- 雇用保険の加入対象になるのはどんな働き方か知りたい方
- 雇用保険制度・給付制度について知りたい方
- 雇用保険に加入した方がいいのかわからない方(労働者目線)
雇用保険は社会保険制度の一種です。加入対象者は、以下の条件に全て当てはまる方です。(令和6年度現在)
雇用保険に加入していると、以下の給付の対象になります。
- 求職者給付(失業保険等)
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
- 企業への助成金
ただし、加入には保険料の支払いが必要であり、保険料は「給料×保険料率」で計算され、会社と労働者の双方が負担します。保険料率は毎年度ごとに見直しがあり、最新の一般労働者負担の保険料率は0.55%です。(令和7年度)
この記事では、雇用保険の加入対象者・加入のメリットデメリットについて、労働者目線から以下の3点を解説します。
- 雇用保険の加入対象者はどんな人
- 雇用保険制度とは・各種給付制度について
- 雇用保険加入のメリットデメリット
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
雇用保険に関する業務取扱要領 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
ハローワークの利用方法や失業保険についての情報を発信しています。ハローワークでの仕事探しを検討している方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください↓
雇用保険の加入対象者とは

雇用保険の加入対象者は、会社の規模や従業員数にかかわらず以下の条件に全て当てはまる方です。

ざっくりまとめると、「1ヶ月以上の期間、週20時間以上で働いている方」です。
雇用保険法では、被保険者を「適用事業所で雇用されている方」としています。例外として「適用事業所で雇用されているが、雇用保険法の対象にならないケース」を雇用保険法第6条で定めており、雇用保険法第6条に一つでも当てはまれば雇用保険の加入対象になりません。
適用事業所とは、労働者が雇用される事業所のことで一人でも従業員がいれば適用事業所になります。※農林水産の一部事業を除く。つまり、今現在会社に雇用されている人は、会社の規模や従業員数に関係なく全員適用事業所で働いています。冒頭の条件さえ満たせば、アルバイト・パート・試用期間中などでも雇用保険の加入対象になります。
ただし、家族が経営している会社で働いている方や、会社の役員になっている方は「雇用されている」扱いにならず、原則雇用保険の加入対象になりません。例外的に加入対象になることもありますので、詳細はハローワークに確認してみましょう。
雇用保険制度について

雇用保険制度は、社会保険制度の一種です。
制度の目的は、「労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること」です。
雇用保険制度の目的をまとめると以下の2つ。
- 労働者の雇用の安定
- 労働者の生活の安定

同じ社会保険である「健康保険」と比べて考えると、
健康保険 病気・ケガの予防・回復
⇒ 雇用保険 失業状態の予防・回復
この「失業状態の回復(=就職)」「失業の予防」が制度の目的です。
この目的を達成するために、雇用保険では以下の事業に取り組んでいます。(雇用保険法第3条)
- 就職活動のサポート(=失業保険等)
- 労働者のスキルアップ(=教育訓練給付)
- 働けない事情の人に給付金(=雇用継続給付)
- 雇用安定の取り組みをしている企業に補助金(=助成金)
参考 ハローワークインターネットサービス 雇用保険制度の概要 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_summary.html

要は、労働者の雇用・生活を、お金で守っていこう。という制度です。
雇用保険の各種給付制度について

前出のとおり、雇用保険制度は「失業状態」の回復・予防を目的にしています。目的達成のため、雇用保険には以下の4種類の代表的な給付制度があります。
- 求職者給付(失業保険等)
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
- 企業への助成金
求職者給付(失業保険等)
求職者給付は、「失業者」に給付されます。雇用保険制度で一番有名な給付がこの求職者給付で、一般的には「失業保険」と呼ばれています。雇用保険に加入していた労働者が会社を退職し、失業状態である場合に支給される給付金です。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
失業等給付には、他に「就職促進給付」という制度があります。就職促進給付は、その名のとおり求職者の就職を促進する給付です。具体的には以下のような給付があります。
- 再就職手当 ⇒ 早期に就職した場合の給付金
- 就業促進定着手当 ⇒ 再就職先の給料が前職より低い場合の手当
- 移転費 ⇒ 再就職先が遠方の場合の引っ越し費用
- 広域求職活動費 ⇒ 遠方の選考試験を受験するための交通・宿泊費

いずれの制度も、支給されるためには事前に失業保険の申請を行う必要があります。
他の条件については、最寄り・管轄のハローワークで確認してください。
失業保険の申請については、以下の記事を参考にしてください↓
教育訓練給付
教育訓練給付は、「在職者」「失業者」に給付されます。雇用につながる資格・免許を取得するために受講した、スクール・教習所などの費用を、雇用保険から一部支給してもらえる制度です。
教育訓練給付の対象になるためには、受講する講座が「厚生労働大臣の指定」を受けている必要があり、指定を受けている教育訓練講座については、厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムから確認出来ます。教育訓練給付は現在3種類の制度があり、支給される受講費の割合は以下のとおりです。
- 一般教育訓練給付(受講費の20%)
- 特定一般教育訓練給付(受講費の40〜50%)
- 専門実践教育訓練給付(受講費の50~80%)

受講を希望する資格・試験の種類によって、利用できる制度が変わります。
制度ごとに手続きの流れも変わりますので、利用を希望する制度は事前に調べておきましょう。
参考 厚生労働省 教育訓練給付制度
一般教育訓練給付
受講開始日時点で雇用保険に3年以上加入している人(初めての給付の人は1年以上加入でOK)
受講費の20%(上限10万円)
- ITパスポート
- フォークリフト・クレーン免許など
- 講座を受講する
- 受講終了後、ハローワークで手続き
一般教育訓練給付の対象講座は、受講費用が10~20万円程度のものが多く、短期間の受講で資格・免許取得できるものが大半です。

一般教育訓練給付は手軽に申請出来るのが特徴です。
ぜひ利用してみてください。
一般教育訓練給付制度とは、対象者・申請方法・給付金額についての詳細は以下の記事を参考にしてください↓
特定一般教育訓練給付
受講開始日時点で雇用保険に3年以上加入している人(初めての給付の人は1年以上加入でOK)
受講費の40〜50%(上限25万円)
- 介護支援専門員
- 大型自動車第一種免許
- 特定行為研修
- 受講前にキャリアコンサルティングを受ける
- ハローワークで受講前手続き
- 講座を受講する
- 受講終了後、ハローワークで手続き
特定一般教育訓練給付は、他の教育訓練給付に比べて歴史が浅く、現状は対象講座が少なめです。また、対象講座は一般教育訓練給付と同じ資格・免許が多数あります。

一般教育訓練給付と比べると申請にひと手間かかりますが、その分費用負担してもらえる割合が高くなります。
該当の講座の受講を考えている方は、ぜひ利用してみてください。
特定一般教育訓練給付制度とは、対象者・申請方法・給付される金額の詳細については、以下の記事を参考にしてください↓
専門実践教育訓練給付
受講開始日時点で雇用保険に3年以上加入している人(初めての給付の人は2年以上加入でOK)
受講費の50~80%(上限192万円)
- 介護福祉士
- 看護師
- MBA
- 保育士
- 受講前にキャリアコンサルティングを受ける
- 受講前にハローワークで手続き
- 講座を受講する
- 半年に一度ハローワークで手続き(講座の受講期間により申請回数は変わる)
- 受講終了後、一定の条件を満たせばハローワークで追加の給付手続き
対象講座には、看護師・介護福祉士など2~3年通学が必要になるものがあります。資格・免許取得の難度も高く、かかる費用も大きくなります。

時間・お金をたくさん使います。しっかりと計画して利用しましょう。
参考 厚生労働省 専門実践教育訓練の指定講座を公表しました(令和7年4月1日時点)
離職した方が専門実践教育訓練給付を受けて講座を受講する場合、「教育訓練支援給付金」という給付を受けることが出来ます。教育訓練支援給付金については、以下の記事を参考にしてください↓
雇用継続給付
雇用継続給付は、在職者に給付されます。育児・介護により長期の休暇が必要な場合、育児・介護休業制度が利用出来ますが、育児・介護休業期間は無給です。この無給期間の生活保障として、育児・介護休業給付が存在します。また、60歳定年後に再雇用され、再雇用後の賃金が定年前より下がっていた場合、高年齢雇用継続給付という制度の対象になります。それぞれの制度についての詳細は、以下のURLから確認してください。
- 育児休業制度について 育児休業制度特設サイト(厚生労働省)
- 育児休業等給付について 育児休業等給付について(厚生労働省)
- 介護休業制度について 介護休業について(厚生労働省)
- 介護・高年齢雇用継続給付について 雇用継続給付(厚生労働省)
まとめると、雇用継続給付制度は以下の3種類です。
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 高年齢雇用継続給付

いずれも、「雇用の継続」を目的とした給付制度です。
このうち高年齢雇用継続給付については、定年年齢の引き上げに伴い制度として縮小傾向にあります。
企業への助成金
企業への助成金は、「企業」に給付されます。コロナ禍により、「雇用調整助成金」が有名になりました。助成金は大きく以下の3つに分けられます。
- 雇用維持・継続のための助成金(例 雇用調整助成金)
- 再就職・転職支援の助成金(例 特定求職者雇用開発助成金)
- 職場環境構築の助成金(例 キャリアアップ助成金)
参考 厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金

在職中に助成金と関わることはあまりありませんが、いずれの助成金も雇用安定・職場環境の向上に使われています
雇用保険加入のメリット・デメリット

雇用保険加入のメリット・デメリットは以下のとおりです。
雇用保険に加入することで、前出の各種給付制度が利用できます。ただし、加入にあたり保険料の支払いが必要になります。保険料は「給料×保険料率」で計算され、会社と労働者の双方が負担します。保険料率は毎年度ごとに見直しがあり、最新の労働者負担の保険料率は0.55%です。(令和7年度)
参考 厚生労働省 雇用保険料率について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

健康保険料や厚生年金保険料に比べると、格段に低い保険料ですね。
ちなみに、会社の負担する保険料率は0.9%です。(令和7年度)
なお、「農林水産・清酒製造・建設」事業の会社は、通常より負担割合が大きくなります。これらのメリットデメリットを踏まえると、雇用保険に加入する働き方にしようか迷っている方には、ぜひとも加入をオススメします。
雇用保険の対象についてのよくある質問

以下で、雇用保険制度のよくある質問をまとめています。参考にしてください。
他に加入対象にならない人はいる?
会社役員・同居の親族などは、原則加入対象になりません。ただし、労働者性が認められる場合は加入の対象になることもあります。労働者性の判断については、管轄のハローワークに確認してください。
参考 雇用保険業務取扱要領 20351(1)
扶養には入れない?
雇用保険制度に「扶養制度」はありません。加入条件に当てはまった本人だけが雇用保険に加入します。
手続きは誰がする?
雇用保険の加入・喪失、雇用継続給付・助成金の支給申請は事業主、失業保険・教育訓練の支給申請は労働者がそれぞれ行います。
健康保険や厚生年金の加入対象じゃないと言われたけど加入できる?
健康保険・厚生年金の加入対象でなくても、雇用保険の加入対象になることはあります。健康保険・厚生年金の加入条件と雇用保険の加入条件は違い、健康保険・厚生年金の加入条件の方が雇用保険の加入条件よりも厳しくなっています。
簡易的にまとめると、それぞれの加入条件は以下のとおりです。
雇用保険 | 健康保険・厚生年金 | |
労働時間 | 週20時間以上 | 週30時間以上 (一部事業所は20時間以上でも加入可) |
雇用見込み | 31日以上 | 2ヶ月以上 |
上限年齢 | なし | 75歳(健康保険)・70歳(厚生年金) |
まとめ(締め)
以上、雇用保険の加入対象者・加入のメリットデメリットについて、労働者目線から以下の3点を解説しました。
- 雇用保険の加入対象者はどんな人
- 雇用保険制度とは・各種給付制度について
- 雇用保険加入のメリットデメリット
まとめると以下のとおり。
雇用保険の加入対象者は、以下の条件に全て当てはまる方です。
雇用保険制度の目的は以下の2点。
- 労働者の雇用の安定
- 労働者の生活の安定
この目的を達成するために、以下の4種類の代表的な給付金があります。
- 求職者給付(失業保険等)
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
- 企業への助成金
雇用保険に加入すると、上記の給付制度の対象になりますが、保険料の支払いが必要になります。保険料は「給料×保険料率」で計算され、会社と労働者の双方が負担します。保険料率は毎年度ごとに見直しがあり、最新の労働者負担の保険料率は0.55%です。(令和7年度)
雇用保険は、労働者・企業双方にとっての保険です。在職中に利用できる制度もありますので、ぜひ利用してみてください。
実りある職業人生になるよう祈っております。最後までご覧いただきありがとうございました。
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