する手続き方法
まとめると以下のとおり。
同棲開始に伴う引っ越しで退職をしても、失業保険は受給可能です。ただし、失業保険申請後は「仕事探し」を行う必要があります。
同棲開始に伴う引っ越し退職は、基本は自己都合退職として処理されていますが、以下の事情に当てはまる場合は特定理由離職者に該当するとして、離職理由が変更されます。
特定理由離職者に該当すると、以下の2つのメリットがあります。
- 2ヶ月の給付制限が無くなる(失業保険が早く受給できる)
- 国民健康保険料が減免される
同棲開始に伴う引っ越し退職で、特定理由離職者に該当するための手続きの流れは以下のとおりです。
- 失業保険の申請に行く
- 申請時に特定理由離職者に該当する旨を申し出る
- 必要書類を確認し提出する
現行の日本の法制度上、同性間では結婚出来ませんが(2024年7月1日時点)、今回の内容は同性間でも対象になります。該当する方は積極的に申し出を行い、有利に手続きを進めていきましょう。
実りある転職になるよう祈っております。最後までお読みいただきありがとうございました。
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