この記事の想定読者
- 失業保険受給中にアルバイトをしようと思っている方
- ハローワークで聞いたアルバイトの説明の復習をしたい方
- 収入が発生して不正受給になりたくない方
会社を退職して失業保険の申請をしてきたよ!
アルバイトについてハローワークの職員の説明を聞いたけど、理解できているか不安だ…
これから復習しましょう!
キーワードは失業状態・週20時間・1日4時間の3つです。
失業保険の申請に慣れておらず、失業保険受給中のアルバイトについて、窓口の職員から説明を聞いたけどいまいちよくわからなかった…という方に朗報です。
実は、ほとんどの方がよくわかっていません。
失業保険受給中のアルバイトについて、押さえておくべきキーワードは以下の3つ
この記事では、ハローワーク職員として5年以上働き、失業保険を取り扱う部門で筆頭職員として働いた経験もある筆者が、失業保険とアルバイトの関係について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の参考にしている「雇用保険業務取扱要領」については、以下のURLから確認できます↓
失業保険と失業状態
会社を辞めてきた!
すぐに働くつもりはないけど失業保険を申請しよう~
その状態だと失業保険の対象にならない可能性がありますよ。
失業保険を受給するためには、失業状態であることが必須の条件です。
失業状態とは、「自営業や週20時間以上の仕事をしておらず、週20時間以上の仕事を探しており、自分にあった仕事が見つかれば働ける状態」のことを言います。
失業状態にない場合は失業保険の対象になりません。(雇用保険法第4条第3項)
とはいえ、よっぽどのことが無い限り、
窓口で「失業状態ではない」とみなされることはありません。
以下の場合「失業状態ではない」とみなされ、失業保険の対象ではなくなります。
参考 雇用保険業務取扱要領 50102(2)受給資格の決定 51202(2)~51204(4)労働の意思・能力、職業に就くことが出来ない状態
上記を軽はずみに口にしないよう、自身の状態をしっかり考えて窓口で申請してください。ただし、実際は失業状態ではないのに、失業状態であるようにみせかけて申告し、失業保険を受給した(しようとした)場合は不正受給になります。必ずありのままの真実を申告してください。
週20時間以上働くと就職状態になる
失業保険受給中にアルバイトをしたいけど、働きすぎたらダメなんだよね?
週20時間以上働くと就職状態とみなされ、失業保険の対象外になります。
前出のとおり、失業保険を受給するためには失業状態であることが必要です。週20時間以上働いた場合は就職状態とみなされ、失業保険の対象外になります。働く時間が週20時間未満であれば、週20時間以上の仕事探しと並行することで「アルバイトの給料」+「失業保険」の2つを同時にもらうことが出来ます。ただし、その働く契約内容が雇用契約か業務委託契約かで、対応に多少の違いがあります。
- Q週20時間ちょうど働いた場合はどうなりますか?
- A
就職状態になり失業保険の対象外です。週20時間ピッタリは週20時間以上に含まれます。
アルバイト(雇用契約)で働く場合
雇用契約で週20時間以上働く場合は、働いた初日から就職状態となり、その日から失業保険の対象外になります。
週20時間以上の雇用契約かどうかは雇用契約書・労働条件通知書の内容によって決まります。
雇用契約書・労働条件通知書は、なるべく働く前にもらっておきましょう。
なお、単発アルバイト・派遣の場合は、結果的に週20時間以上働いても就職状態にならないこともあります。(1~2日単位のスポットバイトなど)
自身がどういった働き方かわからない場合は、
会社からもらった契約書・シフト表などを持って、管轄ハローワークで確認してください。
フリーランス(業務委託契約)で働く場合
フリーランス(業務委託契約)で週20時間以上働く場合も、失業保険の対象外になります。ただし、業務委託契約で働く場合は、以下の2つの条件を満たしているとき、例外的に週20時間以上働いても失業保険の対象になることが出来ます。
- 継続的に働くことが明確でない契約である
- 週20時間以上の雇用の仕事を探している
業務委託契約は個別の対応になることが多いです。
自身の働き方がどういう対応になるかは、事前に管轄のハローワークで確認しておきましょう。
業務委託契約に当てはまる例としては、クラウドワークスでの仕事の受注や、Uber Eats(ウーバーイーツ)配達パートナーが挙げられます。
それぞれの詳細については以下の記事を参考にしてください↓
クラウドワークス
Uber Eats(ウーバーイーツ)
失業保険の金額調整
失業保険の受給中にアルバイトをしても、失業保険の金額って変わらないの?
変わりますよ。
1日当たりの働く時間、収入金額によって調整されます。
前出のとおり、失業保険受給中でも週20時間未満であれば働きながら失業保険をもらうことが出来ます。ただし、このときにもらえる失業保険の金額は「働く時間・収入金額」によって調整されます。
- 1日4時間以上 ⇒ 働いた日の1日分は後ろに回る
- 1日4時間未満 ⇒ 1日当たりの収入金額によって対応が変わる
1日4時間以上働く場合
1日4時間以上働いた場合、その1日分については失業状態とみなされず、1日分の失業保険全額が後ろに回されます。
後ろに回された失業保険は、受給期限内(有効期限内)であれば消滅することはなく、最終支給日に支払われます。
失業保険の申請が遅かったり、働きすぎてしまうと、
有効期限内に失業保険をもらい終わらない可能性があります。
お気をつけください。
4時間以上働く場合について、詳細は以下の記事を参考にしてください↓
1日4時間未満で働く場合
1日4時間未満で働く場合、1日当たりの収入金額によって調整内容が変わり、以下の3つに分かれます。
- 収入金額 少 ⇒ 調整なし
- 収入金額 中 ⇒ 減額
- 収入金額 大 ⇒ 後ろ回し(4時間以上働いた場合と同じ)
収入金額が少ない(又は無い)場合は、失業保険金額に調整はありません。(1日当たりの収入が1,000円程度のとき)収入金額が中程度(1日当たり2,000円~5,000円程度)の場合は、失業保険金額が減額されます。収入金額が多い(1日当たり6,000円以上など)場合は、失業保険が後ろ回しになります。(4時間以上働いた場合と同じ)
以上の金額はざっくりとした分け方になります。
前職の給与額によって多少の変動がありますので、詳細な金額は管轄のハローワークに確認しましょう。
参考 雇用保険業務取扱要領 51651-51700 基本手当の減額
4時間未満働いた場合の申告・計算方法の詳細については、以下の記事を参考にしてください↓
働くタイミングと失業保険の取り扱い
申請してから、失業保険をもらい終わるまではずっと調整されるの?
失業保険の支払いの対象になっていない期間は調整されませんよ。
前出のとおり、失業保険受給中に働いた場合は、働いた時間や収入金額によってもらえる失業保険額が調整されます。ただし、失業保険の対象にならない期間については、働いて収入を得たとしても失業保険の金額の調整はされません。
そもそも失業保険自体が、
「失業状態の認定を受けた日に対して、失業保険をもらう」流れなので、
「失業認定期間外に働いたとしても、もらうお金がないので減額されない」
という結論になります。
失業保険申請に当たっての働くタイミングと、調整されるかの関係をまとめると以下になります。
- 失業保険申請前 ⇒ 調整されない
- 失業保険受給中 ⇒ 調整される(一部調整されない期間あり)
- 失業保険受給終了後 ⇒ 調整されない
失業保険申請前
失業保険申請前に働き、その後失業保険の申請・受給をしたとしても、失業保険の金額は調整されません。(失業保険申請前に働いた分のみ)失業保険申請前の期間については、失業の認定を受けるべき期間に該当しないためです。
参考 雇用保険業務取扱要領51255(5)就職した日又は自己の労働による収入があったかどうかの確認 (特に4時間未満の就労については 51655(5)減額支給を行う場合の留意事項 ロの(ロ))
ただし、その仕事を続けるために他の週20時間以上の仕事を探さなかったり、その仕事で週20時間以上働く場合は、そもそも失業状態になかったということで失業保険の対象外になります。
失業保険申請前にアルバイトをするとどうなるか、申告方法についての詳細は以下の記事を参考にしてください↓
失業保険受給中
失業保険受給中に働いた場合については、調整されます。ただし、一部の期間は調整の対象外になる場合があります。失業保険受給期間は、申請後から時系列順で以下の3つに分割することができ、それぞれの期間と働いた場合に調整されるかをまとめると、以下のとおりになります。
- 待期期間 ⇒ 調整される
- 給付制限期間 ⇒ 調整されない
- 失業認定期間 ⇒ 調整される
この3つの期間について詳細を見ていきます。
待期期間
待期期間中に働いた場合は、調整されます。1日4時間以上働いた場合は待期期間がその分だけ延長され、待期期間中に1日4時間未満で働いて収入を得た場合は、失業認定期間に入ってから減額の処理がされます。
参考 雇用保険業務取扱要領51102(2)待機日数
待期期間中に働いた場合どうなるか・対応については、以下の記事を参考にしてください↓
給付制限期間
給付制限期間中に働いた場合は、調整されません。給付制限期間中は失業の認定の対象期間ではないからです。1日の働く時間が4時間以上でも未満でも、1日当たりの収入額が多くても少なくても調整されません。
参考 雇用保険業務取扱要領52205(5)法第33条の給付制限期間 イ
ただし、給付制限期間中であっても週20時間以上働く場合は就職の申告が必要になりますので、その点についてはご注意ください。
給付制限期間中のアルバイトについて、詳細は以下の記事を参考にしてください↓
失業認定期間
失業認定期間中に働いた場合は、調整されます。失業認定期間中に失業状態が確認されることで、失業保険の受給対象になるからです。ただし、失業認定期間中であっても、認定日にハローワークに出頭しなかったなどの理由で「失業の不認定処分」を受けた期間については、失業保険の対象外の期間に該当するため、働いても調整されません。(そもそも不認定期間は失業保険がもらえない)
失業保険受給終了後
失業保険受給終了後に働いた場合は、調整されません。失業保険申請前と同じく、失業の認定を受ける期間に該当しないためです。失業保険受給終了後の期間については、就労についての一切の申告の義務はなくなります。
参考 雇用保険業務取扱要領51655(5)ロの(イ)、(ロ)
受給終了後は、週20時間以上働いたとしても、
ハローワークには何も申告しなくてOKです。
失業保険受給終了後のアルバイトについて、詳細は以下の記事を参考にしてください↓
失業保険受給中のアルバイトの申告方法
実際に働いたときはどうやって申告したらいいの?
毎回の認定日ごとに、失業認定申告書に記入して申告します。
失業保険受給中に働いた場合は、就労の申告が必要になります。毎回の認定日に、自身の失業状態を記入する「失業認定申告書」という用紙をハローワークに提出しますが、この用紙に働いた日・収入金額を記入して申告します。
なお、1日4時間未満で働いたとき、認定期間中に収入を得た場合は収入金額の記入も必要になります。
1日4時間未満で働いた場合の申告方法について、詳細は以下の記事を参考にしてください↓
失業保険受給中に働いたのにもかかわらず、申告をしなかった場合は「不正受給処分」になる可能性があります。不正受給処分がされると、以下の3つの処分の対象になります。
- 支給停止(以後の支払いなし)
- 返還命令(不正受給分全額返還)
- 納付命令(返還金額の最大2倍の罰金の支払い)
以後の失業保険の支払いがなくなり(支給停止)、
不正に受給した分を全額返還して(返還命令)、
さらに追加で罰金を支払う必要がある(納付命令)。
ということです。
失業保険受給中に働いた場合は、必ずありのまま誠実に申告してください。
不正受給になってしまった場合の処分の具体例や、対応についての詳細は以下の記事を参考にしてください↓
失業保険の金額に影響の無い収入
失業保険をもらっている間に、親戚から金銭の援助をしてもらえそうなんだけど、
これも申告しないとダメ?
申告しなくてOKです。
失業保険受給中に収入があった場合の申告対象は、自己の労働によって収入を得た場合です。
失業保険受給中に収入があった場合、その収入が自己の労働による収入であれば、以下の対応・調整が必要です。
- ハローワークへの申告が必要
- もらえる金額の調整
ただ、その収入が自己の労働によらない収入であれば、以下の対応・調整になります。
- ハローワークへの申告は不要
- もらえる金額の調整なし
参考 雇用保険業務取扱要領51255(5)就職した日又は自己の労働による収入があったかどうかの確認 ロの(ハ)
自身の収入が「自己の労働による収入」に該当するか不明なときは、
管轄のハローワークで確認しましょう。
失業保険受給中に投資で収入を得た場合どうなるのかについては、以下の記事を参考にしてください↓
まとめ(締め)
以上、失業保険とアルバイトの関係について解説しました。
キーワードをまとめると以下になります。
失業保険受給中のアルバイトは、正しく申告すれば恐れるものではありません。
- スキルを鈍らせないため
- アルバイトから始めて社員での採用を狙う
- 生活費の安定のため
など、アルバイトの動機は様々だと思います。いずれにしても、必要な対応をしっかりと学び、自身の転職活動を実りあるものにしてください。最後までご覧いただきありがとうございました。
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